ひたすら本を読む少年の小説コミュニティ

日記再開


机を畳に運び居間のソファに寝転ぶ。
水を飲む。
2リットルのペットボトルを意味も無く全部飲む。
ご飯を食べる。
肉を食べる。
また水を飲む。
そして、勉強を始めた。
TLTソフトで勉強し始めたので、畳に机が存在する意味が消える。
そのまま12時まで勉強した。

朝から曇りだった空が晴れる。

92歳のおじいさんのビデオを見た。
ドキュメンタリーだった。
母親と弟たちのために家を出て、時計屋の主人に拾われた子供時代。
40代までバスの整備士をやり続け、時代の流れにうまく乗り、自動車工場を建てる。
50代のころ、仕事はますます忙しくなり、数人の社員が倒れる。
下請けを断る。
「仕事はやるもんだ。やらされるものじゃない。」
それからずっと、洗浄機を作ってきた。
使命感を持つわけでもなく、何のためでもなく、洗浄機を作ってきた。
大根は大根の洗浄機。
エンジンはエンジンの洗浄機。
というように、それぞれのそれぞれに合った洗浄機を作ってきた。

「歯が無ければ、歯は悪くならない。」

92歳の老人には歯が無い。
5年前に妻が無くなってから自分ひとりで家事を全てこなしてきた。
ご飯には油。
5年前、隣の工場が営業に失敗。
1億円の負債を抱え、困り果てた工場長は、92歳の老人に相談する。
92歳の老人は工場長に何も聞かず、1億円でその工場を買った。
助けることに意味など無い。
意味など無い。
90歳から始めたダンスをする後姿を最後にドキュメンタリーは終わる。

また勉強を始める。
TLTソフトを事務作業用ロボットが事務作業をするかのように続ける。
空が曇り始める。
カレーを食べる。
水を飲む。

今は雷が鳴る。

夜はカフェで勉強する予定だが、これでは外に出たくない。
ピアノを気晴らしに弾く。
僕が弾くと全ての音がフォルテに鳴る。
静かに引いてもフォルテのようなうるさい音になる。
「希望の轍」
僕はうるさくピアノを弾いた。

ますます雷がひどくなってきた。
2つある部屋の電灯のひとつを消す。
雨の音が微かに聞こえる。
水をはじく車のタイヤ。

凄まじい光とともに凄まじい音をあたりに轟かせながら凄まじい雷が落ちる。
雨の量が増える。
夕立の原理でも説明したいところだが自分たちで調べてくれ。
要はマイナスとプラスと磁力さ。
ここは原宿。
外からは急な雨に打たれる人の声が聞こえる。
すごい量だ。
僕はひとつの電気以外全ての電気を消している。

窓を閉めた。

雷が消えた。

雨が地面に叩きつけられる音だけ聞こえてくる。

明日は史上最高で最低のデザイン性を持つTシャツが届く日だ。
値段を担任に言ってない。
まぁ、いい。
なるようになるさ。

空が晴れる。

カフェに行くことにした。


通過点に意味など無いさ。




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