Bar UK Official HP & Blog(酒とPianoとエトセトラ)since 2004.11.

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2020/05/11
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「7日間連続ブックカバーチャレンジ~❗」その3完です。

6冊目は、社会人になってからの愛読書。『モーツァルトの手紙』 (上、下2巻 岩波文庫版、1980年刊)を。
”著者”は、言うまでもなく、数々の美しい音楽=楽曲を創り出した天才作曲家、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)。その彼が生涯に書き残した手紙の一部、約200通を紹介したのが本書である。

天才芸術家には、「変わっている」「気難しそう」「何を考えているのか分からない」などのイメージがつきまとう。実際、歴史上の天才にはそういう人も多い。もちろん、モーツァルトも、(映画「アマデウス」を観た方ならご存知だろうが)ご多分に漏れず、かなりの変人である。

一方で、モーツァルトにはもう一つ、天真爛漫で、世俗的で、ほとばしる情熱や感情を周囲にありのまま振りまくような人間性があった。そんな一面が一番よく表れているのが、彼の手紙である(同じく残された大量の手紙が本になっている天才画家のゴッホの場合、どの手紙にも、ある種のどんよりとした「暗さ」が広がる)。

モーツァルトの手紙には、小難しい芸術論、哲学論はほとんど登場しない。そこで書き綴られるのは、身辺雑記であり、妻への恥ずかしいほどの愛の言葉(卑猥な言葉も多数!)であり、(旅を共にした、プロデューサーでもある)父親への複雑な感情であり、経済的な困窮を訴える叫びであり、並みの人間にもよく見られるような、心の弱さや悩みの披歴である。

21世紀のいま、私たちがモーツァルトの手紙の数々に接することができるのは、彼の死後、未亡人のコンスタンツェが再婚した夫、ゲオルグ・ニッセンのおかげである。デンマークの外交官だったニッセンは、モーツァルトの手紙を可能な限り収集しながら「伝記」を書き始め、これがのちに(ニッセンの死後)コンスタンツェの手によって刊行された。

しかし、ニッセンは過ちも犯した。彼は、モーツァルトの手紙の文章で、人間的部分が一番よく表れる部分、例えば卑猥な言葉を使ったところなどを黒塗り(原資料そのものを汚損)にしたり、コンスタンツェにとって不都合な部分を改ざんしたりするという愚挙をおこなった(幸い、黒塗りや改ざんの部分も後世の科学的研究の結果、解読できるようになり、現在、私たちは人間モーツァルトの真の姿に接することができるようになった)。

この本に収録された手紙を読めば、稀代の天才作曲家であっても、我々とそう変わらない、「弱さ」を併せ持った人間だったのだと分かり、なぜか嬉しくなる。この大量の手紙が現在まで伝わり、文庫本で読めるなんて、なんと幸せなことなのかと私は思う。

どの手紙でも構わない。この本に登場する彼の「心のつぶやき」を読みながら、BGMにモーツァルトのセレナーデやソナタを流してみてほしい。きっと、いつもとは違う、人間の強さや弱さ、喜び、哀しみがよりクリアな音の調べとして聴こえてくると思うのだが…。

   *   *   *   *   *   *   *   *
最後の7回目は、高校生から社会人にかけて繰り返し愛読した小説。『碾臼(ひきうす The Millstone)』 (河出書房新社、日本語版1971年刊、原著は1965年刊)と、 『黄金のイェルサレム(Jerusalem the Golden)』 (同、日本語版1974年刊、原著は1967年刊)という2冊をまとめて。日本語版の灘本唯人さんのカバーの絵がとてもおしゃれで、素敵だ(※この2冊はほぼ同じ時期に発表された、著者にとっては二部作のような作品なので、まとめて選んだ)。

著者は、マーガレット・ドラブル(Margaret Drabble 1939年~)という英国の女性作家。日本ではさほど有名ではないが、英国では人気作家の1人で、大英帝国勲章を受章している(1980年)ほか、卒業したケンブリッジ大学からは名誉文学博士号を授与されている(2006年)。

ドラブルは当初、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで女優として活動した。しかし、その後60年代からは作家として活動を始め、1963年に『夏の鳥かご』でデビューした。『碾臼』は3作目の小説となる。

