「告別式」
長い長い夜が明けた。
結局、一睡もすることなく朝を迎える。
その日、親しい友人や親族は斎場で一夜を明かした。
お線香の火を絶やさないように…。
何を話すでもなく、たわいもない話ばかりしては笑っていた。
みんな、心の中ではきっと泣いていたと思う。
こんな時でも、やらなけれがいけない事があった。
頂いた弔電を読む順番を決めたり、親族の座る席順を考えたり
みなさんに食べてもらう昼食の確認をしたり…。
正直、そんな事はどうでもよかったのだけれど…。
朝、不思議と亡くなってからもヒゲが伸びていたので、
担当に人に剃ってもらった。
本当は私がやりたかったけど、させてもらえなかった…。
無情にも時間はどんどん過ぎていく。
告別式の準備が整い、参列の方が少しづつ姿を見せ始める。
後の事を考え、お香典は一切頂かないことにしていた。
本当は挨拶とかしなければ行けないのだろうけど
私はパパの遺影を見つめてボーっとしていました。
生き返ってくれないだろうかと、叶わぬ事を想いながら…。
喪服に着替え、お寺さんに挨拶とお布施を渡しに行く。
こんな時でも、やっぱりお金なんだな…。
戒名、お車代、食事代、お布施諸々で５０万円。
そんなもんなのかな…。
そんな事をしているうちに告別式が始まる時間が来る。
お通夜に比べると少なかったけれど、それでも思っていたより
たくさんの方が来て下さって嬉しかった。
パパはこんなたくさんの人に愛されていたんだと思うと
少し心が軽くなるような気がした。
最近は告別式と合わせて、初七日も済ませてしまうらしい。
合理的なのか、まあどっちでも良いや。
終わりに近付くと、最後の別れ。
棺を開けて、みんなにお花を入れて貰う。
綺麗なお花に囲まれたパパ。鼻アレルギーで花粉にも
弱かったのに、こんなたくさんのお花に囲まれても
もうクシャミも出ないんだね…。
冷気が逃げないように、ずっと入っていたアクリル板も外され
やっとパパの顔を触る事ができた。
氷よりも冷たくなってしまったパパ…。
本当は抱きつきたかったけど、やっぱりできなかった。
どうして、こんな姿にならなければいけなかったのか？
ほんの数日前には、あんなに元気だったのに…。
枯れかけてた涙がまた溢れ出てきた。
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