ミステリの部屋

ミステリの部屋

2006年09月22日
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東野さんが「容疑者Xの献身」で直木賞受賞した後の第一作です。



重い気持ちで家に帰ると、庭には幼い少女の遺体が……。
部屋に閉じこもる息子のやったことなのか。事件と向き合うことで昭夫は、家族と向き合うことになります。
一方、 病床の叔父を見舞う新米刑事・松宮は、父に会いに来ようとしない従兄弟に苛立っていました。そんな時、事件捜査で、その従兄弟である加賀恭一郎と組むことになります。



まったくどこにもそんな紹介は書いてなかったけれど、加賀恭一郎シリーズだったんですね。
加賀刑事は好きなので、これはうれしい驚きでした。

嫁と姑の対立、嫌なことから逃げて家族と向き合おうとしない父、子供を溺愛する母、いじめ、認知症、少年犯罪、現代の社会における問題点がすべて織り込まれています。

人の身勝手さと心の醜さを、これでもかとつきつけられました。

とても、身につまされました。
とはいっても、自分のうちがあんな家庭に似ているから、というわけではありません。

意外にあっさりと読めてしまうのですが、それがかえってこんな人間がいてもおかしくないと思わせられるのです。
ダメ父やダメ嫁に腹を立てながら、やはりいつか自分に置き換えています。


これは倒叙物なので、犯人ははじめからわかっています。
それでもどんでんがえしがあります。

真実を暴くために加賀刑事が選んだ方法は、
「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身によって明かされなければならない。」でした。

伏線があることは気づきながら、どういう着地をするのかはわからず、意外な結末には胸をしめつけられました。
切なかったですね。

加賀刑事は存在感があり、とてもかっこよかったです。
父親との親子関係の描かれ方が納得いかないと感じていましたが、最後ですべてわかりました。
おかげで、暗くなるはずの読後感が救われました。

東野さんは去年末の雑誌で、「だんだんと人間を描く方に比重が傾いていった」というような事を言われていましたが、まさにそういう作品になっています。


加賀恭一郎を知らない人でも大丈夫ですが、これまでの加賀恭一郎が登場したシリーズを読んでいれば、さらに楽しめると思います。




赤い指 赤い指 : 東野圭吾


2009年、文庫化されました。





加賀刑事シリーズ
・卒業ー雪月花殺人ゲーム

・どちらかが彼女を殺した
・悪意
・私が彼を殺した
・嘘をもうひとつだけ

卒業 眠りの森 どちらかが彼女を殺した 悪意 私が彼を殺した 嘘をもうひとつだけ








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最終更新日  2011年01月05日 22時57分15秒
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