そのさきにあるもの。

そのさきにあるもの。

ヴァイブレータ


寺島しのぶがカワイイ表情をみせます。美人じゃないのがいいです。
全然関係ないけど、桐生夏生の『グロテスク』の主人公も彼女が似合うかも。

「癒し」という言葉は好きではないのですが、
私も一度こんな出会いをして少しいいものになりたいと思いました。

まあ、簡単にいえば大森南朋演じる岡部が、
どこにもいないけど、いて欲しいと切に思わせる男です。
大森さん本人にすでに惚れている気もしますが。。。(それが本音?)

インタビューで大森氏が怜のこと「困った人ですよね。」と表していました。
そうかも。
二十歳ぐらいの女の子のわがままは、可愛いとされるけど、
三十歳になったら、大人でいなくてはいけないから、責められる。
でも困ったと思っても、認めて欲しいなぁと思う。

以下、ネタばれです。最後まで書いてあるので注意です。
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早川怜は31歳のフリーライター。
頭に響く声に悩まされ、アルコールと吐き戻しを繰り返す。
ある日、コンビニで出会った長靴のトラック運転手の男と出会う。
目線がぶつかる。
「あれ食べたい。」
胸ポケットの携帯がヴァイブレーションする。

男の名前は岡部。
フリーのトラック運転手で、新潟まで荷物を運ぶ。
過去には色々とヤバイ仕事を請け負ってきたという。

二人のトラックでの旅が始まった。

トラックの業界のこと、無線ハムのこと、自分の過去のこと、岡部は絶え間なく話し続ける。
何故この男はこんなにも饒舌なんだろう。
でも、言葉のクッションが、トラックのアイドリングとともに暖かい寝床になる。

「あなたにさわりたい」「でも怖いの」
見ず知らずの男の車に乗るなんて、本当は怜だって経験がないことなのだろう。
どんなに頭の中の言葉が毒づいても、どうしようもなくて、寂しくて、
疲れていて、ふれて欲しくて。

「こっちにくる?」
少し目線を宙に躍らせてから吐く岡部の言葉が優しい。

そしてまた、吐き戻しをする怜。岡部はお風呂で抱きしめる。
「この男は本能的にやさしいんだ」
ちゃんとお湯の温度を見てくれる。傷みやすい桃ならそっと扱う。

今の怜はコワレモノだ。
でも、世の中はそんな怜を、決して優しくは扱ってはくれない。
30歳を超えて、仕事は成果を出さなければならない。
でも、世間や家族・親類は、結婚、そして出産という壁を幾重にもめぐらして来る。

違う。
コワレモノにしているのは世間じゃない。自分自身だ。
そう、ただ寂しくて、自身がなくて。
口に出せない、「誰かそばにいて。支えて。」とは。

劇中で怜は自分のことはあまり語らないけれど、同世代の女性なら感じているしがらみを投影するのだろう。

二人で食事をする。
食べない怜に向かって「食べなきゃ吐けないだろう」という岡部。
そうなんだ。
逆転の発想。この言葉は、くもの糸になる。

「運転してみる?」
沢山の言葉で繕われてきた本性が現れたとき、岡部は怜に心を聴す。
だって、大事な商売道具であるトラックの運転を預けるのだもの。
信頼された、認められたと本当に感じられたのはこのときが初めてかもしれない。

だから彼女は再び振り出しのコンビニに戻って立ち去るのだし、
岡部もゆっくりと目線をうつしたら、もう振り返らないのだ。



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