Take It Eazy ~Lovely Day~

Take It Eazy ~Lovely Day~

キミノアシオト その1 足音



 
~キミノアシオト~ その1 足音

「まぁ、とにかく、応募してみようかな。」
 軽い気持ちで5巻パックをかごに入れて、レジに並んだ。

 1997年9月、まだ残暑厳しい頃。
槇原敬之さんが出演したCMで知った、
某缶コーヒーの『聖火リレー応援プレゼント』。
『聖火』と書いて『トーチ』と読むプレゼント。
 『槇原敬之プライベートコンサート、抽選で100名様ご招待』
そんなプレゼントを、スーパーの缶ドリンク売場の告知ポスターで見かけた。
ただし当選した場合、会場までの交通費や宿泊費は自己負担。
会場は東京だから、 僕が住む鹿児島からだと結構かかる。
(ちなみに僕は、窓から海をへだてた桜島が見える、そんな所に住んでいる)
それよりも、全国で100名だから、宝くじで大金を当選する確率にほぼ等しい

 「当たるわけないじゃん。」
 当然そう思ったけれど、応募期間2ヶ月、
ほぼ毎日その缶コーヒーを飲んでいた。
おまけに職場で、いろんな人から缶コーヒーに付いている
応募シールをいただいていたので、
おそらく20口分は応募したと記憶している。
でも、さすがにコンサートに応募しているとは言えなかった。
男はつらいっすねぇ。

 11月下旬。 鹿児島も、冬がはじまるよ。
 10月末日で応募が締め切られので、すっかり懸賞のことなど忘れていた。
それよりも、27日に発売される槇原さんの
ニューアルバムが待ち遠しかった。
仕事から帰ってきて、こたつでくつろいでいた、ある夕方。
珍しく僕あてに、簡易書留が配達されてきた。
真っ白い封筒の裏、紺色の文字
の差出人を見ると、例のドリンク会社!

「もしかして?」

と思い出しながら封を開けると、やっぱり当選通知!

  予想もしなかった意外な出来事だったが、
大喜びしてしまったのはもちろん言うまでもない。

やったね。

後日、例の会社から参加意志の確認の電話があり、
当然 OK!と答えた。
それから、槇原さんの事務所からは、当選者宛への挨拶状が届いた。
「コンサートは、『槇原敬之コンサートツアー'98 ~Where is The LOVELY PLACE?~』の内容を
いち早く皆様に楽しんで頂 くという企画になりました。」
 嬉しい悲鳴が出そうになったよ

 12月17日、コンサート当日。
 ひとり、遠く遠く、北へ北へと飛行機でやって来た久々の東京は、
白い天空と冷たい風。
そして、クリスマスを待ち楽しんでいる街角。
 羽田空港から何度か電車を乗り換えて、
ようやくたどり着いた京王線東府中駅
ここが会場への最寄り駅である。

駅周辺は、都内府中市中心から離れていたので、
いろんなお店がある割には、落ち着いた雰囲気があった。
その駅のそばにあるホテルでチェックインを済ませ、
しばらくしてから会場へ向かった。
曇り空が昼よりも重く見えた、夕方5時半。
歩いて5分ぐらいで、目的地のコンサート会場に着いた。

その会場の名は、『府中の森芸術劇場』。

次につづく・・・








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