放浪の達人ブログ

月明かり

  【月明かり】

9月中旬に夫婦で富士山に登ってきた。月明かりの中を歩く夜間登山である。
俺の服装は上着から靴まで黒色、リュックも黒色なので闇夜に溶け込んでいる。
月明かりと下界からの夜景によってほのかに明るいためにライトも点けずに登ったのだが、
これはハタから見たら結構不気味なんじゃなかろうか。
本当は他の登山者が登って来るのを岩陰でじっと待ち受け、通り過ぎる瞬間に
「こんばんは~」と細い声で挨拶でもしようかなという衝動に駆られたのだが、
相手がビビって予期せぬ行動をして滑落や捻挫をするといけないから止めておいた。

それにしても人を驚かせて相手の顔が恐怖にひきつるのを見るのは楽しいものである。(笑)
「本当にあった怖い話」みたいなテレビ番組で再現フィルムなんかやってる時、
幽霊がバーン!って登場の瞬間にヨメや子供の肩をワッ!とつかむのはメチャ楽しい。
幸せな家庭の居間にギャア~ッ!という叫び声が響き渡るのである。

さて、話を富士山に戻すが、俺達夫婦が標高3200mあたりを登っていたら
上の方からライトの灯りが登山道に沿って下りて来るのが見えた。
この時間は登る人ばかりだが中には体調不良で下山する人もいるのだろうと思った。
ちょうどすれ違うのが困難な幅しかなかったので俺達はそこで待機をした。
距離にして30m弱、時間にすれば3分程度で下りて来る岩場である。
待機せずに俺達も登って行けば1分か2分ですれ違う距離間隔だ。
下りて来るライトの光は岩場にチラチラ隠れながら見えていたのだが、
3分経っても一向に来ないどころか遂にライトの光は見えなくなってしまったのである。
俺達夫婦はおかしいな、と顔を見合せながらやむなく登りを再開したのだが、
それから5分経っても10分経っても「下りて来るライトの主」とすれ違うことはなかった。
もしかしたらそのライトの主は俺達を驚かそうとしてライトを消して黒装束で岩陰に身を潜め、
俺達が登って来るのを待っている間に眠ってしまったという可能性も考えたが、
そういったスペースはなかったほどの8合目直下の岩場での出来事であった。

翌朝、山頂を踏んだ後に下山していたら捜索ヘリが飛んでいたし駐車場にはパトカーもいた。
帰宅後ネットで調べたら、数日前から60代の男性がその登山道で行方不明になっているらしい。
駐車場にはバイクだけが残ったままだというが、も、もしや、あのライトの主って・・・。(怖)

【富士山捜索ヘリ出動】

富士朝焼け1



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