ミステリの部屋

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2010年04月07日

風の中のマリア：百田尚樹

(2)

テーマ：最近、読んだ本を教えて！(24307)

カテゴリ：ミステリ以外の小説

彼女の身体はそのすべてが戦いのために作られた。
堅固な鎧をまとい、疾風のように飛ぶ。
無尽蔵のスタミナを誇り、鋭い牙であらゆる虫を噛み砕く。
恋もせず、母となる喜びにも背を向け、妹たちのためにひたすら狩りを続ける自然界最強のハタラキバチ。
切ないまでに短く激しい命が尽きるとき、マリアはなにを見るのか。
内容（「BOOK」データベースより）

主人公のマリアはヴェスパ・マンダリニア。その中でも、とびきり勇敢な戦士です。
学名ヴェスパ・マンダリニアとはオオスズメバチのこと。

オオスズメバチの帝国が生まれ、拡大し、隆盛を極めたのち、終焉を迎え、次世代に命をつないでいくまでが、ワーカー（ハタラキバチ）であるマリアの生きざまを通して描かれます。

スズメバチといえばこれまで、刺されたら怖い、嫌だ、というイメージしかありませんでした。

ここで描かれている様子も、かなり残酷なものがあります。

ワーカーは、狩りをして、容赦することなく虫たちを殺し、肉団子にして持ちかえります。
また、十数匹で、一斉に何万匹も殺戮するシーンもあります。

ワーカーは自分で交尾することもなければ産卵することもないのです。

時に「自分は何のために生きているのだろう？なぜ戦うのだろう？」と自分に問いかけながら、それでも命をつなぐため、ひたすら戦士として闘い抜くマリアの姿には、胸を熱くさせるものがありました。

種を存続するための自然のメカニズムによって支配されていることも含め、生き物が生きることそのものがドラマチックなことなのですね。

やめられない面白さでした。その上、オオスズメバチの生態にとっても詳しくなりました。
怖いのは変わらないけれど、もう嫌いではありません。