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2008.07.01
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カテゴリ: びしびし本格推理
「吉敷刑事シリーズ」で先輩刑事として登場している中村刑事を主人公にした渋めの作品を読んだ。

○ストーリー
年末に四谷の雑居ビルで火事があり,警備員が焼死する。中村刑事は警備員が同棲していた女性が消えていることを不審に思い,事件を追い続ける。1人の女性の半生が明らかになってくる中,第2,第3の火事が起きる。果たして,中村がたどり着いた真相とは?

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吉敷刑事の良き先輩,牛越刑事の相談相手である中村刑事を主人公にしたミステリーだ。時刻表を使ったトリックも,猟奇的な死体も存在しない。普通の刑事が,淡々と地道に事実を追い続け,犯人に肉薄していく過程が描かれている。

前半は中村が”幻の女”を探し,徐々に手掛かりが集まり,女性を見つけ出すまでが描かれる。女性の生き方を決定付けたという,彼女の故郷のさびれた風景が印象的だ。

後半は連続不審火の犯人と中村の知恵比べが描かれる。犯人の次の行動を推理しようとする中村の活躍はなかなか読み応えがあり,静かな作品の中で,ここだけは緊張感がみなぎっている。

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この作品は,『社会派ミステリー』として紹介されていることが多い。登場人物たちが寡黙であることも手伝って,島田荘司作品にしては華に欠ける気がする。彼らは東京に住み,孤独を抱え,出会い,そして悲劇が生まれる。



江戸による東京への復讐,というのはえらく大掛かりで,ストーリーとしてはインパクトがある。だいぶ歴史や都市計画を曲解しているような気がしたが,これは作品内の登場人物がそうした解釈なのか,島田荘司自身なのかは不明だ。

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この作品の読後感が重苦しいのは,上に記したように華に欠けているということに加え,登場人物たちに同情を感じられないということもあると思う。”幻の女”,その友人,被害者の警備員,不審火の犯人,これらの人々がそろって孤独で,一方で相手の弱みを利用して他人との関係を維持しようとするようなところがある。

この作品を読むと,東京での1人暮らしに対して恐怖感ばかりが生じてしまうような気がするなあ。

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故郷から東京に出て,その中で翻弄される”幻の女”は東から西へ西へと引越しを繰り返し,一方で四谷で始まった不審火はそこから東へ東へと場所を移して発生を繰り返す。不思議に印象的な交差だった。









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Last updated  2008.07.05 23:15:38
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