放浪の達人ブログ

リアルタイム



「深夜ラジオを聞きながら高校の受験勉強やってる時にですね、
レッド・ツェッペリンの曲が流れてきて凄い衝撃を受けまして、
それ以来ロックに目覚めてしまいました」という年上の人の話を聞いた。
また別の年配の人はビートルズの日本武道館ライブを見に行ったという。
彼らはリアルタイムでバンドの活動を体験してきたわけである。

俺がリアルタイムでロックバンドの演奏を体験したのは
有名どころではローリング・ストーンズぐらいか。
初来日の初日に東京ドームまでわざわざ見に行ったのをはじめ
彼らのライブは3度だけ体験したことがあるが、
1960年代のストーンズやビートルズはリアルタイムではないので
その当時にそれらの音楽を聞いていた年代の人達を羨ましく思う。
ストーンズが1969年11月にニューヨークのマジソン・スクエアガーデンで
白熱の演奏をしたライブがアルバムとして発表されているが、
「ミッドナイト・ランブラー」の間奏のブレイク時に日本人の観客が
「かっちょえー!」と叫ぶ声が収録されているのを聞くと
「リアルタイムで見に行ってていいなあ」と毎回思うのである。
こういった60年代70年代の音楽が未だに愛されているというのは反面、
それ以降の音楽がいかに退屈なものかということだろうか?
最近のどの音楽を聞いても心に電流など流れず、
どれもこれも同じ商業ソングに聞こえるのは重ねた年齢のせいだろうか?
情報が氾濫し過ぎ、ロックやポップスの賞味期限が短期化され
使い捨てのように聞いているのは確かだろうけども、
それにしても音楽界で君臨し続けているバンドは今では数少なく、
いつの間にかアルバム数枚を出して消えていくアーティストが多い気がする。
(ONE OK ROCKは日本のバンドというより世界的バンドになってるが)

輸入雑貨屋をやる前から俺はアジアをブラつき歩いていた。
しかしその場所も「あと10年早く来ていたかった」と思ったことが幾度もある。
バリ島の呪術的舞踏が観光用として見世物になる前の本来の宗教的儀式の時、
アジアの大きな街がビル群だらけになる前の静かな町であった時など
いわゆる「本来の」といわれる懐古的な体験を出来る時に行っておきたかった。
しかしこれは人生が終盤に差し掛かったおっさんの考えによるノスタルジーだ。
いつの世代になっても年配者は「昔は良かった」と言うのだろう。
里山を歩いていて麓を眺める時、俺はそれと似たような思いをする。
昔はあそこの町もなく道路もなく鉄塔も立っていなかったのだろうな、と。
これは現代の世の中の流れについていけなくなった世代の共通思考だろうか。
若い世代は「あそこにデカいショッピングモールができたね」と喜ぶが、
年寄り達は「あんなデカいビルが建って道が混雑するわい」などと
否定的な考えが多くを占めて変化を受け容れられない。

おそらく江戸時代の時でも「最近の若い衆はけしからん」とか
「日本橋が木造の時の方が風情があったわい、べらんめえ」とか
「鎖国が解除されてから風紀が乱れたわ」とか言われていたのだろう。
しかし昔は良かったと言っても戦国時代に生まれんで良かったなあ。
しくじったら切腹だなんて怖くてたまらんわい。

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