ミステリの部屋

ミステリの部屋

2006年08月22日
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カテゴリ: 日本ミステリ
SFは余り得意ではなかったのですが、最近友人に教えてもらって、だんだん面白さがわかってきました。


美術品をめぐる九つの物語です。

天上の調べ聞きうる者/この子はだあれ/夏衣の雪/享ける形の手/抱擁/永遠の森/嘘つきな人魚/きらきら星/ラヴ・ソング


舞台は< アフロディーテ >と名づけられた巨大な博物館。

どのくらい巨大かというと、オーストラリア大陸ほどの表面積を持つ小惑星すべてが博物館の施設なのです。
その惑星は地球から38万キロ上空に浮かんでいて、あらゆる芸術品が収蔵されています。


どうですか、頭の中に惑星博物館の姿が浮かびましたか?

この作品は、読み進めていくうちに、次々と想像力を刺激されます。



ミューズ >と名づけられた、音楽・舞台・文芸部門。

アテナ >と名づけられた、絵画・工芸部門。

デメテル >と名づけられた、動植物部門。

博物館はギリシャ神話ゆかりの名前を持つ三つの部門に分かれ、それぞれ専用のデータベースを直接頭脳に接続した学芸員が、分析鑑定を通して美の追究に勤しんでいます。

劇場や、広大な動植物園を持ち、天上に浮かぶ夢のような博物館に似合わず、ここでは三つの部門同士での収蔵品争奪戦や、手のかかる調査物件のたらいまわしなど、ゴタゴタが常に起こっています。

そこで、設置された総合管轄部門< アポロン >で、部門間の調停や、総合的な分析に励むのが、主人公の田代孝弘です。

彼は組織の中で板ばさみになったり、困難な仕事を押し付けられたり、上司に悩まされたり、案外現実的な苦労をしながらも、芸術に関わる人たちの思いにふれ、色んなことに気づいていきます。




それまでに張られた伏線が、最後に収束していくという展開も見事です。

中間管理職の悲哀みたいなものさえ感じてしまう田代が、激務の中、美とは何か、美を感じる人の心の動きは何なのか、と問いかけ続けた末に気づいたものは何だったのか……。
最後の「ラブ・ソング」を読んで泣きたいような気持ちになりました。

これはおすすめです。



永遠の森  永遠の森 :菅 浩江








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最終更新日  2006年08月22日 17時07分58秒
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