■ ♪うつくしい子ども♪石田衣良(文春文庫) |
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文庫本で読みました。オビに「弟は、なぜ殺したんだろう? 13歳の弟は猟奇殺人犯!?」とある。随分挑戦的な文ではないか。 14歳の兄は弟の心と真実を求めて調べ始めた。孤独な戦いだ。 増えゆく少年犯罪に対してのメッセージなのだろうか? 最悪の行いをする理由がどこかにあるはずだし、誰かがそれを わかってやる必要があるのではないか。14歳の兄は事件の真相や 人々の思いを知ってどんどん成長していく。きっと10代というのは 体だけでなく心も急速的に成長する時期なのではないか。 巻末の解説に酒鬼薔薇事件との類似性について意図的に・・・ とあげているが、確かにその事件はきっかけにすぎないだけで今現代の社会に対しての重いメッセージのような気がする。(2002.9.10読了) |
■ ♪闇が呼んでいる♪赤川次郎(幻冬舎) |
美香、小百合、さとみ、淳子の女子大生四人は、自らの罪を隠蔽するため、無実の西川勇吉をレイプ犯に仕立て上げ、自殺に追い込んだ。数年後、美香は小百合の恋人を奪い結婚、小百合は大物政治家の愛人となり、さとみはアナウンサー、淳子は大学講師に。それぞれが新しい人生を歩み始めたとき、西川らしき人物から手紙やFAXが届く。以降、仕事や家庭に異変が…。久し振りの赤川次郎です。私がミステリーを読むきっかけとなったのは赤川次郎です。読みやすいのでサクサク読めます。この作品も見えない闇の亡霊におびえながら生活する4人の姿がとても面白く描かれています。特に小百合の変貌ぶりには脱帽です。人間は自分と家族の生活を守るためならば何でもできるのですね。政治家の愛人となりその子どもを身ごもる。そして自分が愛人になるきっかけを知った彼女は復讐を誓うとともに誰よりも強くなる。美香は大臣の娘で一番優位に立っていると思っている。だから事件のおきた時も父親に頼み隠蔽し、事件を闇に葬り去った。でも数年後新たな敵が現れ怯えつつもそれに向かっていく強さは残っていた。すごい女だ・・・淳子とさとみは多分この2人からみたらとても普通に見える。さとみは華やかな世界で頑張りつつもいろいろ先輩の嫌がらせとかあるし、淳子は罪を認めてひっそりと暮らしている。やはり悪いことはするものではないね。自分に帰ってくるから・・・(2002.11.19読了) |
■ ♪どんどん橋、落ちた欺かるるなかれ!♪綾辻行人(講談社ノベルス) |
ミステリ作家綾辻行人のもとに持ち込まれる難事件の数々。全五編の短編です。俗に言う「犯人当て小説」私的には「伊園家の崩壊」が某マンガを彷彿させるようで面白かった。しかし、どれもこれも犯人(?)が意外すぎます。(2003.1.2読了) |
■ ♪最後の記憶♪綾辻行人(角川書店) |
本格ホラー小説。若年性の痴呆症を患い、ほとんどすべての記憶を失いつつある母・千鶴。彼女に残されたのは、幼い頃に経験したという「凄まじい恐怖」の記憶だけだった。バッタの飛ぶ音、突然の白い閃光、血飛沫と悲鳴、惨殺された大勢の子供たち…死に瀕した母を今もなお苦しめる「最後の記憶」の正体とは何なのか?どちらかというとミステリー色の方が強い作品かも。最後はう~ん?と唸ってしまったけど。バッタと白い閃光をキーワードに主人公・息子の森吾が母の故郷へ行き、謎を解いていく。(2003.1.18読了) |
■ ♪聯愁殺♪西澤保彦(原書房) |
見ず知らずの男に殺されかけ、助かった梢絵。警察の調べでは男は連続無差別殺人事件の犯人。何故、自分は襲われたのか?その謎を知るために「恋謎会」に調査を依頼。ほとんど「恋謎会」の会合による推理合戦で占められています。半ばまで読むと少しマンネリ化してくるけど、最後の急展開には楽しませてもらいました。なるほど~こういう結末か~みたいな。(2003.1.26読了) |
■ ♪青葉の頃は終わった♪近藤史恵(光文社・カッパノベルズ) |
