ラメな毎日

ラメな毎日

06/1/29 【バヤデルカ】


2006年1月29日【バヤデルカ】 レニングラード国立バレエ
(於: Bunkamuraオーチャードホール)

ニキヤ: オクサーナ・シェスタコワ
ソロル: ファルフ・ルジマトフ
ガムザッティ: エレーナ・エフセーエワ


<<日記は5回に分けて書いたのでそのまま5つに分けています>>

<<その1  ◇1幕◇>>

また衝撃が…。大変なものを観てしまったよ。
シェスタコワの実力に恐れ入りました。彼女が演じると、本当ーーに愛くるしい、それはそれは素敵なニキヤでした。ニキヤが登場した時、大僧正でなくても心奪われちゃいました。だって愛さずにいられよーか。

昨日のこわーいガムザッティとは全くの別人。この人プロだわー。(切り替えが巧みです)

ルジ・ソロルと純粋に相思相愛なのねー。つかの間の逢瀬。二人ともとても幸福そうでした。シェスタコワは流し目を封印。素直で無垢な視線でソロルを見つめ、ソロルは愛おしげにニキヤを見つめ……。きゃ----、その間に割り込みたーい!(邪魔だ)

ソロルさん、質問。どうしてこんなニキヤを裏切れたんでしょう。

エフセーエワちゃんのガムザッティも迫力満点。プライドが月より高い高慢ちき。パパに猫なで声使ってわがまま放題のお譲ちゃん。シェスタコワのねっとりイジメるタイプと違って美人が鼻につく嫌らしさ。でもカワイー!ニキヤを引っつかんでトドメの肖像画を「これをご覧!」と見せるあたり。うぉー、怖い。

あの肖像画、どうしてもソロルに見えないんですが。あれでいいのでしょうか。

ニキヤを殺すぞ、と拳を握って決意表明。勇ましい。(惚れた)

<<その2  ◇アニハーノフさん編◇>>

2幕に行く前にちょっと。

アニハーノフさん、素敵な演奏をありがとう。1幕終わってアニハーノフさん指揮のCD買っちゃいました。CDの解説を読んでますますファンです。そうですよねー、バレエの演奏はただただ演奏家が楽譜どおりに真っ正直に演奏したら、舞台とバランスが取れずに不協和音が生まれますよねー。

<解説より抜粋>
『指揮者はプリマバレリーナや男性舞踏手、コール・ド・バレエの特徴、その日の調子などを見極めながらテンポに緩急をつけなければならないし、オーケストラも指揮者のタクトの動きに神経を集中して柔軟に対応しなければならない。しかも、「音楽」としての完成度まで要求されている』

...す、素晴らしい!ダンサーの息遣いをも読んでタクトを振られているのですね!そしてあの見事な美しい旋律。ぞくぞくします。踊り手の揺れる心情を代弁して場面を物語り、深く心に染み入る…。

今そのCDを聞きながら感想を書こうとしているのですが、【白鳥】を聴いて【バヤデルカ】書くのは至難の業です。何より聴き入ってしまって、手が止まる。それにこのCD[チャイコフスキー 三大バレエ名曲集]はアニハーノフさんの指揮というだけではなく、彼自身の選曲なのがうれしい。

アニハーノフさんの【バヤデルカ】もCD無いのかしら。

【バヤデルカ】で神の怒りにより世界が崩壊するクライマックスのシーンでは、アニハーノフさんの熱のこもった指揮ぶりに、ざわざわ総毛立ってしまいました。ステージ上に倒れてるルジと同時に見つつ、あぁ、なんていい舞台だったんだ---、と浸りました。

最後の舞台挨拶でのアニハーノフさんはいつも控えめですが、照れてるのでしょうか。ダンサー達に愛されてる様子が絆を感じます。

美しい舞台と美しい音楽。ブラボー!

(そういや、ブラボー隊、今日はちょっとイケてなかったような。)

<<その3  ◇ルジ回想編◇>>

ルジが熱で体調をくずしていたと聞いて、29日の出演には問題ないとは言われていたものの、配役表を見るまでは「どどど、どうしよう」「ルジが出なかったらどうしよう」とひとり心拍数が上がってました。

どうりで28日なんとなーく、なんか見せ場が足りないような気がしていたし、でも素人でよくわからん、、、少し調子悪いのかな?とは思いました。熱出してどうしてあんなに踊れるのか理解の域を越えてますが、それでもあそこまで魅せてくれるルジに喝采を贈りたいと思います。

