「犬太のひこうき雲」蘭ちゃん編


母さん、そしていつもボクを思い出してくれるみんなへ

犬太です(^^)ちょっとご無沙汰していました

こっちへ来て5ヶ月
でも、こっちの世界ではまさに『一瞬』としか表現しようがありません

ボクは、毎日母さんや、お兄ちゃん、お姉ちゃん、
そして母さんを取り巻くみんなの様子を見ています

ちび犬もずいぶん大きくなってきた(*^_^*)
わるさもなかなか板に付いてきた

ボクはなかなか彼のようにわるさをしきれなかったから、
ちび犬を見ていて思わず
「もっとやれ~っ、派手にやれ~っ」
て、応援してしまうんだ

こないだの散歩の時、「もっとやれ~っ」て言ったら、
ちび犬は母さんを田んぼに引っ張り込んじゃった(^o^)
ちょっぴりごめんね、母さん

そうそう、母さんに知らせておきたいことがあるんだ
それは、思ってもいなかった素敵な出逢い・・・

ひとつ目は、3月のこと(^^)
ボクがバイクの手入れをしていると、光さんからメッセージが・・・

「すぐに虹の橋のたもとに行きなさい」って

行ってみると、かわいい柴の女の子が・・
あっ、ボク知ってる  蘭ちゃんだ!

蘭ちゃん橋を渡ってキョロキョロしている
「蘭ちゃん、もうこっちに来ちゃったの?」
「あなたは、だ~れ?」
「犬太ったいうんだ」
「知ってるわ、その名前。あなた私たちの間では、結構有名なのよ(^^)」

蘭ちゃんは、何だかボクより大人びた話し方をした

「ねえ、犬太くん、蘭ちゃんなんてよそよそしい呼び方しないで
『蘭』って呼んでよ。私も『犬太』って呼ぶわね」
「蘭、どうしてこっちに来ちゃったの?
ボクみたいにトラックにぶつかったの?」
「違うわ、わたし今、手術を受けてる最中なの。」

それから、ボクと蘭は、恋人同士のように楽しくじゃれ合った

その時、ボクは思い出した。
ボクは遠い昔、蘭が大好きだったんだ
いつか一緒になるんだと決めてたのに、戦が起こって、
ボクは戦場に行くことになり、本心を伝えることをためらったまま、
戦場で死んでしまった
その後、蘭はずっと1人で過ごしたんだ
戦争や暴力は、決して人を幸せにすることはない
しかし、男は戦わなければならないことがある
ボクは、その一生で蘭を残してきてしまった残念さや、
後に1人残され孤独に過ごした蘭の悲しさを再び感じた
蘭は、昔のことは何も憶えていないようだった



ああ、蘭。やっと逢えたんだね。君のためなら死んでもいい。
いや、君を護るためなら死ねると思ってボクは戦場に行った。
そして、もう一度会いたいと思い、母さんの所に生まれていった
会う日は日一日と近づいていた

