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2010.08.23
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カテゴリ: ばくばく冒険小説
伊坂幸太郎の語り口が神話風へと変化したターニングポイントとなる作品を読んだ。

○ストーリー
宮城県の仙醍市をホームとするプロ野球チーム〈仙醍キングス〉の名監督・南雲が試合中の事故で命を落とした瞬間,仙醍のある産院で1人の男児が生まれた。〈キングス〉と南雲の大ファンである両親により,その子どもは王求(おうく)と名付けられ,〈キングス〉の4番バッターを運命付けられた者として,苦しい人生を歩み始める。

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一番の表面上は天才野球選手・山田王求の伝記となっている。すぐ次の階層ではシェークスピア劇の引用を多用した,王あるいは英雄たるべき人物の悲劇となっている。そしてたぶんさらに次の階層に,英雄とともに時間を過ごした人々が,いかに心を共振させたか,という物語が語られている。

と言う風に,僕はこの作品を解釈した。

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これまでの伊坂幸太郎作品と大きく異なる。運命に翻弄されつつも,めげない,あるいは気にしない人物たちを,緻密な構成の中で描いてきたのが伊坂幸太郎の魅力だ。ファンタジーとミステリーの融合のような,基本スタイリッシュな物語がつむぎだされていたと思う。

ところがこの作品は,ひじょうに”ぶっきらぼう”だ。少ない説明で主人公・王求の不思議な人生が語られ,何かというとシェイクスピア悲劇を持ち出し,ぶつ切りな説明で物語は進む。



王求は生まれた時から野球の天才なのだが,彼には不自然に悪い運命ばかりが訪れる。だが王求はそれにひるむことなく,ただひたすらに〈仙醍キングス〉のレギュラーを目指して突き進む。

この主人公はくじけないのではなく,そもそも神話の登場人物のように,人物造形のある部分が欠落していて,ロボットのようにただ前へ進むというところがある。正直,主人公としては魅力に欠ける。

王求はある女性の依頼で,試合中にある行動を取るようになるが,そこに来てはじめて,自分の意思というものが感じられた。

だがそれ以外は,神話伝説のヒーローという役柄で,顔は整っているが,味が無い,という印象は最後までぬぐえない。伊坂幸太郎の主人公ならば,負けてもしらっとしている,という”したたかさ”の方が魅力だと思うな。

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伊坂作品の多くでは,脇役の女性が魅力的だ。えてして男性キャラクターよりもしっかりしていて,やるべきことをきっちりやる,という行動力に満ちた女性が描かれることが多い。

この作品では,主人公・王求の母親がその立場を担っている。だがこの女性は,王求の父親同様にある欠点を持っていて,それゆえにどこか”信じられない”という気持ちを持たせる。

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野球のシーンは意外と少ない。あまり語るとネタバレになるが,それよりも王求をめぐる様々人々の物語の積み重ねになっている。

〈仙醍キングス〉のヤクザなオーナーがなかなか魅力的だった。むしろこの人の方が,歴代の伊坂キャラに近いような気がした。

個人的には無機質とも言える野球のシーンは,どこかかつて「モーニング」で連載していた野球マンガ『Reggie』を思い出させた。



結局,主人公が誰にも心をゆるせないというのは不幸なことだと思うが,その感覚さえも平民ゆえのものなのだろうか?












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Last updated  2010.08.24 00:25:08
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この本は  
mayu0208  さん
苦手です。。。

王求が人間らしくなく 周りの人間にも共感できませんでした。 (2010.08.26 00:02:00)

悲劇  
りぶらり  さん
mayu0208さん


>王求が人間らしくなく 周りの人間にも共感できませんでした。
ヒロインキャラらしい母親は,いつもだったらかなり魅力的だと感じるのですが,さすがに今回は引きました。
ロボット的な主人公と,カルト的な家族・・・最後の王求の行動だけが平民とのつながりなのでしょうか?うーん,難し過ぎる。・・・ってか,楽しくない。


(2010.08.27 21:22:11)

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