29日は...幕が上がったらそんな心配は彼方へと消えて去りました。絶好調だったら更にどんなことになっていたのか。想像するだけで日がとっぷり暮れそうです。もういいから私をそっとしといて。妄想ワールドで日がな一日過ごしたい。(アブナイ人だな、傍から見ると。だからそっとしといて)

ルジの姿をつらつらと思い浮かべると、場面は前後するけど(なんせ反芻中 ^^;)どこを切り取っても全てに『美しい』『麗しい』という形容をつけたい。これ以上の賛美をどう言い表そう、と無い知恵を絞り頭もぐったり。もいっぺん国語勉強しようか...。とりあえず忘れないうちにツボを書いておこう。

ピンと張り詰めた空気のなか、時が一瞬止まったかのようなアラベスク。私の息も止まりました。

アヘンを吸って次第にぐったりしていく様すらため息がこぼれ、最後に力なく伸ばされてゆく腕がこの上なく優美。舞台中央で盛り上がっているはずのマミン@苦行僧の踊りは全く見てなかったよ。(正しくは、目もくれなかった)ニキヤを失ったルジの(ソロルなんだけど、敢えてルジの)悲痛なお顔に、また息止めて見入ってました。

3幕、照明が落ちヴェールのカーテンが下りたあと、すでに肉眼ではルジの姿が見えないのに、世にも美しいシルエットで舞台袖に消えていき(双眼鏡だと透けて見えるんです)、一緒にハートを持っていかれる。はぁぁぁぁ、素敵。

まだまだあるけど、眠くてもうだめ。

つづく。(多分)

<<その4  ◇ルジ回想編つづき◇>>

えー、ツボツボツボ。ツボの続き。(順不同)

ルジの背筋(笑)。
腹筋だけでなく背中も割れてませんか?背中を反ることで人を魅了しようとは、いつもながら、どこまで美しいんだ~~。どこまで行くんだ~そのフェロモン。
《危険ですから真似をしないように》の立て看板が必要なんじゃないのか。もうどこまででも行ってください。どこまでもついていきます。

美しいソロルの青い衣装。
ハーレムパンツは言わずもがな。美しい足を隠した代わりに美しいお腹まわりが拝見できる素敵な作り。バレエの衣装ってほんと素敵ですよねぇ。
ひとつ難を言うとすれば、汗だくなのがわかっちゃうとこかな。今時いくらでも速乾性の生地で作れるだろうに。ナイキとかアディダスとかに頼めないのかしらん。

ガムザッティの差し出した手を恭しく包み、口づけるルジ(いや、ソロル)。
●※□▲◎?!!いいの、いいの~?ニキヤのいる前で!でも神妙なルジの面持ちに複雑な心境を見て取り、神妙に見守る自分。私も差し出したいな~。(そういうことじゃないって)

ニキヤがばたっと倒れて駆け寄り抱きしめる場面。
ニキヤが毒に苦しんでいるときはうだうだしてたのに、倒れたとたん理性が吹っ飛びすっ飛んでいくところ。強く抱きしめなおすところが、ソロルの悲しみが強調されて◎です。ちょっとでいいからシェスタコワと交代したかった。

影の王国のソロル全て。

登場した瞬間から、ただただ はあと。
天に差し出された手の先を見つめつつ、大事なものをしまうかのように、その手を胸に当てて静かにため息をひとつついたような、ルジの表情がたまりません。

長い長い、いつまで続くのアラベスクの、その美しい指先と、完璧なまでのバランス。ニキヤに引かれるように捧げ伸ばした手に想いが込められているよう。完全保存して飾っておきたい絶品です。

想いが高じて幻影となって現れたニキヤに、初めはおずおずと触れ、次第に寄り添っていくところ。シェスタコワさんとのこの場面が美しすぎて、消えてなくなりそうで悲痛な気持ちで観ていました。

3幕 結婚の儀でガムザッティと踊るソロル。
ソロルの腕の中に幻影のニキヤがぴったりはまり、美しい影を残してするりと手をすり抜けていくところ。今のはニキヤ?とソロルが一瞬棒立ちになり、ハッとするソロルの、ルジの憂いのある顔が好きだなー。

胸騒ぎを覚えつつ、腕にはガムザッティを抱きながら気もそぞろでそわそわなルジ(いえ、ソロル)。ニキヤを裏切っているときは目も合わせられなくて、うつむき加減だったのが、ニキヤが幻影になってからはずっと追い求めているのが痛々しい。(自業自得なんですけどね)

カーテンコールがため息もの。
死して二人は結ばれたのね...。ようやく二人きりになれて、魂で結ばれたんだ。とひとり納得。いや、そんなストーリーはどこにも無いんですけど、シェスタコワのうるんだ瞳と寄り添うルジに、そう感じてしまったのよ。 ペレンちゃんとのカーテンコールは、「生きていたときの二人」だったのだけど。
魂レベルを表現しあうなんて、だから胸を打つのね。シェスタコワとの組み合わせをまだまだ観てみたい!

