放浪の達人ブログ

解放感



先日友人とハイキングに行って来た。当初は山の上の無人避難小屋で
宿泊するつもりだったが、その2週間ほど前に疲労凍死、滑落死などが
立て続けに起こったので急遽スケジュールを変えた。
深夜に麓を出発し、朝焼けを見てから下山という徹夜ハイキングに変更である。
ちょうどその日の前後はオリオン座流星群と重なり、流れ星が降る中での登りとなった。

地平線から昇る見事な朝陽を眺めながら友人は崖の上の岩から立ちションをした。
山の上での立ちションは危険だ。平地とは比較にならないほどの強風が吹くからである。
つまり風向きを読まないとオノレに飛び返ってくるのである。
その友人はそんな失態はしなかったが、以前ネパールで出会って
しばらく旅を共にした ドイツ人アンドレの事を想い出した。
その時の俺はヒマラヤの高所でアンモナイトを見つけるという目的で
村から村へと移動する放浪のような旅をしていた。

通常、男というものは立ちションをする時は物陰などでコッソリいたすのだが
誰もいないヒマラヤ奥地ではそんな臆病になる必要もなく、
どちらを向いてその行為をしようがへっちゃらなのである。
だったらコソコソせずに堂々とやればいいのである。
俺はいつも雄大なヒマラヤ山脈に向かって実行していた。
それは実に気分の良いものである。
何だか社会のルールを破ってるような罪の意識と解放感が同時に働くのだ。

ある日アンドレと一緒にひなたぼっこをしていると彼が尿意をもよおした。
岩陰へ向かおうとする彼を見て「へっ、おドイツ人もお行儀がいいな」と思い彼に俺の考えを話した。
「ヒマラヤに向かって立ちションとは気分が良さそうだ。」と彼は崖っぷちに立った。
風の強い日である。横ではアンドレの同行者ロフティが
昨夜洗濯したパンツを岩の上に干していたのだが、
強風に飛ばされ「オレのパンツ!」と小走りに追いかけている。
何とものどかな光景である。

さてアンドレは立ちションをした数秒後「オゥ・・・」と小さな叫び声をあげた。
風のせいで「天に向かってツバを吐く」状態になったのである。
ドイツ人というと頭が良いイメージがあったのだが、ネパールで出会ったドイツ人は
「ズボンびしょ濡れ野郎」と「パンツ追っかけ野郎」であった。
蛇足として付け加えておくと「パンツ追っかけ野郎」は身長が190cmほどもあり、
安宿の入り口で何度もおでこをぶつけ遂には血が滲んでいたほどのスッとぼけ野郎である。
そんなドイツ人コンビの旅の最終目的というのがまた笑えた。
標高4000m以上あるヒンドゥー教聖地のお寺で清めの滝に打たれるというのだ。
俺もヒマだったので結局その聖地まで行ったのだが、そこで彼らと別れて先に下山の途についた。
なぜなら彼らはパンツ1枚で冬の極寒の滝に打たれ、風邪をひいて鼻水が滝のように流れ
ダウンしてしまったからだ。バカもほどほどにして戴きたいものである。

読者の皆さんも一度公園や交差点のド真ん中で立ちションなどしてみてはいかがだろう?
いや、立ちションだけでなくオープンエアーダップンにもアタックして戴きたい。
日頃セコセコ生活してる人にとっては見事な解放感が得られるはずだ。
しかしアタックする時はぜひ公衆チンレツ罪に注意して欲しい。
けなげな解放感の獲得は一歩間違えば変態野郎というレッテルを貼られるからな。
(ちなみにワタクシは交差点でホーニョー、ダップンをした事はございません)

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