放浪の達人ブログ

旅アプリの功罪

   【旅アプリの功罪】

数ヶ月前にタイとミャンマーの国境付近をうろうろしてきた。
予約しておいたコテージは村の郊外にあり見つけるのに苦労した。
ブッキング・ドットコムで予約したサイトをプリントアウトして
持って行ったはいいもののアクセス方法は印刷しなかったのだ。
スマホを使い慣れてる人達からすれば「は?プリントアウト?」と思うだろう。
その予約サイトをスマホに取り込んでおけば済むことだからだ。
しかし俺はスマホはおろかガラケーも持ってない。
毎晩自宅でネット販売のために何時間もパソコンやipadを酷使していて、
更に日中もスマホ持ってたらネット中毒になってしまう。
せめて自由な旅に出た時はそういうモノから一切遮断されたい。
先日は夫婦で旅に出たので宿泊予約サイトを利用したが
俺一人で旅に出る際はぶっちゃけ本番で現地で宿を探している。

さて、結局そのコテージを探すのに現地の人に道を尋ねたのだが
突然道を訪ねてきた日本人に対してスマホを取り出し
地図検索で場所を教えてくれてコテージに辿り着いた。

別のコテージに泊まった時はそこのスタッフはタイ語しか話せなかったが、
やはりスマホの翻訳機能を使って俺達と会話をしていた。
スマホに向かってタイ語で話すと音声機能で日本語に変換される。
意思疎通はそういうアプリによって言語疎通の障害も取り除いた。
もはやスマホさえ持っていれば英語すら出来なくても海外で困ることはない。

海外の宿の予約だってパソコンやスマホから簡単に出来る。
しかし宿泊予約サイトに登録していない宿、或いは出来ない宿は、
海外からの宿泊客からは「存在しない宿」として扱われてしまう。
宿泊サイトに登録してある宿は連日大盛況だが、してない宿は閑古鳥だ。
そしてもう一つの功罪は「宿泊値段の高騰」である。
たとえばバリ島のウブドゥ村、ここには安いコテージが多数存在するが
山奥の村であるがゆえWifiを繋げる設備投資をせねばならない。
その投資をした宿は後々、海外からの旅行者を呼び寄せることが出来る。

先日ウブドゥ村の宿泊予約サイトを見て愕然とした。
宿泊値段が数年前の10倍に跳ね上がっているのである。
それだけ高く値段設定を変えても集客できるのだろう。
それに合わせるように周辺の安宿もみな宿泊値段が高騰していた。

俺は昔からいわゆるバックパッカーで、安宿ばかり泊まってきた。
そしてがんばって覚えた片言の現地語でコミュニケーションをしていた。
そうしてお互いが知らない言葉で意思疎通をしようと四苦八苦し、
やっと会話が成立した時の嬉しさこそ旅の醍醐味の一つだった。
それが今ではスマホひとつで全ての障害が取り払われる。
タイの田舎で「スマホ持ってないの?信じられない!」とさえ言われた。

同時に異国の街角で地図を広げている外国人旅行者の姿すら目にすることはない。
スマホに向かって目的地の名前を呟くだけで地図案内が表示されるからだ。
だから旅の途中に旅人同士の疎通、現地の人との触れ合い頻度は減少し、
自分の持ってるスマホとの会話で完結してしまう旅が増えたのではないだろうか。
そして今どこで何をしてるかをリアルタイムでインスタにアップ。
俺は古いタイプの旅人でありたいので余計スマホを持って旅に出たくない。

旅は楽になった。しかし俺の求める旅は難しくなった。
でも旅先で仲良くなった向こうの子とはLINEでやり取りしてるけど。
とにかくスマホは便利だ。しかしそれによる弊害が出ない範囲の使い方で
皆さん旅を楽しんでいただけたらな、と思っている。


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