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東京丸の内の出光美術館にてルオー大回顧展を見ました。今年没後50年ということです。ルオーの絵は黒い輪郭線と深い色彩が中世のステンドグラスを思わせますが、キリストや聖母をほとんど描かなかった時期がありました。描き続けていたのは、裁判官、娼婦、道化師など… たしかにそういう人たちを見れば人間の性が見えてくる気がします。といっても、それも一様でなく、裁判官でも傲慢な権力者の象徴であることもあれば、人を裁かなくてはならない苦悩の表情を見せていたり。道化師もしたたかだったり、子煩悩だったり、あるいは、穏やかな顔をしていたり。キリストや聖母が描かれていなくても、やはりそれらは宗教がといえるでしょう。「ミゼレーレ」という版画のシリーズで、「生きるとはつらい業」という題の絵のとなりに、「でも愛することができたなら、なんと楽しいことだろう」という絵があったのが印象に残っています。 最晩年の絵の具を異様に厚く盛り上げた色鮮やかな絵には吸い込まれそうでした。円空仏のような力強さを感じました。出光美術館公式サイト
July 4, 2008
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六本木のサントリー美術館にて、鳥獣人物戯画を見てまいりました。巻物の一部が見えるように広げてあって、全部は見られません。 鳥獣人物戯画は4巻あって、教科書などに載っている勇名なのは最初の2巻です。3巻目は見るからに違う作者のもの、4巻めは人物が描かれていて、時代も下って鎌倉時代のものです。かなりおおざっぱな筆致なので、あまり取り上げられることがないのかもしれません。 オリジナルのものに加え、後世の摸本も展示されています。加納探幽のものもあります。オリジナルに欠けている部分の模写もあります。 鳥獣人物戯画のほかに、ねずみの草紙や、シモネタ系?の展示もありました。 ねずみの草紙と同系の作品で、ある農民が猿に、田んぼを耕してくれたら娘を嫁にやる、と約束し、猿が耕してしまったので、娘を隠したけれど、猿は陰陽師に居場所を教えてもらって娘を連れ去ってしまった。娘の運命はいかに?というところまでしか見せてもらえず、その後の展開がどうなったのかが気になります。サントリー美術館公式サイト 地下の平田牧場のお店でヒレカツを食べました。30分ほど並びましたが、ヒルズ族向きのようなお店は私達には合わないし、お店を探し歩くのも大変なだけで成果があるかどうかもわからないので、待つことにしました。おいしかったです。ソースも2種類ありましたが、私は塩をふって食べるのが一番好きです。
December 1, 2007
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目黒雅叙園の『華道家 假屋崎省吾の世界』を見てきました。1935年に建てられた木造建築が会場です。斜面に建っているので、百段階段と呼ばれる階段廊下に沿って6つの部屋があり、そこに作品が展示してあります。 ひとつひとつの部屋は壁や天井が著名な画家の絵で飾られ、木の窓枠も桟の四隅に模様が掘ってあったり、とても凝っています。鏑木清方の美人画の部屋(天井は朝顔)、野菜・果物・魚などと花のモチーフがテーマになっている部屋、四季の風景の描かれた部屋、浮き彫りの部屋などに、掛け軸や婚礼衣装が飾られ、マッチした華材の假屋崎さんの作品が飾られています。浮き彫りに囲まれた「漁樵の間」などは、お大尽のテーマパークといったところでしょうか。この部屋で寝るのはちょっと恐いねなどという声が聞こえました。彫刻の人が動いてきそうで… 公式サイトを見たら、「昭和の竜宮城」とありました。 派手な内装の部屋なので花もインパクトがあるものでないと負けてしまうでしょう。めったに見ないような大輪の菊や大王松、桑の枝やタビビトノキを彩色したもの、あけび、からすうりなどが使われていました。私は花を切って飾るということは残酷な面もあるような気がするのですが、実のついた柿の枝を切ってきたり、本物の蝶が止めてあったりしてあることと、テレビで見る假屋崎さんの優しげな雰囲気を思うと、人をもてなすために家畜を犠牲にするみたいなことに通じるものがあるような気がしました。考えすぎかもしれませんが。 「華のチカラ」がテーマというだけあって、ピンクや黄色、赤など華やかな色が多く使われていました。ピンクと黄色、という配色は私は好きではないのですが、照明の当て方で黄色が美しく浮き上がって、プラスの気をもらえる様に感じました。逆光を生かした作品もありました。 たくさんの菊が窓際に置かれた部屋には天守閣物語のお姫様と侍女たちが現れそうでした。目黒雅叙園公式サイト 『華道家 假屋崎省吾の世界』
November 9, 2007
