ミステリの部屋

ミステリの部屋

2006年06月08日
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「氷菓」( 感想 )に次ぐ、省エネがモットーの奉太郎ら古典部が活躍する、シリーズ第二弾。

タイトルを見たときからワクワクしたのは
「これはきっとあの有名女性作家の作品に関係あるに違いない。」と思い込んだから。
それが正しかったかどうかは、あとがきにハッキリと記されていました。
「○○○○○は実は□□□です。」
結果はどうあれ、私のワクワク感が消えることはありませんでした。


自分の高校生の頃を思うと、自意識過剰だし、見かけばかり気にして、とても不器用な生き方しかできなかったような気がします。
もしも今の精神状態で高校時代に戻ったらうまくやれるのに、と思うこともありますが、この作品に登場する高校生達は、ちょっとそんな感じ、何だか老成したところがあります。

学園ものはもとから好きな私ですが、そういうところも気に入りました。


ところがこれから解決編というところで脚本家が倒れたため、撮影を中断したままで締め切りが迫っていました。
そこでまとめ役の入須から依頼され、奉太郎たち古典部員は、結末についての関係者の推論を聞くことになります。
ところが、少ない手がかりから打ち立てられた彼らの推論は、一つ一つ否定されていきます。


この作品はアントニィ・バークリーの「毒入りチョコレート事件」のオマージュとして書かれていますが、その推論たるや、余りに単純だったり、物足りなかったり、かなり突飛なものだったりします。名言も飛び出したし……。
まあ、普通の高校生ですから無理も無いところ。

そして、ミステリ好きな人にはたまらない言葉がたくさん出てきます。

密室、倒叙、ノックスの十戒、それに、館(?)の見取り図はあるし、設計者の名前が……だし。

(ノックスの十戒とは、ロナルド・A・ノックスが著した、推理小説を書くにあたっての十の戒めで、たとえば、犯人は物語の始めのほうで登場している人物でなければならない、とか、探偵自身が犯人であってはならない、とか、読者の知らない手がかりによって解決してはいけない、など、つまり推理小説はフェアプレイでないといけないという内容です。既に古臭くなって、時代を感じさせる物もあります。)

この作品は、チャットルームから幕を開けます。
そして最後もチャットルームで終わります。

初めは誰が会話しているのかわからないのですが、ハンドルネームや会話の内容から、最後には誰だか類推することができます。
「あ・た・し♪」さん、やっぱりいいですね。

登場人物では、男言葉で話し、女帝とあだ名される入須さんが魅力的ですし、


でも、今回は、古典部のメンバーがしっかりと自分の得意な観点から、自分なりの考えを示すところが一番よかったかな、と思います。
この次が楽しみになりますし……。

ほろ苦さも含んでいるものの、読後感もとても爽やかな作品で、
ますます米澤穂信さんから、目が離せなくなりそうです。



愚者のエンドロール 愚者のエンドロール :米澤穂信








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最終更新日  2006年06月09日 14時11分16秒
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Re:愚者のエンドロール:米澤穂信(06/08)  
みっつ君  さん
こんにちは~!
今作は気持ち良い位に本格ミステリの道具立てを使っていますよね♪
やはり私も設計者の名前には反応してしまいましたw

>登場人物では、男言葉で話し、女帝とあだ名される入須さんが魅力的ですし、
脚本家さんの気持ちもよくわかりました。(私はミステリ好きなんですけどね……)

入須さん、きっちり3作目にも登場していますよw
文化祭が舞台ですし、これまでの集大成的な作品になっているので楽しめると思いますよ。

TBさせて頂きますね! (2006年06月09日 16時21分47秒)

Re[1]:愚者のエンドロール:米澤穂信(06/08)  
samiado  さん
みっつ君さん、こんばんは!

TB有難うございます♪

>今作は気持ち良い位に本格ミステリの道具立てを使っていますよね♪
>やはり私も設計者の名前には反応してしまいましたw

ミステリがあふれていて楽しかったですね。
私も一瞬「館もの?」と思ってしまいましたw

>入須さん、きっちり3作目にも登場していますよw
>文化祭が舞台ですし、これまでの集大成的な作品になっているので楽しめると思いますよ。

女の子が強くて魅力的なところも好感が持てます。
3作目がとっても楽しみです♪
これで終わるのかと思うと寂しいですけど……。
(2006年06月09日 23時31分40秒)

Re:愚者のエンドロール:米澤穂信(06/08)  
あむあむ108  さん
こんばんは!
TBありがとうございました。
本当に楽しい作品でした。劇中劇を推理する、なんて書いてしまうとありきたりのようですが、ところがその外枠のところにも仕掛けがあって・・・
もちろん本筋のミステリ(何と言っても殺人です)の推理についても、一粒で何度も美味しいものでした(笑)
donmaboさんの日記の「その2」もさらに楽しいです。ご覧になりましたか?

