「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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さしの部屋
スペイン(マドリッド~サモラ)
サモラの景色。デュエロ川には橋が架かる
マドリッドのホテルに到着した頃には、25時を回っていた。
ミラノでの乗換えの便は、元々遅い時間で気にかかっていたけれど、
実際は、無駄な心配だったと感じるほどに、もっと大胆な遅れ方をした。
夜中のソル広場は、それでも、それなりの活気を保っていた。
私はホテルの窓から、ゆっくりそれを眺める余裕もないまま、
落っこちる勢いで眠りにありついた。
翌朝、マドリッドを片目に眺めつつ、サモラ行きの長距離バスに乗り込む。
スペインで初めて乗った長距離バスは、横に3列の優雅なつくりだった。
私は斜め前に座る、その座席でも窮屈でしょうがないといった細長いお兄さんが、
パソコンで写真の整理をするのを眺めていた。古い白黒写真を大量に取り込んだみたいで、
角度を変えたり、トリミングしたりしていた。退屈そうな作業だけど、
楽しそうにしていた。そうしたら、サモラのバス駅に着いた。
景色も見ていたけど、正直イタリアの景色と変わらない。退屈そうだけど、
退屈しないで過ごしていた。
駅から中心地は距離があることが分かっていたので、タクシーに乗ると、
あっという間にホテルに到着した。ツインで、バスタブも付いていたので、
ゆっくりしてから町に繰り出す事にする。午後の2時前。イタリアだったら、
これからランチして、観光にちょうどいい時間である。
中央の広場のレストランは割高かと思ったが、覗いてみるとプレフィックスのランチが
10ユーロ。さすが田舎町。サモラ風ライス(お肉が入ったピラフのようなもの)と、
仔牛肉のステーキ、食後にフラン(プリン)、それに赤ワインとコーヒーと、、
ゆっくりゆっくりくつろいで、お店を出たころには、3時ごろになっていた。
さて観光、と、席を立ち、すぐ前にあった大振りなロマネスク教会は近づいてみると、
どうやら4時に開くようだ。まだ、1時間もある。仕方ないから、
観光インフォメーションに行くとこちらも同じく4時から。
まあ、1時間ぐらい、って思って、炎天下の中、狭い町を一周していると
はっとする。屋根や、教会の鐘の横に、不自然なものがある。大きい巣だ。
そこには、日本で考えたら、動物園でしかお目にかかれなさそうな、大きい鳥が
棒立ちしている。白と黒の鳥だ。羽を広げれば、1mくらいありそうな大きさなので
違和感満点だけど、ごく、普通の不利で、すまして棒立ちしている。
その後に気付いた。これは、コウノトリなんだと。
コウノトリを眺めつつ、町を一周すると、やっと、4時に近づいた。だから、
観光インフォメーションに行ってみたが、3分ほど過ぎても、開く気配がない。
そしてよく眺めてみると、あ、私が最初に見ていたオープン時間は冬のものなんだ。
って、夏のは、、あ、またもう1時間待たなきゃいけないの?他の教会も博物館も
よくみると全て5時からであった。
あと1時間は厳しかった。夕方でも容赦なく35度はこえていたし、
もう狭い町は外見からは見尽くしていた。ホテルに帰るのもはばかられ、
広場の石のベンチで横になった。数分おきに水をまくようなジャーって音が聞こえるのが
気になっていたが、疲れもあったので聞き流していた。その後、身を起こし分かった。
隣のベンチの人が、閉じた扇子を定期的に開く音だった。
座っていると手に何かが当たるので、驚いて払った。よくみると、すずめの子供。
めずらしい気がしたので、カメラを取り出すと、おばあさんがよってきて
話しかけてくる。「ああ、写真を撮るのね。」それ以上は、何を言っているのか分からず、
「スペイン語は話せないんです。」という。孫も近づいてきて、私に話しかけてくるが、
おばあさんは、「スペイン語は話せないんだって。」というから、女の子も、
「ああ。」と言って黙ってしまった。「話せないんだって。」という言葉が、
理解できるくらいならば、「話せない。」などと言わなければ良かった。
おばあさんはすずめを手のひらに乗せて、持っていった。籠に入れていた。
あのすずめは、おばあさんに飼われていたんだろうか。
インフォメーションも開いて、地図をもらって説明を受け、観光が始まった。
日本から旅立って、いっぱい待って、何時間が経過していたのだろう。
川の方に向かうと、水車小屋が3つ立ち並ぶ。不思議な風景だ。3つともに屋根には
十字架が立っている。宗教的な意味合いを持つ建造物なのだろうか。
近くに見える屋根の上にも相変わらずコウノトリの大きな巣と大きな姿が見える。
そこから数分の所に、インフォメーションもお姉さんが教えてくれた
町で見ておくべきロマネスク教会の1つがあった。クラウディオという名前の
教会だった。主祭壇があるところに柱頭彫刻がたくさん残っているので
興味深く見ていると、上がってみてもいいのですよと、
管理のおばさんが声をかけてくれる。近寄ってみると、先ほどのポジションでは
考えられないような裏手に素敵な彫刻が残る。おばさんはディテールをメモし、
真剣に眺める私を、なんだか嬉しそうに眺め、しおり(教会特製)を渡してくれる。
サン・クラウディオをでて、サン・ティアゴ・エル・ヴィエホという町外れの
教会に向かう。こちらは、より質素で小さく、外観は小屋のよう。
だけど、中には、目を疑うような美しい彫刻が残っていた。
先ほどと同様、メモを取り出し、写真に撮れない内部を記録していると、
また、管理の人が、声をかけてくる。「サン・クラウディオは見ましたか?」
私が、シー!と言っても、ちゃんと通じているのか不安らしく、
「もう、既に見たのですか?」と聞いてくる。表現が分からないので、
確信を持った表情で、再度、「シー!」。彼女は本当に満足そうだ。
その後、市内でいくつも見学したロマネスク教会や博物館を今思い起こしても、
彼女の満足そうな笑顔には勝てないような気がする。
この町で一番有名なカテドラルは残念ながら工事中で、併設されている
博物館に入ることが出来たのみだった。だけど、その分予想以上の素敵な
ロマネスク教会が点在していた。
散々待たされた今日。夕飯もそうだった。9時そこそこでは、レストランには
人が入らないのだ。やっと、10時近くになって、レストランに入ると、
不思議そうな表情をされるから、「レストランは開いていますか?」と聞くと、
ああ。と言った表情で席に通してくれる。私が一番客だ。だけどね、
不思議な事に、広い店内は、15分後にはほぼ満席になっていた。
色々と待たされるけど、結局、スペイン人ってある意味時間に律儀なのね。
鱈のサラダやステーキやワインは、人生で一番ぐらいにおいしかった。
もう、何度も何度も往復した市街地を抜け、ホテルに戻り、もう一度バスタブに浸かり眠りに付いた。
いい旅行のスタートになっているんだなぁって、やっと自覚する事ができた。
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