のんびり生きる。

のんびり生きる。

そうでなければ


 今日の明け方、警戒していた二度目の発作が襲ってきたとき、彼女には自分の身に何が起きたか十分に理解できただろう。激しい頭痛に頭を抱え、急速に遠のいていく意識の中で尋子さんは一体何を思ったのだろう。
 五年前のように「猛烈に生きたい」とまた思っただろうか。「死んでたまるか」とまた思っただろうか。
 二週間ほど前に会った尋子さんの笑顔を思い出しながら、何となくそうではなかったような気がする。
 尋子さんのように来るべき死に対してそれなりの備えをしていた人は、もうこれで正真正銘最期なのだと思えたときは、案外すんなりとすべてを手放すことができるのではないだろうか。
 そうでなければ、最初の発作から運よく生き延びた甲斐がないというものだ。
 そうでなければ、この五年という歳月がまるでなかったような話だ。
 そして、そうでなければ、ひとりぼっちで死んでいった尋子さんがやっぱり哀れだ。
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