ミステリの部屋

ミステリの部屋

2006年04月12日
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カテゴリ: 日本ミステリ
ここ何日か、私はサイモンのことを考えていました。

彼はどんな人だったのだろう。
生前何を考え、どんな暮らしをしていたのだろうか。
そして、どうして殺されなければならなかったのか。



なぜなら彼は3000年前に生きていた縄文人だからです。

彼は背中に石斧を突きたてられ、右腕を切断された状態で、あきらかに内側から石を積み上げて塞いだと思われる洞窟で発見されました。
今となっては彼を殺した犯人がわかるはずもありません


これが昨日の日記の答です。

昨日は思わせぶりなことを書いてしまいました。
これまで聞いた事も無い設定に出会えたことが、とてもうれしい驚きだったので、つい……。
答が気になってしまった方には申し訳なかったです。


けれども、これまで目にした書評等から、この方の作品はきっと私の好みだろうと思っていました。
結果として、その思いを裏切らない面白さでした。

考古学というものは、平安時代や江戸時代と違って、歴史的文献が残っているわけではないので、発掘されたわずかな証拠から、様々な学問を駆使して分析し、類推していくしかありません。
だからこそ、ミステリに通じるものがあります。

ミステリ的な取り上げ方で引っ張ていかれるので、考古学の知識や論争にも決して退屈することなく読み進めることができます。

また、心に傷を持つ主人公真理子が頑張る姿や、ネット上のコミュニティの描かれ方も興味深いところです。

あとがきを有栖川有栖さんが、美しい文章で書かれています。
この作品は97年の鮎川哲也賞を惜しいところで逃しています。(受賞作は谺健二 さんの「未明の悪夢」です。)
当時選考委員であった有栖川さんはこの作品を推されていたようですが、日頃から有栖川さんがロマンチストだと思っている私にはそれもうなずけます。

現代の人間がサイモンを通じて過去を読み解く様子は、現代でも事件は起きるのですが、それがかすむほどに惹きつけられます。

有栖川さんの書かれた

まさにその通りで、そこにはまぎれもなくロマンがあるからです。


3000年の密室 3000年の密室 :柄刀一


3000年の密室(文庫版) :柄刀一






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最終更新日  2006年04月12日 23時28分49秒
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