でも、突然ボクはこっちの世界に来ちゃったわけだ

ボクは、光さんのスクリーンを見た
スクリーンには、蘭ママが座ることも出来ずに、胸の前で手を組み、
蘭の無事を祈っている様子が映し出されていた

そのとき、光さんの声が聞こえてきた

~犬太、さあどうしますか?あなたが一緒にいたいと言えば、
蘭はこれからずっとあなたのそばにいますよ~

「犬太、不思議よ、とっても不思議なの 生きていたのが嘘みたいで、
こちらの世界がとっても気持ちいいのよ。ねえ、犬太。
ずっとここにいてもいい?」

ボクは蘭のそばにいたかった。
でも蘭ママの、蘭を心配する痛いくらいの気持ちに触れた時、
蘭をボクのそばに置いておくことは出来ないと、思った

「蘭、君はママの所におかえり」
「犬太、私、あなたと離れたくない」

「蘭、違うんだ。君とはまた逢える。今度逢った時は君を離すもんか?
絶対に君を離さないよ。だから、今日は、ママの所へおかえり」
「犬太、私帰らない」

「君は帰らなくちゃいけないんだよ。君はママの所で、
まだしなきゃならないことがある」
ボクは、きつい言葉でそう言った

その後、僕たちは身体を寄せ合い、
お互いの鼓動を強く感じるほど抱き合った

「さよなら、犬太」
「ありがとう、蘭」

スクリーンには手術の終わりかけの映像が映されていた

「犬太、あなた、また物語を書くんでしょう?
その時にちょっとだけ付け加えて欲しいの。
それはね、私からママへのメッセージ」

『ママ、身体の弱い私をもらってくれて、本当にありがとう。
よく分からないけど、今回の私の人生の目的は
「自由にならない身体を持って生きる」ということみたいなの。
でも、眼球がなくても、私にはよく効く耳と鼻があるので
全然不自由してないのよ。
いつも心配してくれて本当にありがとう』

「蘭、必ず伝えるよ、
そうだね、君はまたあっちの世界へ戻ると何も喋れなくなるんだもんね」

「さよなら、犬太」
「さよなら、また逢おう、蘭。大好きだよ」

ボクと蘭は虹の橋のたもとでまた、大きな遠吠えを何回も繰り返した
その後、蘭は虹の橋を反対に渡り、自分の身体に戻った

スクリーンには、目覚めた蘭を迎える
うれしそうな蘭ママの様子が映されていた

ボクはスクリーンの蘭に触れてみた
蘭は…夢の中で、「よく知らない柴に、
『まだ早い、元の世界に戻れ』と吠えられた」としか、
憶えてないようだった

それでいいんだよ、蘭
ママを幸せにしてから、ゆっくりおいで、
ボクものんびり待つことにするよ


その次のお話はね
3月の終わりに、僕ら、こっちの世界にいるものが、
待って待って待ち続けていたひとが、とうとうこっちに来られたんだ

その日も光さんから連絡があって、橋のたもとに行くと、
何だか光さんみたいに感じる大きな存在が橋を渡ってきた

それは、しましまのにゃんこだったんだけど、ただのにゃんこじゃない
実に堂々とした歩き方だった

にゃんこの名前は「ちぃたん」
ちぃたんは、ボクを見るなり「誰だい、お前は?」って(*^_^*)

後から知ったんだけど、ちぃたんは、こっちの世界では、
来る前から超有名で、以前こっちで魔法学校を一番で卒業して、
誰も知らないくらい優秀な魔法使い候補生だった

そしていよいよ魔法使いになるかという時に、
光さんが「待った」をかけたんだって

ちぃたんは、それはそれは優秀だったんだけど、
最後に一番大事な「愛」だけが抜けていたらしい
愛を知らずに魔法を使うことだけを憶えると、悪魔が生まれる
それは、絶対にあってはならない

そのために、光さんはちぃたんをにゃんこの姿にして
、春風さんの所に行かせた

そして、ちぃたんは、その愛を身につけ、
ついにこっちに帰ってきたというわけ

ちぃたんが、光さんとの対面から帰った時は、
こっちに住む者がみんな集まり、「万歳、バンザ~イ」を繰り返し、
本物の指導者の帰りをお祝いしたんだよ

ちぃたんは、春風さんに、愛以上に大切なものはないことを教えられ、
もう魔女になる気はなかったんだけど、
光さんから、「あなたほど魔法使いらしいものはいない」って、
言われて、渋々、魔女に戻ったんだ(^^)

こちらの世界では、ちぃたんを見たら人間さえ頭を下げて
「ちま様、ごきげんよう」ってあいさつするんだよ

ちぃたんの言いたいことはいずれ、春風さんに直接伝えるから、
今日は言わないんだって

母さん、、ボクもずいぶん大人になったでしょ?(^^)
今はこちらの住み心地にも慣れて、毎日楽しく暮らしているよ
でも、母さんの心の番犬であることは忘れたことはないし、
母さんがそっちの世界での役目を終えた時には、
きっと橋のたもとまで迎えに行くからね(^_-)

母さん、大好きだよ(^^)/忘れるもんか
母さん・・・・母さん、幸せになってよ、
ボクがいつもそばについているから(^^)/~~~

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