『福島の歴史物語」

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2017.03.26
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   伊豆と関る郡山の地名

 現在の郡山市内に、久留米という町名があります。これは明治の初期、旧久留米藩の氏族が移住してきて開拓した場所です。このような形で地名が生まれることは古い時代からあることで、決して珍しいことではありません。ところで、中世に安積郡を支配した工藤氏が伊東氏と姓を変えたのは、伊豆(静岡県)の伊東市との関連が感じられます。その工藤(伊東)氏が最初に入ったのは、片平町の可能性があります。

 その理由の第一は、伊豆関連の地名・神社がこの辺りに集中していることにあります。片平にある大宮権現は、伊豆・箱根・三島の三神を祀っており、伊東家の氏神であったといわれます。 『郡山の地名』にも、『片平が鎌倉時代から戦国時代にかけて支配していた安積伊東氏の直轄地』とあるのです。また片平町に城塞関係の地名として残されているものに、上 館・中館・下館・西戸城・東戸城・門口・館堀・外堀・新堀・的場・馬場下、さらに寺町を示唆する寺下(いまでも三ヶ寺・常居寺・岩蔵寺・広修寺が集中している) などがあるのです。

 第二に、片平城の規模が大きいことです。『会津・仙道・海道地方諸城の研究』には、次のような記述があります。記述の中で、伊東と伊藤が混在していますが理由は分かりません。これらの関係があってか、郡山には伊豆関連の地名が多いのです。ただしこれらの全てが、祐長の時代に命名されたものとは限らないと思われますが、次に箇条書きにしてみます。

   熱海町
 熱海という地名の命名は意外に新しく、昭和十五年(1940)に安達郡高川村が町制を施行した際、改称して熱海町となったものです。この町名になる以前は、高川温泉とでも言ったのでしょうか。この変更は祐長の時代ではありませんが、伊豆の熱海を意識したものと思われます。

   来宮(きのみや・木宮)
 片平町に木宮、木宮東、木宮南、木宮道東、木宮道西という小字が、また熱海町に木ノ宮という小字があります。伊豆の熱海市には来宮という地名があり、古くからあった來宮神社がその元になったと思われます。木宮は、来宮と同じ意味でしょう。

   上伊豆島、下伊豆島
 この2つの字名は、熱海町にあります。これについては伊豆国、もしくは伊豆半島から命名されたものと考えていましたが、三宅島の中に『伊豆』という字名を見つけるに及んで、これから採ったものだと考えるようになりました。その理由の一つに、三宅島村伊豆の大久保海岸は通称、伊豆下海岸と呼ばれていることから、下伊豆島との間に、微妙な接点が感じられます。なお静岡県熱海市内にも伊豆山という地名があります。

   安子ヶ島
 熱海町に安子ヶ島という字名があります。三宅島に『阿古』という字名があることから、安子ケ島の地名になったのではないでしょうか。

   河内(こうづ)
 逢瀬町に河内という字名があります。通常この字は、『かわうち』とか『かわち』または『こうち』とは読みますが、『こうず』とは読まれません。こう読まれるようになった想像ですが、本来、伊豆の工藤氏の本家であるべきであった工藤祐泰が、いまの静岡県賀茂郡河津町に住み『河津』九郎祐泰と姓が変わっています。現在この河津は、『かわつ』と読まれますが、当時は『こうづ』と呼ばれていたのではないでしょうか。また、河内(こうづ)は神津島(こうづしま)からとったとも考えられます。

   大島
 富田町に大島、大島前という字名があります。また市内の町名表示が変更になる前に、現在のおおよそ並木一丁目 並木四丁目 桑野五丁目の範囲に大島、大島向、大島東、大島前、大島上、大島下という地名でした。この多くの大島は、伊豆大島から名付けられたと考えられないでしょうか。なお地名としては失われてしまいましたが、この地域には大島小学校、大島公民館、大島東公園、大島中央公園、大島西公園など旧大島の字名を冠した施設があります。せめてこれらの公共施設の中に、大島の地名を残しておいてほしいと思います。

   富士壇と藤坦
 熱海町高玉字富士壇は、市立熱海中学校そばの高台の地名です。周辺に富士に似た山があるかも知れないと期待して見に行きましたが、それはありませんでした。そこで農作業をしていた人に聞いたところ、「向こうに三春富士(いまは田村富士ともいう)がある」と言って教えてくれました。これが田村市船引町にある片曽根山です。なるほどそれは、富士山に似た姿をしていました。また日和田町高倉と三穂田町大谷、さらに今の喜久田町原三丁目地内にも字藤坦がありました。現地に行ってみると、これらの場所からも片曽根山がよく見えていました。これはいつの時にか、富士が藤になったのではないでしょうか。
 これに似た例として、東京に富士見坂とか富士見町などの地名があります。これなども富士山がよく見えることから付けられたといわれます。それこそ今だからこそ、日本人なら誰でも富士山の形を知っていますが、富士壇(藤坦)という地名を付けたと思われる人が八百年も前の人であるとすれば、これらの地名は伊豆から来た人たちが付けたとしか考えようがありません。この古い時代に郡山の人たちが富士の山容を知って名付けたとは、到底あり得ないと思われるからです。

   鎌倉池
 大槻町の瀬戸地内にこの池があります。鎌倉は伊豆半島ではありませんが、鎌倉幕府の、つまり源頼朝の本拠地でした。そう考えれば鎌倉池も、伊豆(伊東氏)関連の名と考えてもいいのかも知れません。

   工藤台
 三穂田町野田に工藤台という地名があります。工藤氏が伊東氏の元の姓であることから、これも伊豆(伊東氏)関連の地名と考えてもよいのではないでしょうか。

   春日
 大槻町春日、三穂田町富岡字春日、三穂田町富岡字春日舘、三穂田町字春日原などの地名がありまdす。この春日という地名は、伊豆には無いようですが、春日神社が伊豆の工藤氏の守り神であったと言われることから、これも伊豆(伊東氏)関連の地名と考えても、いいのかも知れません。




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最終更新日  2017.03.26 09:13:40
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