「瞳子(とうこ)が死んだ」瞳子は孤高の存在で、ガラス細工の天使のようだった。繊細で儚げで、他人を魅了する少女に見えた。死後に届いた葉書には「私のことを殺さないで」とあった。彼女の死をめぐり友人達が翻弄する青春ミステリー。瞳子の存在が大きすぎ。何故、彼女にここまで振り回されるのか私にはわからなかった。(2003.2.3読了) |
■ ♪失踪holiday♪乙一(角川スニーカー文庫) |
14歳の冬休み、わたしはいなくなった―。大金持ちのひとり娘ナオは継母との大喧嘩のすえ、衝動的に家出!その失踪先は何ととなりの建物。しかも使用人のクニコの部屋。最初は自分の部屋へ度々何者かが入った形跡があるので、その何者かをつきとめようとクニコを使って、家族を監視するのだが。いつの間にか狂言誘拐事件に発展。ナオは面白おかしく、家の様子を伺う。しかし、身代金受け渡しまで事が進んだときに急転・・・あ~ネタばれになってしまうのでここまで。思わず最後はニヤリ!してやったり・・・って感じ。そしてもう1編。「しあわせは子猫のかたち」こちらは切ないです。人付き合いが苦手な主人公とやさしい幽霊のお話です。最初は勝手にTVがついていたり、物が動いていたりと何だかホラー?って思ったけど、全然そんなことはなく、この二人のリンクの仕方が自然でやさしい気持ちにさせてくれる作品です。乙さんは「切なさの達人」だそうで、納得です。(2003.2.25読了) |
■ ♪今夜もベルが鳴る♪乃南アサ(祥伝社文庫) |
こういうのを狂気と言うんでしょうね。怖いです。と言うか、ぞっとします。ゆかりという主人公が友人のパーティで知り合った岩谷という男性に惹かれていきます。毎夜かかってくる電話。彼女は電話の中で燃えるような恋をします。しかし、話すにつれて彼女は岩谷に対して疑惑が生じてきます。それからが彼女にとっての恐怖のはじまり。一体岩谷とは何者?「変身妄想」ある種の精神的な病です。憧れが強すぎてその人になりたいと思う。妄想というレベルまでくると危険だそうです。もしかしたら身近にもありうるかもしれませんね。(2003.2.28読了) |
■ ♪Moment♪本多孝好(集英社) |
死ぬ前の最後に一つだけ願いを叶えてくれる人物がいる。病院でひろまった不思議な噂。その正体は大学生アルバイトの清掃員。必殺仕事人伝説。すごい仕掛けや殺し?があるのかと思ったら全然そんな大掛かりなことはなく控えめだけどどこか雰囲気はしっかりある。そんな感じの小説でした。病院という死を直面した場所で人は死ぬ間際に何を思うのでしょうか?そして何を願うのでしょうか?(2003.3.12読了) |
■ ♪バルーン・タウンの手品師♪松尾由美(文芸春秋) |
人口子宮が普及した近未来の東京であえて自然な妊娠・出産を望む人たちの街がある。そこで起きる事件とは?妊婦探偵・暮林美央が挑むミステリー。 前作「バルーン・タウンの殺人」はこのミスでも高い評価を受けたらしいが、絶版です。読めません。残念です。(2003.3.11読了) |
■ ♪バルーン・タウンの手毬唄♪松尾由美(文芸春秋) |
バルーンタウンの新刊です。今回もよくわからない事件に暮林美央が挑んでいます。何となくですが、回を重ねるうちに面白くというかずっこけていくような気がします。(2003.3.14読了) |
■ ♪人形(ギニョル)♪佐藤ラギ(新潮社) |
第3回ホラーサスペンス大賞を受賞作。 「誰かに何かをされる恐怖ではなく、自分が罪を犯してしまうことへの怖さ、それがこの小説のモチーフです」作者の佐藤ラギさんは語ったそうです。SM作家の猪俣泰造は、ふとしたきっかけで新宿2丁目かいわいで 「ギニョル」と呼ばれるホームレスの男娼を拾う。フランス系美少年ギニョルの体は、男たちのすさまじいサディズムにさらされ傷んでいた。だが自身もその行為に引きずり込まれ、風俗写真家のバンと共にギニョルを仕事場マンションに監禁。人形工房「グラン・ギニョル」の社長らと共に残虐CDを作製し、海外向けに販売しだす。そんなある日、ギニョルの本来の持ち主と思われる外国人たちが私たちを襲って…。ギニョルとは「人形」とか「指人形」の意味だそうです。どうもマニアックな世界で私はよくわからないのですが、そんなに怖くはないです。ただ、グロテスクトというか、やはり残虐という言葉があうのでしょうね。最後の暴力シーンはやはり想像したくなかったけど。自虐で快感を得る人たちってどうなんでしょうね?。(2003.3.29読了) |