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日曜日、出光美術館の「仙がい名品展」を見てきました。(「がい」の字は手書き入力してみましたが機種依存文字になってしまって使えませんでした)しじまのれいめいさんが書いていらっしゃらなかったらそのうちに行こうと思っているうち終わってしまっていたでしょう。ありがとうございます。 仙がいといえば飄々とした禅僧と勝手に決め込んでいましたが、まとまった数の作品を見るとなかなかひとすじなわで行かない、という気もしてきました。仙人ならぬ人間であったのだと思う面もあります。当時より信望あつく、人気があったようで、あまりたくさんの人に絵を描いてくれと頼まれるので絶筆碑などというものを建てています。恵比寿さまなどの縁起のよい絵はお守り的な意味で人から頼まれたのかもしれません。中には恵比寿さまが、「よろこべ」と笑顔でいる下のほうに鯛?がげんなりした顔をしている絵がありました。今の私の心に一番すとんとはいってきたのは、「よしあしの中を流れて清水かな」です。 現代の漫画のような絵もあります。五条の橋の弁慶と牛和歌丸なんかどうみても漫画です。老人六歌仙のように文章ではきびしいことを言っていても描かれた老人達は楽しそうだったり、ユーモアたっぷりだったりする一方、座禅の形をとっているだけで仏になれるものなら蛙だってなれる、という手厳しさもあります。とはいえ、蛙の表情はユーモラスです。好奇心旺盛で網にかかったトドを見に行って描いたり、この世のすべてのものに仏の心が宿っていると考えて、観音さまに見える貝殻やおもしろい形の石など集めていました。 知人に贈った茶碗にはセンスのよさを感じました。象の形の「仙がい」印、まねして作りたいです。若い女性達が見て「おしゃれさんだったんだね」と言っていました。仙がい作の茶杓はそれぞれぴったりの銘で、茶人が茶杓をありがたがるわけがわかった気がします。 仙がい名品展を出るとルオーコレクションの小部屋がありました。醜い権力者を批判し、貧しい人、小さな人に心を寄せるルオーの絵。絵の奥からにじみ出てくるような光が心にしみこんできます。両脇に同じ刑を受けている犯罪者と3つの十字架が描かれている磔刑図には「善い盗人、悪い守銭奴」の題がついています。片方は改心し天国を約束され、片方はののしったと聖書に書かれていますね。 これらは出光佐三氏のコレクションだそうですが、昔の実業家はお金がすべてではなかったと感じ入りました。財力があったからコレクションもできるわけですが、それでも。
October 30, 2007
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東京都庭園美術館にティファニーの宝飾を見に行きました。最初の部屋に、ポスターのイエローダイヤに小鳥がとまっているブローチが展示してありますが、思ったより大きく、まさに「燦然」ということばがぴったりです。 ブローチ、ネックレスなどのほかに、パーティー用の小さなバッグや、煙草入れ、葉巻の先を切る道具、ビネグレット(気付け薬)と舞踏会用手帳などがベルトにセットでとめられるようになっているもの、指輪にチェーンで小さな香水瓶をぶらさげたものなど、社交界の贅沢な暮らしが見えてきます。典型的アール・デコのものや、ジャポニズムの意匠のものもありました。1941年のB25爆撃機のイヤリングなど戦争を反映したものもありました。 「目の保養」という声が聞こえましたが、保養というより、宝石の大きさと細工の細かさにくらくらしてしまいました。目を見張りすぎたのか、今ちょっとドライアイ気味です。 10時開館のところ10時少し過ぎに入ったのですが、かなり込んでいました。男性もちらほらいらっしゃいましたが、大部分が中高年の女性でした。皆さん展覧会を見てからランチ、という計画なのでしょうか。展示してあるものが細かいのであまり混んでいる時では良く見えないでしょう。庭園美術館
October 17, 2007
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いつも珍道中の友人と上野に行きました。まず、西洋美術館で「パルマ―イタリア美術、もう一つの都」を見ました。祭壇画、ルネサンス、バロックの歴史や神話をモチーフにした絵、宗教画、と有力者およびその家族の肖像画が歴史の流れに沿って展示されています。しっかりしたデッサン、調和のとれた色彩がなるほど「イタリア美術」という感じです。「パルマ―イタリア美術、もう一つの都」 公式サイト わりあいすいていたので、ゆっくり見られました。土日だともう少し混雑するかもしれません。どうも私は宗教画やバロックの絵はたくさんいっぺんに見ると食傷してしまいがちです。パルマはパルメザンチーズの産地なのですね。スタンダールの「パルムの僧院」の舞台もここなのでしょうか? 美術館内のレストランで昼食をとってから、常設コーナーの端で開催中の「祈りの中世」へ。こちらはロマネスクの聖堂の写真展です。