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2017.01.26
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カテゴリ: びしびし本格推理
「脳男」の首藤瓜於の長編ミステリーを読んだ。

〇ストーリー
日本随一の精神病医師・養父秀三は理想とする精神病院・葦沢病院を設立した。新米医師の〈おれ〉・使降(しぶり)と相棒の面鏡(いじか)は,ここに赴任することになる。〈おれ〉が担当している西棟には多くの患者がいたが,〈黙狂〉と呼ばれるカルテに記載のない謎の人物もいた。だが〈おれ〉は患者たち,看護師たちとの話から,前身の船走病院の焼失事故に不審な点があることに気付く。だが,その捜査は葦沢病院の運命,そして〈おれ〉の過去ともつながっていた。そして・・・

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平成の「ドグラ・マグラ」へようこそ。

2012年に刊行された600ページ近くになるハードカバーだが,物語の舞台が昭和の初期の精神病院ということで,ぽーんと江戸川乱歩,久生十蘭の世界に投げ込まれたような気分になる。

この作品の一番の魅力は,この濃密な世界観の醸成にあると思う。100年近く前の大型精神病院,その驚くべき患者たち,どこを取っても現代の作品とは思えない重い世界観だ。

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読書体験のどこに重点を置くかは,作品と読者のその都度のバランスで変わる,ということで良いと思っている。僕自身も,ロジカルな物語を求めるか,世界観主導の酩酊感を求めるか,は状況次第で変わっている。



主人公の使降は,患者や看護師たちへのヒアリングを通じて,なんとかその真相に迫ろうとする。

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そうしたメインのストーリーに,他のエピソードが重ねられているのも,昭和ミステリーらしい。〈おれ〉が担当している患者のエピソードが多く,なんと作品タイトルとなっている「幽霊」も「イカ」も,その一人の体験した長い物語に由来している。

こうしたエピソードを重ね合わせた状況が,この作品が目指したことなのだろうと思う。1つ1つのエピソードは,「幽霊烏賊」のものを除けば,正直インパクトに欠ける。けれども「烏賊」を含めて,いくつも重ねることで,独特の世界観が生まれている。

結果的には,終盤の5つほどの章で語られる事件,さらに過去の事象,そして大きな真相のすべてが,この世界観の中で,きっちりした説明がないままだが可とする,という空気に覆われて終わることになる。

ロジカル,あるいはパズラーとしてはまったく容認出来ない結末だろうが,作品全体を通じて明らかに別の方向を示しているのだから,これは認めざるを得ないだろう。

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「大幽霊烏賊」は,21世紀の今に,昭和ホラーミステリーの空気とロジックを展開して見せ,そのままその空気感で収束させてしまった読者置いてけぼりの怪作だ。

まあ,あまりにも平気でヘンなコースに投げ込んで来る剛速球なので,読んでしまうんだけどね。












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Last updated  2017.01.26 22:26:24
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