放浪の達人ブログ

ヒッチハイク

   【ヒッチハイク】

春から秋は晴れたら自転車、冬や雨の日は家族の送迎で通勤しているのだが、
時々店から自宅まで夜の裏道を探検しながら40分かけて歩いて帰ることがある。
俺は黒っぽい服ばかり着ているしスタスタではなくタラタラ歩くので
傍から見たら放火魔だとかワイセツ魔だとかの不審な中年男と思われてるのかも知れない。

そういえば20代後半の頃、まだ別の市に住んでいた時のことだ。
会社員を辞めて妻子を連れてアジアの島の田舎で2ヶ月ホームステイをした後に帰国し、
とりあえず毎晩深夜2時過ぎまで瓦屋でバイト生活を送っていたのだが
家に帰る途中の田んぼに囲まれた道で車のエンジンが故障して停まってしまった。
仕方なく車を道路脇に置いて寒い冬空の下、30分近くかかるアパートまで歩き出した。

その時である。交通量の少ないその田舎道を車が走って来るではないか。
これは天の助け、その車に家の近くまで乗せて行ってもらおうと思い
道の真ん中に出て大きく両手を広げて「止まれ」の合図をした。
この時はまだアジアの田舎生活から抜け切れておらず、手を上げれば止まってくれるという
アジアのヒッチハイク方式が俺の頭を支配していた。
しかし無情にもその車は俺を避けるようにしたどころか急加速をして走り去るではないか。
クソー、さすがニッポン、困った人がいても知らぬふりの冷たい国だぜ、と思い再び歩き出した。

すると幸運にも背後からまた車がやって来た。よーし、今度こそ!とまた手を振る。
だがその車も逃げるように走り去ってしまったのだった。
やはり深夜にこんな田舎道で車を止めようとしていること自体が不審なんだろうな、
そんなことを思いながらふと客観的に自分の姿を見つめてみて俺は愕然とした。
折りしもその日は同じ職場で仲良くなった不法就労の中国人から
友情の証しとしてもらった濃緑色の中華人民服を着ていたどころか
バイト先のボスんちのおばあさんから太いダイコンを2本おすそ分けしてもらったため、
両手には各1本ずつそのダイコンを持っていたのである。

深夜の田舎道で中華人民服を着た男がダイコンを振り回しながら車を止めようとしている、
こりゃいくら何でも誰も止まってくれないどころか逃げるのは当たり前だったのだ。(笑)
今のように携帯電話が普及していれば(俺は今でも持ってねえけど)家族に電話して呼び出せたり、
急加速して逃げた2台の車が「不審者がいる」と110番通報してパトカーが俺を保護し、
事情聴取された後にパトカーに乗ってご主人様凱旋帰宅だったのになあ。
(教訓:ヒッチハイクの際は持ち物、服装に注意しましょう)


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