ランスの日記

ランスの日記


次の日、僕はクイに魔法について聞いた。
「魔法は、練習しだいで、誰でも使えるのよ。レイナも少しは使えるの。これが魔法書。」
そういって、分厚い本を出した。開けてみると、難しい字で、たくさん書いてあった。
「なんて書いてあるか、読めないや・・・。」
素直にそう言うと、
「これは、勉強しないと読めないよ。それに、これに書いてあることだって、ほとんど基礎や、理論ばっかり。勉強して、損した気分。」
軽く苦笑し、続ける。
「魔法はね、イメージなの。それと、唱える人の精神力。それ次第で、何でもできる。でもそれができないから、トレーニングするんだよ。ま、センスも関係してくるけど。」
イメージか・・・。正直、難しかった。それに、見てみないことには・・・。
そのまま頼んだ。
「イメージするのはわかるんだけど・・・。見てみないことには、イメージしにくいよ。」
そうね・・・。軽く言うと、目をつぶった。イメージをしているのかも。
そして・・・。
「氷よ。刃となりて、すべてを切り裂け。“アイスカッター”」
次の瞬間、目の前に、氷の塊りが出来ていた。目にもとまらぬ速さで動き、周りを凍らせながら、木々を倒していく。
「す、すごい・・・。」
初めて魔法見るので、おどろきしかなかった。が、しばらくすると、興奮に変わっていった。
「すごい・・・。すごいよ、クイさん。こんなの、僕にも出来るかな?」
「ふふ。練習しだいでね。」
僕はこのとき、この世界のすごさを、改めて実感した。
クイの話によると、魔法を使う上で必要なのは、精神力、イメージ。
イメージはできるが、精神力とはいったいなんなのか、よくわからなかった。
そして、魔法には、規則性がないことも知った。
呪文も、イメージしやすい言葉にすればいいだけ。
だから、イメージと、精神力しだいでは、雷を落とすことも可能だろう。
そのときから、イメージトレーニングに入った。
しばらくすると、ありきたりな魔法が、イメージとして浮かび上がっていた。
炎の球体、“ファイアーボール”だ。
イメージも、名前もそのまんま。あとは、呪文だけだった。
手を前にかざし、思いついたもので唱えた。
「炎よ。球体となりて、形状を残し、すべてを燃やせ。“ファイアーボール”」
目の前に、炎が浮いていた。
頭の中で、上に飛んでいくイメージをしたとたん、その通りに飛んでいく。
「できた・・・。やった・・・、やった~~。」
まさか、こんなに簡単に出ると思っていなかった。
最低でも一週間は、イメージトレーニングに費やすと思っていた。
うれしくてたまらなかった。クイ達に教えようと、立ち上がったとき、嫌な気配がした。
魔物の気配。そう直感した。僕は急いで、クイたちのもとへと向かった。
到着し、あたりを見回しながら歩く。広い空間が見えてきた。
そこには、足を怪我し、満足に動くことが出来ないレイナと、かなり疲労しているのだろう、汗まみれのクイがいた。
レイナたちの近くには、無数の死体が転がっている。十体ぐらいはあるだろう。
この数を、二人で片付けたのかと思うと、かなりの腕だ。
そして、無傷の魔物が七体。状況を把握したとき、レイナが僕に気付き、叫ぶ。
「私たちは大丈夫だから、逃げて。」
とても大丈夫そうには見えなかった。
刹那、一体が飛び出した。最小限の動きで攻撃をかわし、反撃し、止めを刺す。
その姿はまるで、踊っているようだった。しかし、もう限界だろう。このままじゃ・・・。
(力が・・・。力がほしい。クイを、レイナを守る力が・・・。守られてばかりだ・・・。こんなの・・・。嫌だ・・・。嫌だ!)
心の底からそう思った。そのとき、なにかが変わった。自分の中のなにかが・・・。
強くなれた気がした。
(今なら・・・。今ならやれるかもしれない。)
頭の中で、瞬時にイメージをする。六体をすべて見据え、唱えた。
「大地よ。我が呼びかけに答え、力を与えたまえ。標的に向かいて、つららの如く隆起せよ。“大地の槍”」
唱え終わると、疲れが押し寄せてくる。精神力の意味が、少しわかった。
そして・・・。地面が少し揺れた。一体、また一体、地面から出たつららのような槍に刺さり、絶命して行く。最後の一体が、断末魔を上げ、動かなくなった。

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