放浪の達人ブログ

ホームステイ

    【ホームステイ】

先日ドイツ人のレオニーちゃんが1週間だけ岡崎商業高校に留学生としてやって来た。
彼女は俺の息子と同じ2年生のクラスに編入され、我が家にホームステイしていたのである。
女優のような美しい顔立ちとは裏腹に、毎晩我が家のプレステ2でゲームをした際には
「Kill you!」とか「Go away!」とか大声で雄叫びをあげ、それに呼応して犬のルークが吠えると
「うるさいよ!」と叫び返し、負けず嫌いの彼女はゲームに負けると「もう1回だ!」と
延々とアツい夜は更けていったということは彼女のイメージ保護のためにココでは伏せておく。

読者の人も海外でホームステイしたいという夢みたいなことに憧れてると思う。
俺は過去に貧乏放浪旅行を幾度かしたことがありホームステイは何度も体験したことがある。
初めてホームステイを経験したのは約20年前、インドネシアのバリ島である。
町で知り合った現地の青年に誘われて彼の村まで行ったのだが、そこは未知の世界だった。
日本で発行されているどんな詳しい地図にも「アンティガ村カトゥ部落」は表記されていない。
そこはバリ原住民の山奥の村であり、黒魔術の村だったのである。
もしかしたら日本人、いや、外国人ですらその村にホームステイした奴はいないと思われる。

村に到着した時にいきなり草むらで野ぐそをしている若い乙女の姿を目撃し、
紙は?葉か?水か?手か?そのままか?掘ったのか?という憶測が飛び交ったのは言うまでもない。
ああ、ここはそれぐらい原始的なレベルの村なんだ、と悟ったのである。
ホームステイすることになった家に着くとそこのお母さんが頭より高くお皿を持って登場し、
さてはどんなモノが乗っているのかと思ったらビスケットがたった1枚、それを差し出された。
きっとビスケットというものがそれほど上等の接待菓子だったのだろう。
夜は呪術的なメロディーが村の集会所の拡声器から流れ、中庭の木の上では鶏が飛び、
寝室の隣りの部屋には牛が棲んでおり、かなり衝撃的な一夜だった。
コッポラの「地獄の黙示録」の映像、BGMはドアーズの「ジ・エンド」ってな感じである。

あれを体験してからはもはやどんなホームステイもへっちゃらになった。
路頭に迷うような刺激を更に求めてインドのスラム街での野宿をしたこともあるが、
あの時のバリの原住民の村のような土着的な興奮を越えることは出来ないほどである。
おぼろげに憶えているカトゥ村への道、車も通れない暗い山道をバイクの後ろに乗って行った道、
あの時に撮った村人の写真を携えていつか再びあの村に行きたいと思っている。
その反面、当時よりも確実に文明の波に侵されたであろうあの村を見るのが怖い。

で、夢が叶ってその村を再訪したら電気も通っててコンビニなんかも出来ちゃったりしてて
ホームステイ先の青年は結婚して子供もいて、その子供がプレステなんかで遊びながら
「Kill you!」「You dead!」なんて叫んでたらかなわんわな。(笑)


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