前作の感想を書いたときに、私が奉太郎のお姉さんのような高校生ではなかったかと言っていただき・・・
あれ以来思い出しては照れまくりですw
やりたいことをやりたいようにやりぬく、というのは私の理想形なのですが、どうも途中でずっこけてばかりでしたもので!

TBさせていただきますね♪
(2006年12月02日 22時41分43秒)

Re[1]:愚者のエンドロール:米澤穂信(06/08)  
samiado  さん
あむあむ108さん、こんにちは!
TB有難うございます♪

>本当に楽しい作品でした。劇中劇を推理する、なんて書いてしまうとありきたりのようですが、ところがその外枠のところにも仕掛けがあって・・・
>もちろん本筋のミステリ(何と言っても殺人です)の推理についても、一粒で何度も美味しいものでした(笑)

そうですね。色んな楽しみが一杯詰まっていましたが、特に本格ミステリ好きには嬉しい趣向でした。

>donmaboさんの日記の「その2」もさらに楽しいです。ご覧になりましたか?

はい。私は妄想を働かせるのは得意ですが、きちんと細部を検証するのは多分無理なので、ただただ感心して読ませていただきました。

>前作の感想を書いたときに、私が奉太郎のお姉さんのような高校生ではなかったかと言っていただき・・・
>あれ以来思い出しては照れまくりですw
>やりたいことをやりたいようにやりぬく、というのは私の理想形なのですが、どうも途中でずっこけてばかりでしたもので!

私にとって奉太郎の姉のイメージとしては、まさにあむあむ108さんなんですね~。
太陽のように前向きでパワフルなので、思わずついて行きたくなっちゃいます。向日葵かい!(笑)
(2006年12月03日 15時44分24秒)

Re:愚者のエンドロール:米澤穂信(06/08)  
anna2号  さん
こんばんは♪
ようやく読んだので、TBさせていただきますねー。

>でも、今回は、古典部のメンバーがしっかりと自分の得意な観点から、自分なりの考えを示すところが一番よかったかな、と思います

わたしもあの部分がとてもいいな、と思いました。
古典部メンバーそれぞれの個性がよく出ていて、今後の展開が
とても楽しみになりました。
各自がこっそり告げる、というのも他者への繊細さを感じますね。
米澤作品全体に漂っている空気感、という気もします。
徐々に、でも確実に、米澤さんにはまってきました☆ (2006年12月03日 23時52分02秒)

Re[1]:愚者のエンドロール:米澤穂信(06/08)  
samiado  さん
anna2号さん、こんばんは!
TB有難うございます♪

>古典部メンバーそれぞれの個性がよく出ていて、今後の展開が
>とても楽しみになりました。
>各自がこっそり告げる、というのも他者への繊細さを感じますね。

今回はメンバーもなかなかいいところを見せますね。こっそり告げるのが憎いところです。まさに青春してます。

>米澤作品全体に漂っている空気感、という気もします。
>徐々に、でも確実に、米澤さんにはまってきました☆

私はすっかりはまっているようです。最近になって、やっと第5章「味でしょう」の意味がわかり、はしゃいでいるところです(笑)


(2006年12月04日 09時59分27秒)

Re:愚者のエンドロール:米澤穂信(06/08)  
翠香 さん
こんばんは~♪
「味でしょう」は「私、気になります」(←千反田さん風にw)
今回は、ミステリー色が強くて、私好みの作品でした。
スニーカー文庫の表紙、可愛いですね。 (2008年03月18日 22時40分56秒)

Re[1]:愚者のエンドロール:米澤穂信(06/08)  
samiado  さん
翠香さん、こんにちは!

>「味でしょう」は「私、気になります」(←千反田さん風にw)

気になるでしょう?w ヒントは、英語風に読んでみてください。

>今回は、ミステリー色が強くて、私好みの作品でした。
>スニーカー文庫の表紙、可愛いですね。

とんでもない物まで飛び出してくる推理合戦が 楽しかったですね。

この表紙、今ではあまり見かけないんですよね。かわいくて好きだったんですが…。 (2008年03月19日 09時47分23秒)

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