ひたすら本を読む少年の小説コミュニティ

2005.06.05
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空も、雲も、海も、風も、何も無い。

真っ白な地面。

真っ白な天井。

人もいない。

誰もいない。

壁は何も答えてくれない。

目の前の空気は薄い。

僕は動いた。

恐ろしくゆっくりと僕は立ち上がった。

そして、部屋の中央に扉が生まれた。

地獄の扉だ。

真っ黒な扉。

ノブも、木の板も、すべて黒い。

漆黒だ。

装飾は何も無い。

ただ、僕はそれが地獄の扉だと言うことはわかっていた。

僕はノブに手をかけた。

凄まじい風の音が鍵穴から聞こえてくる。

ノブを回した。

金属がこすれる音が聞こえる。

まるで叫び声かのように。

少しずつ扉は開いていく。

生暖かい風が僕を通り抜けていく。

開いた隙間から、大量の液体が流れ出てくる。

血でも、水でもない。

何かの液体だ。

扉が開かれていく。

僕はそれを止められない。

それは止められないことなんだ。

戦争で人を殺すのが大儀になるように。

核爆弾を入道雲が浮かぶ真っ青な空から、突き落とすかのように。

僕の心は揺らがない。

それは決められたことだし、決められていたことだ。

このとき、僕がこの扉を開くことは特別なことでもなんでもない。

それは初めから在って、終わりが来るときは終わるのだ。

先程流れ出ていた大量の液体は流れるのを止め、風は動くのをやめた。

まるで自らの存在を、後から来る恐ろしいモノから隠れるように。

そして、扉は開かれた。


そこには何も無かった。

また、ここと同じ真っ白な部屋が続く。

同じなんだ。

これが僕が生きることなのだ。

扉を開ける。

それが僕なんだ。

それだけが僕の存在であり、存在価値でもある。

僕にはブルジョワ的思考など存在しない。

だが、僕はここで扉を開き続ける。

誰のためでもない、自分のためでもない。

来るべき時のために僕は扉を開き続ける。

今まで僕は数え切れない数の扉を開いてきた。

気づくとそこにいる。

それだ。

繰り返しではない。

だが、僕は扉を開き続けてきた。


来るべき時のために。


それが今だったのだ。


「やあ。」


気づいたら何も無かった。


「僕はここでずっと君を待ってた。」


空も、雲も、海も、風も、何も無い。


「だが、君と僕を繋げるには相当な数の壁を越えなければならなかった」


真っ白な地面。


「本当に大変な数だった。鼠も食べつくした。」


真っ白な天井。


「時には壁を壊したよ。」


人もいない。


「他にも、君以外の人がこの世界に紛れ込むこともあった。」


壁は何も答えてくれない。


「その時は、消した。僕にとっては身を引き裂かれるようなことだった。」


目の前の空気は薄い。


「でも、ようやく君と繋がった。」


僕は動いた。


「いよいよ完全に君は僕と繋がる。」


恐ろしくゆっくりと僕は立ち上がった。


「お帰り。」


部屋の中央には、何かがいた。



「僕は、ジョンレノンだ。」


時計を額に埋め込まれた小太りの男はそう言った。





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Last updated  2005.06.05 12:00:31 コメント(3) | コメントを書く


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