放浪の達人ブログ

カトマンズ行きニセ物チケット

インドでの野宿が明けた朝もやの中、カトマンズ行きのバスに乗った。
バスに乗り込むと、何と同じ年くらいの一人の日本人がいた。
何がうれしくてこんなインドのド田舎にいるんだろう? バカじゃねーの? と思ったが、
きっと相手も俺を見てそう思った事だろう。

2人共しばらく日本語から遠ざかっていたので話は弾んだ。
お互いインドでどんな目に逢ったかとか、今から行くネパールは噂ではすんげえいい所らしい、など話は尽きない。
俺の心はすでに天国のようなネパールを思い描いていた。

しかし1時間程走って車掌がバスチケットをチェックした時、悪夢はまたもやって来た。
「キミ達のチケットは偽物だ。すぐ降りろ!」
ええーっ! 降りろったってこんな平原の真ん中で…と思っているヒマなく、
俺達2人はバスからつまみ出された。
偶然にも2人共インチキ旅行店でチケットを買ってしまったのだ。
車掌は紙きれに何やら書き、「ま、困ったらこの紙を見せな。そうすりゃ誰か助けてくれるよ」と言って、
バスと共に消えて行った。

俺達2人は平原の真ん中で途方に暮れた。せめて次の村で降ろしてくれりゃいいのに。
だが、とことん楽観主義の俺は
「まあ、こんなのもいいんじゃねーの? これこそ旅じゃん」と、
今から自分がどう転がっていくのか、楽しみに見てる事にした。

しばらくすると平原の彼方から、1台のジープが砂煙をあげて近づいて来た。
「よっしゃー。ヒッチハイクだぜ」と、俺達は大きく両手を広げジープを止めた。
だがその4人乗りのジープには、インド人が11人も乗っているではないか。
「国境まで行きたいんだけど、定員オーバーのようですね。あの、ま、まあ次の車を待ちます。ハハ」と言う俺に、
「遠慮すんなよ。乗れよ」
ええーっ! 乗るってどこに!?
遠慮じゃなく敬遠してるのに、俺達はジープに暖かく、かつ強引に迎え入れられた。
かくして13人も乗せたジープは国境へ向かって北へ北へと走ったのであった。(続)




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