のんびり生きる。

のんびり生きる。

「だったらわたしは安全ね」


「だったらわたしは安全ね」と彼女は言った。「わたしは誰ともかかわりがないもの。もちろん人類とかかわりがあると言われればそれまでだけど、でも、そんなことが重大な危険をはらむと思う?」
 私は彼女がなんのことを言っているのかよくわからなかった。彼女は目を閉じて言った。
「“どんな人の死にも我が身を削られる思いがする。なぜなら私は人類にかかわっているのだから”。ジョン・ダンよ。あなたは彼女が誰とどんなかかわりがあったか知ってるの?」
「いや」
「あなた、彼女の死がわたしの身を削っていると思う? わたしと彼女とはかかわりがあったと言えるのかしら? わたしは彼女をあんまりよく知らなかった。なのに、わたし、彼女の詩なんか書いてるのよね」
                     「八百万の死にざま」213頁

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