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2009.11.12
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カテゴリ: わくわく児童文学
「少女海賊ユーリシリーズ」の著者・みおちづるのデビュー作品を読んだ。

○ストーリー
リュタは砂漠の小さな町・ナシスのパン職人の息子だった。学校を卒業し,家業を継ぐためにつらい修行の毎日を過ごすリュタの前に,大きな街から来た男が現れる。やがてナシスは,男のもたらした新しい技術のおかげで大きく発展をしていく。変わりゆく町がリュタの友人,町の笑いもののトンビの生活をおびやかしているということを知ったとき,リュタは・・・

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僕自身もみおちづるのことを「ユーリシリーズ」の作者として知ったが,「ナシスの塔の物語」の魅力はたった1作で「ユーリ」10巻を超えているかも知れない。この作品がより人に知られ,みおちづるがそれによって記憶に残ることを願ってやまない。

ある程度人々に受け入れられるフォーマットを意識したと思われる「ユーリ」と比べ,「ナシスの塔の物語」の世界はぶっきらぼうだ。主人公はパン職人の息子だし,女の子は登場さえもしないし,そもそも舞台は砂漠の小さな町ナシスから動かない。

だがこの作品には,作者が時間をかけ,心をこめて書いたことが伝わってくる暖かさ,読者の心を打つ美しさがある。それこそリュタの父親ではないが,ガンコ職人の手による製品のようなピンと筋の通ったところがある。

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この作品の暖かさの証の1つに,最終的に悪人と呼べる人物がほとんど登場しないことが挙げられる。ナシスの町に元からいる人々も,町を発展させようと移住してきた人々も,それぞれの立場で自分の生活を豊かにしようとしており,特別悪意を持った行動を取ってはいない。



欲にかられた支配者も,復讐にとらわれた男も登場しない。ただ普通の人々の営みの中で小さな町ナシスは徐々に悲劇へと進んでいく。

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この作品に圧倒的なリアリティを与えているのは,人々の生活の営みに対する綿密な描写だろう。主人公リュタの家・パン職人の家の仕事を克明に描くのは当然として,トンビの石選び,石積みの作業の手順,反対にナシスを発展させようとする”歯車屋”の機械改良の努力までも,きちんと描写される。

丁寧な調査と描写のおかげで,町の伝統を守ろうとする側も,町を発展させようとする側も,血の通った生きている人間として迫ってくる。

上橋菜穂子の「守り人シリーズ」も似たようなリアリティのおかげで,”和製ハイファンタジー”として大人気となった。今のところ知名度には大きな差があるが,ここにも同じ志を持った作品がある,ということを強く主張したい。

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ほめてばかりだとバランスを欠くような気もするが,この作品はそれだけの魅力を持っていると思う。元気をくれるラストシーンをぜひとも体験してもらいたい。








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Last updated  2009.11.14 21:18:39
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