QBスニーク

白血球数とその種類

『正常値』
○白血球数[/μl(マイクロリットル)]:4000~9000
○白血球分画:好塩基球=0~2%,好酸球=1~8%,好中球-桿状核=1~9%,好中球-分葉核=27~60%,リンパ球=30~50%,単球=1~9%


 白血球は,身体に侵入してきた有害な物質(細菌,ウィルス,異物など)を捕らえ,排除し,殺菌したりする.いわば“警察”の役目を果たしている.末梢血液の白血球には,好中球,好酸球,好塩基球,単球,リンパ球の五種類があり,「白血球分画」と呼ばれている.


【白血球分画の役割】


(1)好中球:白血球の40~60%を占め,最も数も多く,また重要な働きをしている.身体のどこかに細菌や異物が侵入すると,好中球が,毛細血管壁を通ってアメーバー様運動により血管外へ飛び出し,局所へ到達する(遊走作用という).無数の白血球が集まったものが,化膿巣すなわち‘うみ’である.局所に到達した好中球は,細菌や異物を取り込み(貪食作用という),細胞内で消化してしまう(殺菌作用という).
   このように,細菌などの感染症で最も重要な役割を果たしているのが好中球である.したがって,一般に「白血球が増加している」といえば,好中球の増加を意味していることが多い.

(2)リンパ球:白血球の中で,好中球に次いで数が多く,30~50%を占めるのがリンパ球である.リンパ球には,「Tリンパ球」と「Bリンパ球」の二種があるが,末梢血液では,約80%が前者である.

 リンパ球は“免疫担当細胞”とも呼ばれ,免疫反応の中心的役割を担っている.異物(抗原ともいう)が体内に侵入すると,Tリンパ球が接触し,抗原・抗体反応をBリンパ球と共に担う.アレルギー反応や拒絶反応をも担っている.

(3)好酸球:好中球と同じく,遊走作用,貪食作用があるが,通常の細菌による炎症では動員されない.殺菌作用が無いためであろう.アレルギー反応(アトピー性皮膚炎,薬疹,気管支喘息など)や,膠原病の場合には増多をみる.

(4)単球・好塩基球:貪食作用があるが,通常の炎症では動員されない.まれに,慢性感染症(結核症など),伝染性単球症などで増加をみることがある.

 白血球は,骨髄においてコロニー刺激因子(colony stimulating factor, CSF)と呼ばれる造血因子の作用により,血液細胞の母細胞である幹細胞から分化する.好中球では,骨髄内で骨髄芽球→前骨髄球→骨髄球→後骨髄球まで成熟し,桿状核好中球として末梢血液に流出する(約8日間かかるとされる).リンパ球の生成メカニズムについては,TおよびBリンパ球も骨髄由来であり,胸腺,リンパ組織を経て生成されるが,未知な部分が多い.


【白血球の異常例】


(ⅰ)白血球増加

 白血球数は年齢によって大きく変動する(上述の正常値は成人のものである).幼児・小児では概して高く,6000~11000で,二十歳くらいで成人値に達する.また,肉体的ストレス(疼痛,運動,寒冷など)や精神的ストレスでも,一時的に2000~3000までの増加がみられることがある.ヘビースモーカーでも軽度の増加がみられる場合がある.
 白血球の増加をみる場合,どの種類の白血球が増えているのかを知る必要がある.すなわち「白血球分画」を調べることが大切である.
 最も日常的にみられるのは好中球の増加である.集団検診などで軽度(3000程度)の白血球増加が指摘され,再検査してみると正常(9000以下)といったことが少なくない.原因不明といってよい場合も多いが,軽い風邪や胃腸炎が原因であったり,やや脱水気味とか精神的ストレスなどのせいであることが多い.こうした場合は,当然ながら貧血も無く,また他の検査にも異常が無いことが通例である.
 好中球の増加をみる疾患としては,次のようなケースが考えられる.
●急性感染症:細菌による局所性および全身性感染(扁桃腺炎,肺炎,胃腸炎,虫垂炎,胆のう炎,膀胱炎,化膿症など).臨床的には発熱があり,傷害された臓器特有の症状をみる.この場合は,抗生物質の適切な使用により治癒する例がほとんどである.
●組織の壊死に伴うもの:心筋梗塞,広範な火傷,悪性腫瘍,壊疽など.
●骨髄性白血病:骨髄において白血球が異常に増殖するので,骨髄における“癌”ともいえる.異常な白血球(白血病細胞という)の出現が必須である.
 白血球数は著明な増加(30000以上)をみる一方で,まれに著明な減少(1000台)をみることもある.白血病には貧血を伴うことが多い.その恐れがあるときには,骨髄を穿刺して,骨髄での造血状態を調べる必要がある.
 次いで,まれなことであるが,好酸球が増加する場合がある.これには寄生虫疾患,アレルギー疾患(アトピー性皮膚炎,じんましん,薬疹,気管支喘息など),急性感染症の回復期にある,などの原因が考えられる.

(ⅱ)白血球減少

 白血球の減少(4000以下)は,好中球の減少がその原因である.2000以下ならば明らかに異常である.このようなときには,細菌やウィルスなどによる感染に対して防衛反応が低下し,重症化することがあるので注意を要する.
 白血球の減少をきたす原因には,次のようなケースが考えられる.
●骨髄での造血幹細胞の障害:急性白血病,再生不良性貧血などの血液疾患によるもの.化学薬品(サルファ剤,抗生物質,鎮痛解熱剤,抗痙攣剤,抗甲状腺剤など)や,放射線照射による骨髄障害によるもの.
●成熟好中球の消費および破壊の亢進:肝硬変などの脾腫大による破壊の亢進.重症感染症による消費増大によるもの.
 このうち,最も頻度が高いのは,肝硬変に伴う白血球減少である.まれに1000台にもなることがある.
 注意しなくてはならないのは,薬剤による白血球減少である.抗甲状腺剤によるものは有名である.アレルギー反応によることが多く,突然に白血球が減少して,結果として重症感染症(敗血症)に陥ることがある.白血球減少を指摘されたら,一度服用している薬剤を疑った方が良い.
 まれに急性白血病がある.白血病というと,白血球が増加しているものとのイメージが強いが,必ずしもそうではない.急性白血病の約半数が白血球増加をみるにすぎず,残りの半数は,正常もしくは減少をみとめるのである.白血球数2000以下という高度の減少症の場合には,急性白血病も疑われる.その際には「白血球分画」で,末梢血液における白血病細胞の出現の有無,さらには骨髄を穿刺して骨髄細胞の異常があるかどうかが検索される.
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