■ ♪ルーム♪新津きよみ(実業之日本社) |
姉の理美が死んだ。家族とは絶縁状態にあった姉が、妹の友美の住所を書いたメモを残して息を引きとったのだ。友美は後始末のために、姉のマンションを訪れた。段ボール箱に入れられた幼児の白骨を発見して・・・最初と途中に姉の理美の友人(と言ってもクリスマスパーティーで1度あっただけ)の奈央子という女性の主観が入るので少し読みにくかった。結局の話は友美が姉の部屋にある謎の数々の物は何か?疎遠になっていた姉はどんな生活をしていたのだろうか?を探るミステリーです。この姉に関わる人物の間で殺人事件がおきたりして少し複雑。姉の理美は殺されたわけではなくくも膜下出血で亡くなったんだけど、妹の友美が何故か狙われたり、姉の部屋が荒らされたりとまあ、いろいろあります。でも都会の女性の一人暮らしは謎も多いけど、いろいろ気をつけないといけませんね。(2003.4.5読了) |
■ ♪蛇行する川のほとり(1)♪恩田陸(中央公論新社) |
続きものです。だから2がそろそろ出てて3がまたその次に出る予定です。 何だかとてもいいところで終わっています。前半ははっきりいって何が起こるのか検討もつきませんでした。後半にてやっとこの物語の内容が明らかになりつつあります。夏休みに憧れの先輩宅での合宿。そこでの不思議な体験を描く作品です。(2003.5.2読了) |
■ ♪蛇行する川のほとり(2)♪恩田陸(中央公論新社) |
第2弾です。第1弾の語り手・毬子から芳野へチェンジ。かつての川のほとりでおきた事件の背景が段々わかってきます。あ~でもまた盛り上がったところで終わり。最終巻が待ち遠しい。(2003.6.6読了) |
■ ♪Gothリストカット事件♪乙一(角川書店) |
主人公の僕と森野の6つの短編集。面白かったです。単純に。残忍な殺人事件が起きているにもかかわらず、ドキドキしながらもにやりとしてしまう。何故か殺人を犯す側と殺される側の心理状況がわかるんです。あ~こういう状態なんだ~って。きっとこういうのが快楽って言うんだろうな~って。人が死んだ場所が好きっていう主人公の僕やある秘密を持つ森野の気持ちなんかが共感できて少し怖いくらいでした。多分、読んだ状態が悪かったからかもしれないけど。体が病んでいたからね。人は病むと精神的に普通じゃないところへいくものかもしれません。普段の私だったらきっと「こういうのは怖いかもしれない」と足が遠のくのに・・・。(2003.5.3読了) |
■ ♪ミステリアス学園本格推理小説♪鯨統一郎(光文社カッパ・ノベルス) |
ミステリアス学園ミステリ研究会、略して「ミスミス研」。 ミステリは松本清張の『砂の器』しか読んだことがない新人部員の湾田乱人が巻き込まれる、怪事件の数々。本格対社会派。数々の作品のネタバレもあり。私的にはどうしてこうなる?状態だったが面白く読めた。さすがバカミスの鯨統一郎!(2003.5.20読了) |
■ ♪真相♪横山秀夫(双葉社) |
10年前に息子を殺した犯人が逮捕された。通り魔的 犯行。当時はそう思われていた事件だったが、犯人の口から、殺された息子の意外な一面が浮かび上がった。 表題作「真相」を含む5編の短編を収録。「他人の家」という作品では加害者に襲い掛かる世間の目やネット社会の壁を描いています。不眠がこうじて深夜の散歩に出かけ、犯罪捜査の思わぬ証言者になってしまう失業中の中年を描いた「不眠」。犯罪を隠蔽した過去を持ち、その露顕におののく小市民を絵に描いたような30代の男「18番ホール」。人の内面を静かに描いた作品と言えるでしょう。(2003.8.13読了) |
■ ♪笑う怪獣ミステリ劇場♪西澤保彦(新潮社) |
はぁ~?何だこれは?巨大怪獣とともに孤島に閉じ込められたアタル、正太郎、京介の悪友三人組と美女(?)三人。逃げる手立てもなく密室と化した孤島から、闇を切り裂く悲鳴を残し、ひとり、またひとりと消えていく…。そうかと思えば地球侵略を企てる宇宙人現る。殺人を繰り返す改造人間や、幽霊まで。特撮+ミステリーっていうから・・・こんなのあり?今だかつて前代未聞。どうしてこうなる?何でこれが出てくる?疑問珍問。はぁ~すごかったわ。とにかく。もう笑うしかないよ。これは!(2003.8.22読了) |
