放浪の達人ブログ

嵐の金環食

   【嵐の金環食】

1ヶ月前の金環食は岡崎ではよく見えなかったようで残念だった。
実は俺は天体望遠鏡なんぞも持っているロマンチストな天体マニアである。
というわけで金環食のある数日前から万一岡崎で天気が悪かった場合を想定して、
雲の上まで行って観測しようと考えていた。そう、富士登山だ。

T○Y○TA(企業名は伏せ字とする)勤務の息子にむりやり振り休を取らせ、
親子2人で前夜から富士5合目の駐車場に乗り込んだのである。
ところが現地は強風と厚い雲に覆われており待機中の車はゴーゴー揺れるのだ。
駐車場にはほぼ満車の車が停まっていたが俺達を含め皆さん車内で待機である。
朝の4時になっても天気は良くならないがここで待機していても天候回復は望めない。
諦めて帰るか、雲の上に行くために歩き出すかの選択に迫られ意を決して登山開始。

俺達は中腹の宝永火口の中を登って宝永山(標高2700m)に向かった。
そこまで登れば雲の上に出られるだろうという賭けに出たのである。
僅かな可能性があればそれに賭ける、何とも男らしいではないか。
もちろん自分の力量をわきまえて途中での撤退も考慮しての行動である。

宝永山火口は風の通り道だけあって風洞実験室のような猛烈な強風が吹き荒れていた。
顔にバチバチ当たるアラレの中を雪に靴を蹴り込み足場を作って歩く。
そんな悪天候の中、宝永山山頂に到着。もちろん誰もいない雪と氷と砂の世界だ。
気温は当然氷点下で風の音も半端なく強いので叫ばないと会話すらままならない
結局金環食となる7時半になっても太陽の輪郭さえ現れることはなく、
俺達はまた火口に降り積雪の中を下山したのであった。

ここまで遠征したのに世紀の天体ショーを見逃したという悔しさはあまりなかった。
俺達は諦めずに雲の上を目指した。そのチャレンジ行為こそが大切なのだ。
天候のため結果として見れなかったのは仕方がない。それが自然を相手にするということだ。
人間は自然には逆らえないのだ。今回は俺の日じゃなかったというだけのことだ。
夜明けの火口の中を歩いたという貴重な体験をしただけでも満足せねばなるまい。

さて、5合目の駐車場に戻って車で富士スカイラインの麓まで下りる頃には天気は回復した。
太陽はギンギン輝いている。麓で富士山を振り仰いだ俺達は愕然とした。
富士山にだけ雲がかかっていたのだ。俺達はわざわざ雲の中に行っていたのである。
上を目指した者だけが皮肉にもジョーカーを引いたのだった。うっわ~、やっぱり悔しいっ!


20120521-7‐下山


(日記に戻る)


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: