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2009.10.22
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恩田陸が劇団キャラメルボックスのために書き下ろした戯曲を読んだ。

○ストーリー
高校時代の友人の葬式に,同窓生たちが出席した。その帰りに思い出を語り合う男女の間に,ふとしたことから緊張が高まる。亡くなった友人と最後に会ったのは誰なのか?そして高校時代に起きたある事件の真相とは?

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他の書評でも指摘されているが「朝日のようにさわやかに」に収録されている短編「楽園を追われて」とよく似た骨子の作品だ。だが「楽園を追われて」が10ページ程度の短編だが,この作品はだいぶボリュームアップされている。

何しろ「猫と針」は,上演時間100分の戯曲の脚本だし,執筆の記録と合わせて,立派に1冊の作品として刊行されている。もっとも,おそらく小説と同じフォーマットにしたら,中編程度の長さしかないと思う。

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問題は相似性よりも,中に詰まっているアイディアが同じ位しかないのに,片方は短編,片方は戯曲として仕上げられてしまったと言うことだと思う。

「猫と針」は,小劇場の1幕モノとして設定されており,よく言えばひと昔の前衛劇,悪く言えばオカネのかからない舞台となるように仕上げられている。登場人物は5名のみ,セットで必要なのはイスが5脚,1幕モノなので場面はこれだけだ。



つまるところキャラクターにも場面にも彩りや盛り上りが感じられない作品となっている。恩田作品では登場人物の微妙な心理描写が重要だったり,クライマックスの場面が劇的だったりするものが多いが,そうした要素がスッパリと取り払われてしまっていて物足りない。

そうした要素は演劇であっても実現可能なハズなので,恩田陸が意図的に,あるいは誤解をしていて,その可能性を削ってしまっているようで残念だ。

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この頃の恩田陸が舞台演劇に強い興味を抱いていたことは「中庭の出来事」への感想でも述べた。戯曲の脚本という表現方法もそうだし,映画とは異なる「観る者」と「観られる者」への考察も共通している。

ミステリー作品と舞台劇というものも,伝統的には相性がよく,いくつも名作がある。「観られる者」に関する考察も,犯罪者,探偵,読者というミステリーの枠組みへの考察と重なる要素も多く,着眼点としてはひじょうに面白いと思う。

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だが言うまでもなく,この作品の最大の欠点は,明確な謎解きがされないということだ。ミステリーで全ての謎が解かれる必要があるとは思っていないが,ここまで多くの作品がオープンエンドで終わっていてもゆるされている商業作家は,恩田陸以外にいないだろう。

恩田陸自身が,この作品の「恩田陸カラーは薄まった」と述べているため,それに沿った書評を見かけるが,どうしてどうしてこの作品の見事なオープンエンドは,間違いなく濃密な「恩田陸カラー」だ。

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僕自身は恩田陸ファンのつもりだが,日記風のあとがきには落胆を覚えた。売れっ子作家で忙しいのも分かるし,戯曲書き下ろしという経験が大変だったのも分かるが,読者からすれば作品という結果だけが全てだ。

どんなに時間が無かったか,体調が悪かったか,そんなことはどうでもいいと思う。










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Last updated  2009.10.25 18:18:14
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