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2017.10.27
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カテゴリ: ばくばく冒険小説
北森鴻の冒険小説を読んだ。

〇ストーリー

明治政府は国家宗教として神道を選択し,廃仏毀釈を推し進めたため,仏教は凋落しつつあった。日本の仏教を復興させるためには,鎖国を続けている西蔵(チベット)の聖地・ラサからお経の原典を譲り受け,ブッダの思想に立ち戻る必要がある。数名の若者がラサを目指すが,経路である中国清国はアヘン戦争で敗れ国内が乱れ,西欧の諜報員が跋扈していた。若者たちの情熱は,西蔵を中央アジアの重要な足がかりと考えている西欧,ロシア,そして日本の思惑に巻き込まれて行く。若者の1人・能海寛(のうみゆたか)の運命は?

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北森鴻と言えば上品な連作ミステリー,美術ミステリー,そして歴史伝奇ミステリーがイメージされる。今回の作品のような歴史小説は珍しく,他には「蜻蛉始末」などが思い当たるくらいだ。

主人公・能海寛は,中国僧に扮し中国を抜け,ラマ僧に扮してチベットを突破しようとする。彼の周辺には,宣教師を先鋒として植民地支配を進めようとする西欧,彼を密使として利用しようとする日本国家,中国の不幸な人々が現れ,彼の旅を時に助け,時に阻害する。

揚子江をさかのぼる旅は長く,重慶,成都の先は,過酷な登山が続く。峨眉山を越え,ダルツェンド,そしてその先がチベットの入り口だ。吹雪,猛獣,山賊,こうした旅の過程はまさに冒険小説だ。

実在の僧・能海寛を主人公にした,シミュレーション的な歴史冒険小説だ。

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能海寛の真っ直ぐなキャラクターも魅力的だが,彼を支援する案内人の楊用(ヤンヨウ),山岳民族の義烏(イーウー)らもそれぞれ個性的で面白い。

三蔵法師の旅と考えると,西欧や日本の諜報員やその手下が妖怪に相当するのだと思う。能海自身は素直な気持ちで旅を進めているのだが,当時の政治的な状況に引っ張られ,どうしても国際政治の闘争のコマとして扱われてしまう。それを理解しつつも,巻き込まれざるを得ない彼らが哀れだ。

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この作品には残念ながら,いくつかの欠点がある。

まずは,前半に登場したある人物が,後半で超人的な能力を持つ設定で再登場しており,それが不自然であること。

また英国の商社が二面性があることは描かれているのだが,もう1つ最後まで何を目的としているかはっきりしないこと。

そして北森鴻のファンにとっては,ある設定が既に他の作品で語られていることと,それがあまりにも荒唐無稽であることだ。

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この作品や「蜻蛉始末」が,晩年の北森鴻が目指した世界観なんだと思う。書かれることがなかった多くの作品を思い,悲しい気持ちになる。












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Last updated  2017.10.28 18:59:11
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