放浪の達人ブログ

日本の渓谷



日本三大渓谷といわれる三重県の大杉谷渓谷に行ってきた。
登山口から歩き始めるとすぐに崖っ淵を歩く危険な道となった。
左側の眼下にはエメラルドグリーンの色をした渓谷が流れていて
まさに秘境と呼ぶに相応しい場所だった。

今回の目的地は日本名瀑百選にもある七つ釜滝を見ることだ。
いくつもの吊り橋を渡って6時間ほど歩くと桃の木小屋に到着する。
渓谷の横に建てられた山小屋は夜になると漆黒の世界に包まれる。
こんな秘境の中で眠ることが出来るなんて最高、と思いつつ寝ていると
同行者3人がゴソゴソと起きはじめた。もう朝なのかな?
「今何時?」と尋ねると「もうすぐ12時。トイレ行きたくなっちゃってさ」
どうも中年オヤジになると夜中にトイレに行きたくなるようである。
俺は別に尿意は無かったのでそのまま寝続けて朝まで爆睡したが、
同行者達はトイレに行った後は目が覚めてしまって小屋の外を散歩したそうだ。
もはや散歩どころか徘徊と呼んだ方が正解ですな。

翌日は山小屋にリュックを置いてお目当ての七つ釜滝まで行った。
七つ釜滝は「見るまでの行程が日本で最も難度が高い滝」と言われており
滝マニアのうちでは憧れの滝のようである。
翡翠色の滝壺や滝の曲線美はここが日本であることを忘れさせるようで、
「空白の5マイル」と呼ばれたチベット奥地にある幻の滝を彷彿とさせた。
(空白の5マイルっていう本を読んだだけで実際には行ってないケド)
いや、これこそが本当の日本の美なのだ、俺がそれに気付いてなかっただけだ。
行く前は三重県の滝というだけで侮っていたが、三重にこんな秘境があったとは。

さて、この大杉谷渓谷にはもっとドド~ン!というデカい滝がある。
近くから見上げると圧巻の水量だが滝の名前が何ともガッカリなのである。
その名も「ニコニコ滝」という。おいおい、ふざけとるのか?
これほどの滝ならばもっと高尚な名前っていうか気高い名前っていうか、
「うむ、まさに白い龍にも見えるな」って感じの「白龍の滝」って名前とか
「観音の滝」だとか「那由多の滝」だとかのかっこいい名前にすればいいのに
何の迫力もない「ニコニコ滝」だなんて一体どうしちゃったのよ?
日本の名瀑には「華厳の滝」とか「白糸の滝」とか「称名の滝」とかあるが
「ニコニコ滝」って名前なんて本当に迫力もへったくれもないし
観光ポスターやカレンダーに写真載せても「三重・ニコニコ滝」なんて
格が下がるっていうかププッと笑っちゃうような名前だし、
いやあ、アレは本当に改名していただきたいものである。
それにしてもあの水量は凄かった。一体どこからあんな水が集まって来るのだろう?
轟々と流れ落ちる莫大な量の水を見ながら考えた。
あの滝口の上には巨大な湖でもあるに違いない。
帰宅後にグーグルアースで俯瞰してもそれらしき水源は無いのである。
要するに空から降った雨が山に保水されて何本も合流したり枝分かれして
標高の低い場所を求めて流れ、あの滝口を目指して移動し続けて滝を成しているのだ。
そう思うと一滴の水にも意志があるようにも感じられる。
な~んて哲学的な思考になってしまうほどに素晴らしい渓谷歩きだった。

最近は海外に行っても観光地には行かずに秘境の鍾乳洞とか滝ばかり行っている。
でも今回の渓谷歩きは「やっぱ日本の自然は最高だな」と改めて思わせてくれたのだった。

© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: