「お通夜」
暫く棺の中のパパから離れられなかった。
事故で出血がひどく、お布団に寝かせてあげる事もできない。
事故の割に顔にはほとんど傷が無く、まるで寝ているようだった…。
でも窓にはドライアイスの冷気が逃げないように
アクリル板が入っていたので、顔を見る事はできても触れなかった。
「明日も大変だから…」と寝るように言われる。
パパの傍から離れたくはなかったけど、子供と一緒にベッドに入る。
子供の寝息が聞こえるなか、一人泣いた。
そして泣き疲れて、寝てしまった。
朝、目が覚める。
夢であって欲しかった。きっと悪い夢を見ていたんだと
いつもパパが寝ている場所を覗き込んでもそこにいない。
認めたくない現実がそこにあった。
何か食べるように言われても、全く食欲がなかった。
泣いて泣きやんで、また泣くの繰り返し…。
「そんなに泣いても帰ってけーへん！」
と父に言われた時、生まれて初めて言い返した。
「そんなんわかってるけど、仕方ないやん！！」
わかってる、泣いても帰って来てくれへん事なんてわかってるけど…
こんなに悲しいのに泣く事も許されないのか…？
お通夜とか告別式は何となく嫌だった。
パパが死んでしまった事を認めるようで、ツラかった。
それでも刻々と時間は過ぎていく。
予定の時間に公益社の人が来た。
こちらの心情などお構いなしに全て事務的に進んでいく。
出棺の時、思い切り声を上げて泣いた。
今、そんなに泣いてたら後でどうするの？と言われたが…。
でも、ここを出たらパパは二度と帰って来ない。そんな気がした。
パパの隣に座って斎場まで行く。
斎場では祭壇の準備もすっかり整い、真ん中に棺が置かれた。
子供が大きくなってからは、すっかりカメラマンになっていたので
最近のパパの写真がなかった。遺影の写真は結婚式の物だった。
斎場は３つほど部屋があったが、やはりパパが一番若かった。
正直、葬儀の事は義母と義弟に任せきりでほとんど何もしていない。
ちょっとした確認や挨拶くらいしかできなかった。
お通夜の間、読経で戒名が読まれる度に
「そんなんパパの名前じゃないのに…」と思い泣いた
そして本当にたくさんの人が来てくれた。
パパと私は職場結婚なので、勤めていた会社の人が来ると
悲しくて涙が溢れた。親戚、近所の人、幼稚園のお友達。
公益社の人もパパが若い事もあり、こんなにたくさんの人が
来てくれるとは思ってなかったらしく驚いていた。
これもみんなパパの人柄だと思う。
私の時は誰が来てくれるんだろうか…？
私と子供達、義母、義父、義弟、私の両親、
それとパパの小学校時代からの悪友一家が斎場に泊まった。
お通夜が終わってからも、仕事を終えてから来てくれる人が
大勢いたので深夜までバタバタとしていた。
パパの運送会社の同僚が来てくれたのは、仕事柄もう明け方だった。
「僕、ホンマに幸せですわ」
こんな事を会社で言ってたらしい…。
パパは私と結婚してホンマに幸せやったんかな…？
私は間違いなく幸せやったけど…。
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