この日のバヤデルカをDVD化希望。きっと見逃したところがあるはず!できれば8日の白鳥も...。ルジは「舞台は消えてなくなるからいいんだ」と言ったそうですが、大事にとっておいて繰り返し見る楽しみもはずせない!でもやっぱり舞台は生が感動ひとしお、です。

素晴らしい芸術と幸せな時間をありがとう~~~>ルジ。

<<その5  ◇2幕から~◇>>

ようやく2幕。長い道のりだな~。

婚約の儀のニキヤの舞いは悲しくて辛くて、ソロルに訴えかけるのに、ソロルはといえば目を合わすどころか、顔も上げられない。ニキヤは泣きながら踊っていたんじゃないかな。

それなのに花篭を受け取ると、ソロルからだと思い込んで小躍りしてしまう。嬉しくて嬉しくて花が咲いたようなこぼれんばかりの笑顔。こういうところ、シェスタコワは全身で表現できる人なのよねー。

二人の気持ちを知っているガムザッティはわざとソロルの手を取る。シェスタコワのガムとは違って、エフセーエワちゃんは意地悪でというより、ソロルが自分のことをどう思っているか不安で、『あたしを見て!』と必死な気持ちの裏返しだったのかも。1幕で奴隷と踊ったときのガムは「お父様、素敵な人を選んでくれてありがとう!私、結婚します!」てな感じで純な一面もあったしねー。

毒蛇に刺されたニキヤに「あなたの仕業ね?」と指をさされたガムの反応。前日の、180度わざわざ振り返って「彼女を殺すのオーラ」を無言で投げつけるシェスタコワはホント~~~に怖かった。エフセーエワちゃんは、お父様の後ろに隠れて成り行きを見守る体制だった。強気なお嬢様だけどまだウブなのね。

3幕。阿片を所望し礼儀正しく吸引なさるソロル。次第に力が抜けていき、「あぁ、、、」とルジが呻き声を漏らすのが私には聞こえた!(想像ですが)のけぞりぐったり横たわるお姿にしばし妄想タイム。

影の王国の白いバレエにうっとり。ゆっくりとスロープを降りてくる幻影たちにここが現実の世界ではないことを強烈に印象づけられる。冷たい雪がしんしんと降り続いているような、白い清らかな幻想の世界。

シェスタコワのニキヤが精霊のように美しくて、求めすぎると消えてしまいそうで、それだけで涙。

白いヴェールを二人で持ったまま踊る様子は、ニキヤを大切に扱うようにヴェールを手繰り寄せたり、頭上に掲げたり。ルジの手さばきに愛を感じたね。前日はそうは思わなかったけど。それ故ヴェールを身にまとって退場するルジがツボです。

自ら壊してしまったけれど、大事に大事に想っていることを伝えたかったんだな、ソロルは。もう涙なしには見れませんね。

結婚の儀でガムと踊るソロルの腕に、ニキヤはそっと滑り込み、気配だけ残してそっとすり抜ける。魂の重さしかないかのような儚さ。ただポジションに収まるのではない、これも役作りなのか?前日ガムザッティだったとは思えません。シェスタコワ、恐るべし。

花を散らす場面で思うこと。
ペレンちゃんはまだ悲しみを引きずり未練たっぷりで、お願い、気づいて気づいて…と訴えモード。シェスタコワは幻影の場でお互いの気持ちを確かめ合って納得したのか、もう邪魔はしないから最後のお別れを言いに来ました、という風でした。ルジはどちらも未練たらたらでしたけど。ん~、だからいいのか。

また観たい!すっごく観たい!とりあえず一杯書いてすっきりした~。こんなにずっと考え続けてると体力消耗するな。観るにも体力がいるのね。次に備えて筋トレでもするかっ。

□□□ □□□

バヤデルカを見てルジの好き度が増した。こんなに美しい一瞬一瞬があっていいのか。切り取って胸に抱きたい。
いつまでもとっておけないから価値がある。取り直しがきかないからこそ、その瞬間が美しい。
舞台に魅かれるのは「今」目で見るものが全てだから。


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