Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2018/10/21
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 90.ウイスキー(スコッチ)&ソーダ、すなわちハイボール(Whisky/Scotch & Soda、or Highball)

【標準的なレシピ】 【スタイル】 ビルド

 現代の欧米では、ウイスキーをソーダ割りで飲む文化は、ほとんどありません。彼らは基本、ストレートかロックで味わいます。なので今、欧米のバーで「ハイボール(High ball)」と言って注文しても、まず通じません。

  ウイスキーのソーダ割りを飲みたければ、「Scotch  & Soda または Whisky & Soda, please」と言う必要があります。時には「ウイスキーの銘柄名 & Soda」と言うことを求められます(それでも、バーテンダーからは「せっかくの美味しいウイスキーをなぜソーダでなんかで割るんだ」というような怪訝な顔をされるかもしれませんが…)。

  しかし、19世紀末から1940年代にかけてのカクテルブックには、「ハイボール(High ball)」という言葉がしばしば登場していました。ここで大事なことは、この当時の「ハイボール」という言葉は必ずしもウイスキーのソーダ割りではなく、「ソーダで割ったお酒のスタイル」を意味していたからです。

   当時はブランデーやジン、ラムなど全ての蒸留酒やリキュールのソーダ割りを、「※※※※ハイボール」と呼んでいました。なので「スコッチ・ハイボール」「ウイスキー・ハイボール」なる飲み物は、「ハイボール」というスタイルのドリンクの一つの種類にすぎなかったのです。

  米国では、19世紀初め頃からバーボン・ウイスキーやライ・ベースのウイスキーのソーダ割りが飲まれていたと言われています。欧州でも、ハリー・マッケルホーン(Harry MacElhone)のカクテルブック(1919年刊)にも登場することから、「スコッチ/ウイスキー・ハイボール」は少なくとも1910年代には、一定の知名度を持つドリンクであったと思われます。

 「ハイボール」の発祥場所については、ボストンの「アダムズ・ハウス(The Adams House)」という説(出典:Wikipedia英語版 → 原資料1927年10月22日付 New York Times)も伝わっていますが、定説として定着するまでには至っていません。

 カクテルブックの著書もあるニューヨークのバーテンダー、パトリック・ダフィー(Patrick Duffy)は1927年、「ハイボールは、英国人俳優のE.J. Ratcliffeによって1894年、英国から米国へ紹介された」と記し、英国発祥説に立っています(出典:同 → New York Times紙上で)。もっとも、スコッチウイスキー・ベースとバーボン、ライ・ウイスキー・ベースとでは発祥国が違ってもさほど不思議ではありません。

 「ハイボール(ウイスキー・ハイボール)」という言葉の由来(語源)には昔から様々な説がありました。有力と思われているのは、以下に紹介する中で、(1)(2)(4)の説です。米国のバーテンダー養成学校では、主に(1)と(2)の説を教えていると言われています(出典:Wikipedia英語版)。

(1)一番有名なのは、アメリカの鉄道の信号機起源説。19世紀初め、開拓時代のアメリカ南部の鉄道では、長い棒の先にボールをつけた「ボール信号機」が使われていました。ボールが上がっていれば「進行(go)」、上がっていなければ「停止(don't go)」という訳です。「進行(go)」状態は従って、「ハイ・ボール」と呼ばれていました。
 当時、駅の信号係に、ウイスキーのソーダ割りが大好きな人がいて、列車に出発の合図を送るたびに、「ハイ・ボール!」と叫んでいました。そこでその飲み物も「ハイ・ボール」と呼ばれるようになったとか(出典:Wikipedia日本語版&英語版ほか)。

(2)信号機説のバリエーション。信号機は列車だけでなく工事労働者への休憩の合図にも使われていました。労働者たちは休憩時間に好んでウイスキーのソーダ割りを飲んでいました。そこで、その飲み物も当然、信号機の呼び名から「ハイ・ボール」と呼ばれるようになって、さらに定着していったということです(出典:Wikipedia日本語版)。

(3)蒸気機関車のボイラー起源説。蒸気機関車で列車を動かしていた時代、食堂車でウイスキー&ソーダを乗客に提供している時、機関車がスピードを上げると(食堂車の)ボイラー気圧を示すボールも、それに応じて高く上がりました。この状態を「ハイボーリング(Highballing)」と呼んだことから、そのドリンクもいつしか「ハイボール」と呼ばれるようになったということです(出典:Wikipedia英語版)。

(4)英国のゴルフ場起源説。ある時、ゴルフ場のクラブハウスでウイスキーのソーダ割りを飲んでいた英国紳士が「これは何という飲み物か?」とマスターに聞きました。するとちょうどその時、打ち損じのゴルフ・ボールがクラブハウス飛び込んで来て、思わずマスターが 「High ball !」(高い球) と叫んだのが由来という説です(出典:Wikipedia日本語版)。

(5)炭酸の泡起源説。炭酸の泡(玉=ボール)が上に揚がっていく様から、ハイ・ボールと呼んだという説です(出典:同)。 

(6)トールグラス起源説。19世紀末頃、「ウイスキー・ドリンク」は俗語で「Ball」と呼ばれることもありました。「ウイスキー&ソーダ」がトール・グラスで提供されることが多かったため、「Tall=High」というイメージからそのうち、「ハイボール」と呼ばれるようになったそうです(出典:Wikipedia英語版)。

 他にも(7)「(野球の)高めの直球(High Ball)」は、打ちごろ(=飲みごろで、美味しい)の絶好球という説、(8)「気分がHighになる弾丸(Ball)」という説、(9)「丈の高い(High)容器(Bowl)」にウイスキーを注いだ飲みものだからという説――が伝わっていますが、信憑性についてはよく分かっていません。