■ ♪ファンタズム♪西澤保彦(講談社ノベルズ) |
印南野市で発生した連続女性殺人事件。遺体の口には必ずある紙片が。そして犯人の指紋も。やったのはファントム。実態のない透明人間のようなやつ。実は最後まで意図しているものがわからなかった作品です。どうも私の頭が鈍いみたいで。ただ、殺人事件について、シンメトリックで美的な感じが面白いかなと思いました。(2003.9.22読了) |
■ ♪クビキリサイクル青色サヴァンと戯言遣い♪西尾維新(講談社ノベルズ) |
絶海の孤島に隠れ棲む財閥令嬢が“科学・絵画・料理・占術・工学”、五人の「天才」女性を招待した瞬間、“孤島×密室×首なし死体”の連鎖がスタートする!工学の天才美少女、「青色サヴァン」こと玖渚友とその冴えない友人、「戯言遣い」いーちゃんは、「天才」の凶行を“証明終了”できるのか?第23回メフィスト賞受賞作。憧れの西尾維新さま。やっと読めました。しかもこれがデビュー作なんて。天才と簡単に言ってはいけないけど、あなたにはその香りがする。最初、あらすじを見て「森博嗣先生の『F』に似ている」と思ったが、森先生が完全に数学的見解なのに対して、西尾維新は超娯楽的戯言と言った感じだろう。前半は申し訳ないがわかりにくかった。首切り死体が出てきてやっと読むのに乗り気になり、加速を増し、最後の証明はふむふむとうなずいた・・・が、哀川が出てきて・・・ふ~しかし、どれもこれもすごいキャラだね。ミステリーの枠を超えた小説かも。 清涼院流水氏が誉めていたのはうなずける気がする。(2003.11.12読了) |
■ ♪クビシメロマンチスト人間失格・零崎人識♪西尾維新(講談社ノベルズ) |
あの前回の密室殺人事件から二週間。京都、私立鹿鳴館大学。「戯言遣い・いーちゃん」が今回もいろいろ巻き込まれる。よくわからないけど・・・ クビシメ・クビシメ・クビシメ・・・う~ん。前作よりも前振りが長かった。でも戯言は面白い。やっぱりはまってる。しかし、哀川といい、零崎といい、強烈なキャラばかりだな。第二弾ということで。次に期待。しかしどうやって登場人物の名前付けてるのかね?むいみちゃんの妹は無理ちゃんなんて・・・アホ~♪(これはこの作品には全く関係がないけど)(2003.11.23読了) |
■ ♪クビツリハイスクール戯言遣いの弟子♪西尾維新(講談社ノベルズ) |
戯言シリーズの3作目。人類最強の請負人、哀川潤から舞い込んだ私立澄百合学園から紫木一姫を救い出す依頼。この高校は「首吊高校」と呼ばれていてとんでもないところだった。前作よりも薄かったのが救いかな。早く読めた。しかし、この哀川潤・・・だんだんはまってきたぜ~♪密室本なんだけど、一応・・・段々キャラ小説化してます。(2003.11.26読了) |
■ ♪薄暗い花園♪岩井志麻子(双葉社) |
ホラー短編なんですよ。でも気味が悪い。全般的に。どれもこれも死臭がするようなお話で。表紙も何だか怖い。でも時々官能的だったりする。不思議な感じです。きつねにつままれたような・・・(2003.12.8読了) |
■ ♪プルミン♪海月ルイ(文芸春秋) |
公園で遊んでいた四人の男児。その一人が見知らぬ女から貰った乳酸飲料(プルミン)を飲んで死んだ。知らない人からものをもらってはいけません。といっても相手が商売人なら・・・きっと制服を着ていれば子供ならもらってしまうはず。それが・・・こんな悲劇になるとは。死んだ子はいじめをしていた番長格の子。何故彼だけが死ななければならなかったのか?段々明らかになる事実。本当のターゲットは?中々面白かったけど、実際にあり得そうなところが怖いかな。(2003.12.8読了) |
■ ♪山ん中の獅見朋成雄♪ 舞城王太郎(講談社) |
神話のようなお話。背中に鬣を持つ少年・獅見朋成雄。彼は馬のような俊足の持ち主。そして殺人。後半にはカニバリズムまで・・・純文学っぽい雰囲気を持ちながら血生臭いような不思議なお話。(2003.12.23読了) |