主人公は、中産階級の出身で、のちに未婚の母となる女性・ロザマンド。ロンドンで英文学の講師をしている。海外で暮らす大学教授の両親からは、「自由放任」的に育てられ、「自己責任」で生きていくように躾られた。1960年代の退廃した英国社会の中で、既成の社会体制、権力を疑い、倫理観を問い直しながら、現実社会と必死でたたかうロザマンドの姿が描かれる。そして結果として、彼女はそれは「自己」とのたたかいでもあることに自覚する。

一方、『黄金のイェルサレム』の主人公・クララも女性だ。クララはロンドンで学ぶ地方出身の大学生。ロンドンで様々な個性的な人たちと知り合ううちに、両親や家や故郷という束縛から逃れて自立したいと願う。本の帯には「平凡な人生と禁欲的な母親から逃れ、自由と活気に溢れた都会で複雑な愛を体験し目覚め、自立する娘の、軽やかに飛翔する青春の物語」とある。

この小説(『黄金の…』)の中の、(著者自身の気持ちが主人公に乗り移ったような)締めくくりの数行が、とても印象的だ。今でも暗唱できるほど覚えている。
「運命のどんな恵みにも、好意にも、彼女はそんなものとはかかわりなく生きぬいてみせる。運命になどつかまるものか、絶対につかませさえはしないのだ」。

多感だった高校2年の頃、私は先輩の女性を通じて、この本と出合った。ちょうど将来の進路をあれこれ悩みながら考えていた頃。どこの大学へ行くか、大学進学を機に家を離れるか、将来どんな職業を目指すか…。

言葉を換えれば、家や親からの「自立」「自己解放」を目指して、もがいている自分がいた。そんな自分を、主人公のロザマンドやクララに重ねながら読んだ。この2冊に共通しているテーマは、一言でいえば、「自らの人生や運命を、自らどう切り開いていくのか」。

4冊目で紹介した『二十歳の原点』の著者、高野悦子も同じような悩みを吐露していた。彼女は学生運動に関わることを良しとしない両親や姉と話し合いの場を持つが、”接点”を見いだせず、京都へ舞い戻る。
「きのう東京にて、姉と話す。父母と話す。決裂して飛び出す。非常に疲れている。次第に自分に自信をなくしている。『家族との訣別』、経済的自立を目指せ」(1969年5月31日の日記)。

その3日後の日記には、知人を通じて貰ったという母からの伝言が以下のように記されていた。
「母はこう言ったという。『悦子が自分で幸せと思うことをやりなさい。お母さんは、立派なお嬢さんになりいい所へお嫁に行くという考えを、もう押し付けない。悦子は悦子の好きなようにやりなさい』。うれしかった。そして、この喜びを、真っ先に伝えたかった(誰に?)。独りでしか喜びを味わえないのは寂しいから」(1969年6月3日)。
だが、高野悦子は「自立」の実現をみないまま、3週間後、自ら人生の幕を引いてしまった。

現実の自分はどうだ。あれこれ「もがいた」けれど、様々な事情で結局、「家を捨てる」選択肢はとれなかった。家を離れるのは、ようやく社会人になってからとなった。

ロザマンドやクララの生き方から学んだことは、強い信念や意志を持ち続けること、そして夢をあきらめず努力すること。それは、現在のバーのマスターという仕事にも通じる「真理」ではないか…。自分の人生を切り開けるのは、結局のところ、自分の強い意志しかないといまも思っている。

※『碾臼』は英国でもベストセラーとなり、1969年、サンディ・デニス主演で映画化されました(邦題は「愛のふれあい」)。機会があればぜひご覧ください。

【おことわり】 申し訳ありませんが、私は誰にもバトンタッチはいたしませんでした。連休中は皆さんいろいろ忙しくて、個々に様々な事情もあるでしょうし、バトンを渡されても迷惑に感じる人もいるでしょうから…。

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kopn0822 @ 1929年当時のカポネの年収 (1929年当時) 1ドル=2.5円 10ドル=25円 10…
汪(ワン) @ Re:Bar UK写真日記(74)/3月16日(金)(03/16) お久しぶりです。 お身体は引き続き大切に…

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