 欧米のカクテルブックで、「(ウイスキー・)ハイボール」という名前がが初めて登場するのは、現時点で確認できた限りでは、1882年に出版された「Bartender's Manual」(Harry Johnson著)です。そのレシピは「ミディアム・サイズのフィズ・グラスに氷2~3個を入れ、スコッチ・ウイスキーをワイングラス1杯分入れる。冷やしたソーダ水で満たす。もし客が望めば、ウイスキーの代わりにジン、ブランデーで提供すること」とあります。

 ご参考までに1890年代~1940年代の主なカクテルブックで、ハイボールがどのように紹介されているのか、簡単に見ておきましょう。

・Modern American Drinks(George Kappeler著、1895年刊)米
 氷(ランプ・アイス)1個を入れたロング・グラスにスコッチ・ウイスキー1jiggerを入れ、冷やしたプレーン・ソーダのボトル1本を別に提供する(※当時は客が自分で注いで濃さを調節するのが主流だったようですが、このスタイルは現代のパブでも継承しているところがあります)。

・Daly's Bartender's Encyclopedia(Tim Daly著、1903年刊)米
 氷(ランプ・アイス)2~3個を入れたフィズ・グラスにプリマス・ジンをワイングラス1杯分入れ、冷やしたソーダ水で満たす。もし客が望めばウイスキーやブランデーで提供すること。

・Bartender's Guide(Wehman Brothers編、1912年刊)米
 氷(ランプ・アイス)1個を入れたトール・グラスに、バーボン・ウイスキー(またはライ・ウイスキー、スコッチ・ウイスキー)をワイングラス1杯分入れ、冷やしたソーダ水で満たす。

・ABC of Mixing Cocktails(Harry MacElhone著、1919年刊)英
 氷(ランプ・アイス)1個を入れたタンブラーと、スコッチ・ウイスキーのボトルとソーダ水のボトルを客に渡し、お好きな濃さで入れて頂く。

・Cocktails:How To Mix them(Robert Vermeire著、1922年刊)米
 氷(ランプ・アイス)2~3個を入れたタンブラーに、スコッチ・ウイスキー4分の3gillを入れ、冷やしたソーダ水で満たす。お好みでレモン・ピールをしたり、レモン・スライスを入れたりする(※「Straight Scotch Highball」という名前で紹介されている)。

・The Savoy Cocktail Book(Harry Craddock著、1930年刊)英
 角氷1個を入れたミディアム・サイズのグラスに、好みの蒸留酒、リキュール、ワインをグラス1杯分入れ ソーダ水で満たす(好みでレモン・ピール、ソーダ水の代わりにジンジャー・エールを使ってもよい)。

・The Artistry of Mixing Drinks(Frank Meier著、1934年刊)仏
 大きめの氷を入れたグラスに、ブランデーをグラス1杯分入れ、ソーダ水で満たす(ブランデーの代わりにジン、ラム、ウイスキー、ピーチ・ブランデーなどの蒸留酒でもよい)。

・Trader Vic's Bartender's Guide(Victor Vergeron著、1947年刊)米
 スコッチ・ウイスキー2ounces(オンス)、クラブ・ソーダ6ounces、角氷2個(ステア) ※確認できた限りでは、「Scotch and Soda」という名前で登場した初めての文献。

・The Official Mixer's Manual(Patrick G. Daffy著、1948年刊)米
 10オンスグラスに氷を入れ、好みの蒸留酒を1~2jigger注ぎ、ソーダ水(またはミネラル・ウォーター)で満たす。好みでレモン・ピールを。

   日本では「ハイボール」は独自の進化を遂げました。大手メーカーが自社の酒を売るバー・チェーンを全国展開し、ウイスキーのソーダ割りを「ハイボール」と呼び、その普及に努めた効果もあって、日本ではいまだに、「ハイボール=ウイスキーのソーダ割り」と考える人がほとんどです。

   一方、現代の欧米のバーでは、ウイスキーを含む蒸留酒のソーダ割りを「※※※※ハイボール」という言い方はほとんど廃れてしまいました。その原因については、いまいちはっきりしませんが、一つには1960年代以降、シングルモルト・ウイスキーが次々と商品化され、ウイスキーはストレートかロックで飲むべき酒という考えが定着してしまったことも大きいという専門家もいました。

 「ハイボール」は、日本にも開国後まもなく伝わったと思われますが、文献上確認できるのは1900年代になってからです。なお、Patrick Daffyのカクテルブックにもあるように、かつてハイボールという飲物は、ソーダだけではなく、水やジンジャー・エールで割ってもハイボールと呼んでいました。日本でも1950年代までは蒸留酒を水で割った場合でもハイボールと称していましたが、現代では、ソーダ割り以外をハイボールということはまずありません。

【確認できる日本初出資料】 「洋酒調合法」(高野新太郎著、1905年<明治38年>刊)。レシピ(概略)は「中くらいの大きさのフィズ・グラスに氷の塊を二つ、三つ程を入れ、スコッチ・ウイスキーをワイン・グラス一杯分、グラスに注ぎて出すべし。もし客が望む酒あらば、その求めに応じて入れるべし。ソーダ水または水を注ぎて供すべし」となっています。


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汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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▼Bar UKでも愛用のBIRDYのグラスタオル。二度拭き不要でピカピカになる優れものです。値段は少々高めですが、値段に見合う価値有りです(Lサイズもありますが、ご家庭ではこのMサイズが使いやすいでしょう)。 ▼切り絵作家・成田一徹氏にとって「バー空間」と並び終生のテーマだったのは「故郷・神戸」。これはその集大成と言える本です(続編「新・神戸の残り香」もぜひ!)。
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