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2009.03.19
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カテゴリ: びしびし本格推理
名探偵・御手洗潔の少年時代,というファンにとっては貴重な島田荘司作品を読んだ。

○ストーリー
5才の少年・御手洗潔のともだちの父親が自動車で海に転落死をし,一方で一家の経営していた飲み屋ではガラス食器が割られていた。悲しみにくれるともだちをなぐさめ,犯人を捕まえるために少年探偵は懸命に街を走る。

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「鈴蘭事件」と「Pの密室」の2編の中編が収められてる。「鈴蘭事件」で御手洗潔は幼稚園生,「Pの密室」でも小学校2年生という状態だ。人気のシリーズキャラクターの過去を描く,という趣向の作品はいくつもあるが,幼稚園までさかのぼるというのはなかなか無いかも知れない。この頃の島田荘司の人気の度合いが量られるというものだ。

幼児という姿でありながら,御手洗潔の頭脳そして行動力は大人に遜色ない。警官に談判をし,証拠の保全のために走り回り,犯人と交渉を行う。ひょっとしたら大人になった後よりも積極的に活躍しているかも知れない。

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さてこの作品は「御手洗潔の育った環境を知りたい」というファンの要望に応える形で執筆されたらしい。御手洗潔の幼年時代の情報は,意外な部分と納得の行く部分とがあり,確かにファンにとってはうれしい内容だ。

だがその分,それ以外の人にとってはアピールするポイントが少ない作品とも言える。不自然に頭のいい幼稚園生が活躍し,妙に厭世的なセリフをつぶやく。また,まだ「鈴蘭事件」では少年はともだちを救うという目的があったのに,「Pの密室」では用も無いのに事件に首を突っ込んで来ており,その行動には首を傾げざるをえない。



表題作の「Pの密室」についてはどうしても指摘しておくべき点がある。この物語ではある家で密室殺人が発生し,本格ミステリーの伝統に従って,その家の平面図が文中に挿入される。だが,たった2階建ての住宅の平面図を,わざわざ1フロアごと3枚にも分割して表示するのだ。これには理由があるのだけど,こうした情報の提示方法はさすがにアンフェアだと思う。

また,ぶつ切りとは言え平面図が表示されているのに,住宅一軒の部屋割りについての描写が延々と30ページ近く続く。150ページ程度の中編で,なんと1/5が舞台の描写に費やされているのだ。なんだかアンバランスな印象を受けた。

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主人公の行動や周りの大人の対応なども不自然さが目立つが,それより困ってしまうのはトリックの部分で,強引に成り立たせていると感じた。かなり欠点の目立つ2つの中編なのだが,そこは職人・島田荘司,ラストにはそれぞれ印象深いシーンとセリフを持ってきて,きれいに幕切れとしている。

いつも以上に作家・島田荘司の豪腕ぶりに恐れ入ってしまった作品だった。









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Last updated  2009.03.22 13:22:16
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