ミステリの部屋

ミステリの部屋

2007年03月15日
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失われた過去の記憶が浮かび上がるにつれ、男はその断片的“事実”に戦慄する。

そしていま若い女との幸せな生活にしのび寄る新たな魔手。
記憶喪失の男を翻弄する怪事の背景は?
蟻地獄にも似た罠から男は逃げられるか?
希代の名探偵・御手洗潔の最初の事件。

(「BOOK」データベースより)

公園のベンチでうたた寝をしていた男は、目覚めても車をどこに置いたか思い出せない。
それどころか車の種類もわからない、
そのうち、自分が誰かもわからないことに気づく。

記憶喪失という不安な状況からこの話は始まります。

ひょんなことから良子という女性と新しい街でアパートを借りて暮らし始め、このまま幸せで平穏な日々が続くかと思われますが、男が記憶を取り戻そうと一歩踏み出した途端、恐ろしい過去がわかってきます。

舞台は横浜です。しかも、昭和の香りはするもののなじみのある場所ばかりなので、非常に身
近に感じながら読みました。
4年前くらいに友人達と数量限定のミルフィーユを食べた馬車道の喫茶店も出てきました。歴史あるお店だったのですね。


御手洗潔は近くの町の占星術師として登場します。
若いです。
エキセントリックだけど、ピュアな心と反骨精神が同居していて、魅力的です。

男にまずいコーヒーをだしたり、一緒に音楽を聞いたりして交流を深めていくところは、青春小説の味わいです。

やや強引な仕掛けがありますが、謎解きよりはストーリーが重要な作品なので問題ないと思います。

振り返れば、悲しいけれど美しい物語でした。

あとがきにもあるように、作者が青春時代をすごした地への思い入れもあって、叙情的な雰囲気があふれています。

チック・コリアの音楽が印象的なはずですが、私はチック・コリアを知りません。
代わりにGLAYの「たった独りの戦いを今でも誇りに思うよ」という歌詞のある「a Boy~ずっと忘れない~」を思い出しました。でもこれでは昭和の香りがしなくなりそうです。

最後にはあることがわかって衝撃を受け、これまで読んだ作品を思い出してジーンと来る事間違いありません。
だから、この作品を1番に読んではいけません。せめて他の御手洗潔シリーズ作品を幾つか読んでからにした方がいいと思います。




異邦の騎士改訂完全版:島田荘司









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最終更新日  2007年03月18日 23時06分10秒
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