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2009年09月26日
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カテゴリ: 韓国関連
 若狭重伍に連れられ、向井文次郎がやってきた所は日本領事館ではなく、井上馨公使の公邸であった。


 公邸の裏には雑木林がうっそうと茂っていて、近寄りがたい雰囲気を醸し出している。

 文次郎が公邸の中に入って行くと、外からは洋館風の建物だけしか見えていなかったのに洋館を取り囲むように小さな納屋のような物が5つほど建っていて、そこに人影が見える。
 どうやら自分の仕事はこれのようだなと、文次郎は感じながら公邸の建物に入っていった。


「井上閣下、今日着任した武官を連れてまいりました」
「うむ、ご苦労」

 向井文次郎は直立不動の姿勢で、井上馨公使に向かって名前を名乗った。


「君が向井君か・・・去年の宮内庁の剣道大会で優勝したつわものと言うのは君だね」

「はい、運良く」
「謙遜しなくてもいい、ここでは君の力が大きく役立つ、心して任務に付くように」
「はい」

「若狭君、しばらくは君が向井君の面倒を見てやってくれ」
「はっ」
「特に領事館から朝鮮の朝廷がある景福宮の周辺をくまなく案内しておいてくれ」
「はっ」
「向井君、若狭君は朝鮮国に来て1年以上経つ、彼に朝鮮国についてしっかり教えてもらい、10日で勉強期間を終えるように仕事に励め、わかったかね」
「はい」


 文次郎は初めて会う明治維新の中心人物に、しびれるような緊張感を感じながら井上馨との対面を終えた。

 実際日本政府は外交で一番のキーポイントの朝鮮国を井上に任せているのだから、やり手である事は間違いない、うわさでは井上馨の一番の部下の岡本の方が野心家であるとの話だ。


 その日から10日間、文次郎は若狭に京城をあちらこちら案内され、要所要所では文次郎に歴史的な話や、今の現状を説明していく。
 文次郎は若狭の簡素でわかりやすい説明を聞きながら、若狭も相当な勤勉家であると感じていた。若狭も決して剣だけの猪武者ではない。


 文次郎は朝鮮国に来て3日目の日記にこのような一文を書いている。

”朝鮮国京城は名前は似ているが、我輩が生まれ暮らしてきた京都とは雲泥の差がある。特に庶民の暮らしぶりは天国と地獄なり。朝鮮国に住む民は何を楽しみに生きがいに暮らしているのか・・・昼間から男が道端に座り込み汚い衣服を身にまとい、頭にいる虱取りをやっている。子供たちはほぼ全裸に近い格好で川と呼ぶには汚れきっている水が流れている溝で、ドロドロになりながら遊んでいた。



 このように文次郎は着任早々、朝鮮国について相当なカルチャーショックを受けていた。
 このことを若狭に告げると、若狭は「しばらくすれば慣れる、朝鮮国では話が出来るのは朝廷にいる人間と、粗末でも門がある家に住んでいる人間だけだ。それ以外の人間は文字も知らない、勤労する事を嫌がるただ生きているだけの人間である」と言った。

 確かに庶民文化というものは一つも存在しない。
 京都のように整備された大きな通りも無い、庶民でにぎわう店舗も無い、医者らしき建物が無い、看板と言う物が一つも存在しない、そして何しろ空気が臭い。街中に悪臭が漂っている。

 文次郎はこの臭いに慣れるだけで1ヶ月はかかった。


 文次郎は10日に及ぶ京城の勉強を終え、領事館の任務に付いた。予想の通り井上公使の公邸と領事館の警備を3つの部隊で交互に行うのである。
 文次郎はその3隊目の編成を任された。隊員は各隊15名、向井文次郎の副官には廃藩置県で同じ京都になった丹後舞鶴出身の安達源六になった。


 ちょうどその頃、李王朝内では閔王妃の姻戚大臣達による興宣大院君の失脚に向けて、次々と陰謀が進められていたが、大院君側がその陰謀を見抜き、王妃の母親や実兄などが屋敷もろとも爆破され死亡する事件が起こるなど、李王朝内の政争も風雲急を告げ始めていた。



つづく








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Last updated  2009年09月26日 16時41分49秒
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