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2008.09.09
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カテゴリ: びしびし本格推理
島田荘司の名探偵・御手洗潔の第1短編集を読んだ。なかなか驚きに満ちていた。

○ストーリー
アマチュアバンドのメンバー・タックこと隈能美堂巧は,演奏を通じてできた知人のマンションへ遊びに行く。嵐となった夜,1人の男がオーナー夫人のネックレスを盗んで逃げ出す。だがそのたった数分後,その男は絞殺死体となって,近くの高架線路に倒れていた。知人たちも,警察も混乱する中,居合わせた別の男が全ての謎を解いてしまう。その名前は,御手洗潔と言った。

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4つの短編が収められている。「占星術殺人事件」「斜め屋敷の犯罪」では,奇行ばかりが目立っていた御手洗だが,この作品ではシッカリとしたところ,優しいところ,ギターの超絶技巧,流暢な英語,犬への愛情,と様々な新しい魅力を見せている。

それだけでなく,作品がのびのびと書かれていたのに驚いた。「吉敷刑事シリーズ」の重々しさも,「嘘でもいいからシリーズ」のムリを感じる明るさも,女性を主人公にした一連のミステリーのぎこちなさもなく,御手洗と石岡コンビを存分に使って,楽しさにあふれた作品となっている。

「占星術殺人事件」は,今でこそ”新本格ミステリームーブメントの発祥の作品”とされているが,当時商業的にはあまり好まれていなかった,というのは有名な話だ。そのため,島田荘司は,トラベルミステリー風の「吉敷刑事シリーズ」を地道に進め,女性向けのライトミステリーも書き,と別系統の作品を書かざるを得なかった。

「御手洗潔の挨拶」は,島田荘司が数年ぶりに発表できた”新本格ミステリー”で,”本来書きたかったものが書ける”という喜びに満ちているように思える。

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「数字錠」:数字錠と騒音を発するシャッターで,実質的に密室となっていた町工場で,経営者が殺されていた。だがこの事件には悲しい真実が隠されていた。・・・御手洗潔が高潔な人物のように振舞う,ある人の夢を叶えるため。なんで警察はこんなにもたもたするのか?という点と,「で,数字錠は?」という点を除けば,少しやりすぎではないかと思えるほどファンタジックだ。

「疾走する死者」:マンションから逃げた男は,次の瞬間離れた場所で線路に飛び込んでいた。・・・え,「嘘でもいいからシリーズ」?と思ったら,タックが語り手を勤める御手洗潔作品だった。新本格派らしい作品。

「紫電改研究保存会」:謎の大男の訪問を受けた僕は,あることと引き換えに彼の団体の手伝いをする。その不思議な体験の謎を解いたのは,居酒屋で隣に座った男だった。・・・4編の
中でいちばん短いが,不思議なユーモアにあふれ最も楽しい作品でもある。ホームズ風だ。

「ギリシャの犬」:誘拐された少年を探し,御手洗達は舟で隅田川を上り下りする。果たして彼らは間に合うのか?そして全ての謎が指し示すのは?・・・誘拐,暗号,別の事件,とちょっとした長編なみの濃い内容だ。御手洗潔の推理の切れ味も最高。







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Last updated  2008.09.11 00:35:42
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