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2009.05.09
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カテゴリ: 映画を観たよ
久々に考えさせられるハリウッド映画を観た。

○ストーリー
共和党の実力派議員アーヴィングに呼ばれたベテラン記者のジャニーンは,今ちょうど動き出したアフガニスタンでの作戦行動を知らせれ,その独占報道を持ちかけられる。一方,その軍事作戦に従事している2人の青年兵士の指導教授だったマレーは,彼らがやり残したプロジェクトの引継ぎを1人の学生に持ちかける。2ヶ所で議論が戦わされる中,アフガニスタンの戦場では不測の事態が起こり始める。全てが終わった時,決意された事とは?

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ロバート・レッドフォード製作・監督・出演の作品で,メリル・ストリープとトム・クルーズも出演している驚くほど硬派の作品だ。

映画は,ワシントンで議論している2人,カリフォルニアで議論している2人,そしてアフガニスタンの戦場で孤立している2人,と6人のアメリカ人にフォーカスしている。アフガニスタンの戦場も,中盤以降はアクションが無くなるので,映画というよりは舞台劇のような展開となる。

それにしてもここまで露骨にリベラル主張の映画が製作され流通されるということは,ハリウッドの本来の伝統がまだ生き残っているという証明で安心させられる。この映画に関わると言う事だけで,あるレッテルを貼られることになっただろうから,俳優・スタッフ共にそれなりの覚悟を持って臨んだのだろう。

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出演者はそれぞれアメリカ社会のある側面を体現している。アーヴィング議員(トム・クルーズ)はタカ派,女流記者ジャーニン(メリル・ストリープ)は日常の経済活動に追われる現実系リベラル派,マレー教授(ロバート・レッドフォード)は挫折を感じている学術系リベラル派を現している。



マイノリティーの2人の青年が,かつてのマレー教授の教え子で,この映画で起きている時間軸ではちょうどアフガンで作戦に従事しているという偶然は,この映画の最も露骨なトリックだろう。そうでなければ3ヶ所で起きている物語がつながらないのだけれど,そうでなければ観客の気持ちが動かないからだ。

とは言え,それ以外の点を見ればこの映画で俳優たちが体現しているアメリカの側面は,ひじょうにフェアに描かれている。アーヴィング議員と記者ジャーニンの間でのタカ派対リベラル派の議論では,もちろん全面的な対決姿勢となるのだが,それぞれが自分たちの現実的な立場も分析して見せる。またタカ派は9.11を起こしてしまった,リベラル派は9.11直後はタカ派に迎合してしまったという過去の過ちなども素直に認めている。

政治とマスコミの代表者2人に対し,マレー教授は学者を代表している。彼が教え子トッドにもらすセリフの1つは政治学の学問の限界を認めるセリフであり,また一定の年令に達した者が半生を振り返って能力の無さを認める言葉であり,とても重い。

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映画はある事件の発生でほとんど唐突に終わってしまう。それを知った若いトッドと記者ジャーニンがどういう行動を取るのかまでは描かれていない。

この終わり方もまたトリッキーで論議を呼んでいる。もちろん製作したレッドフォードとしてはリベラルな行動を希望しているのだろうけど,映画としては観客がタカ派・リベラル派どちらの解釈も取れるようになっている。

こうして終わられてしまうと改めて映画の原題の『羊のための獅子』を考えさせれてしまう。アメリカ映画の,そしてアメリカ社会の成熟さを感じさせる作品だ。







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Last updated  2009.05.10 07:28:47
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