フランスはヴェズレーのサン・マドレーヌ修道院聖堂、ノアン・ヴィックのサン・マルタン教会、ル・トロネ修道院、モレイヤス・ラス・イヤスのサン・マルタン・フノヤール教会、スペインのサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院。ある時期暗黒時代と呼ばれていた中世の一種独特な稚拙な壁画や異教的にすら見える彫刻など… 船越保武さんはそこに力強さを見出して「ロマネスク様」とアトリエに貼っていらしたと記憶しています。 キリスト教世界から出て次はインカ・マヤ・アステカ展です。インカ・マヤ・アステカ展 マヤのデザインはとても斬新で、現代美術を彷彿とさせます。というより、現代美術の作家の方がインスピレーションを与えられていたのかもしれませんが… たくさんの人間をいけにえに捧げていたアステカ。けっこう大きな像の保存状態のよさには感心しますが、不気味です。 アンデスの父と子のミイラ。なくなっても服を着せたり食べ物を供えたりして世話をしていたということですが、もの言わぬ家族とどんな気持ちで暮らしていたのでしょう。 こちらの展覧会は平日昼間でも混んでいました。夏休みにはいってもっと混みそうですね。お子さんには少し恐いかもしれません。
July 21, 2007
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古代エジプトの聖なる猫に会いたくなって、ブリジストン美術館に行きました。以前不安をかきたてるような絵を見た後、常設の古代のコーナーでその猫を見たとき、気持ちがなごんだのです。実際の猫よりほっそり長細いからだとかわいらしい顔をしていて、前足を揃えて尾を足に沿わせて前の方においています。ブリジストン美術館コレクションというところをクリックし、古代の彫刻に行くとご覧になれます。 美術館目指して銀座通りを歩いていると、若い人たちが10人ぐらい集まっていました。引越しのトラックが数台とまっていて、制服を受け取って着ているところでした。もしかしてこれが日雇いの派遣なのだろうか?と思ったのですが…このかたたちがどういう条件で働いているのかはわかりませんが、杉浦ひとみさんが斉藤貴夫さんの講演「格差社会の構図・ワーキングプア・労働者の現状」を詳しくまとめていらっしゃいます。杉浦ひとみの瞳 ブリジストン美術館ではコレクションの中から「じっと見る」と題して選んだ作品を展示していました。入り口すぐの常設の彫刻の部屋を通って展示室にはいると、1. 伝統から近代へ 祭壇画、小品ながらレンブラント、ゲンズバラ、ドーミエ、クールベ、ミレーの小品など2. 印象派へのいざないコロー、ピサロ、マネ、シスレー、ルノアールなど3.モネからセザンヌ、そして印象派以降セザンヌ、モネ、ゴーガン、それにゴーガンとシニャックが1点ずつ。4.世紀末から20世紀へルドン、ボナール、ルオー5.日本の近代絵画1浅井忠、藤島武二など6.日本の近代絵画2安井、梅原、岡鹿之助など7.20世紀のさまざまな表現1 マティスとフォービスム~エコール・ド・パリマティス、ローランサン、藤田(魚が置いてあって猫が画面の端に顔を出している、お気に入りの絵)など8.20世紀のさまざまな表現2 ピカソとキュビスム~シュルレアリスムアンリ・ルソー、ピカソ、を中心に。9.抽象への道出てから気がつきましたが、聖なる猫に気を取られていたので、最後の抽象の部屋があるのに気付きませんでした。いらっしゃるかたは、ご注意ください。(私だけ?) レンブラントやコローはもともと好きですし、小品ながらアングルもすてき、ピカソやマティスは迫力があって印象的ですし、あまり疲れず見られる規模でなかなかよかったです。でも、個人的に一番惹かれたのはルドンとルオーでした。そのときの気分によっても違ってくると思います。ルオーは一時あまり興味がなくなっていたのですが、最近また見たくなりました。道化師、王様、裁判官を繰り返し描いている意味が最近わかるような気がしてきて。同じ部屋にある道化師と赤い鼻のクラウンはまったく違った表情をしています。(私の目から見るとですが)クラウンが裁判所でキリストをとりかこんでいる人たちとどちらかというと同類なのに対し、道化師は静かで高貴ともいえる顔をしています。 「郊外のキリスト」も好きな絵ですが、この「郊外」とははたしてどこの郊外なのでしょうか?2千年前のパレスチナの町でしょうか?それとも現代の工業都市や大都市のうらぶれた集合住宅の建つ町でしょうか?どちらにも見える気がします。 絵を見て気分がよくなって、松屋の地下でいつもより奮発して「有明」というお茶を買いました。今年の春は、葉を摘んできてそのままお茶にしたような青臭いけれど生命力に満ちた生茶を買うのをすっかり忘れてしまったのですが、みずみずしい新緑そのもののようなお茶が飲みたくなって選んでもらいました。好みによりますが、色がきれいでおいしいです。
July 7, 2007
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先日新国立美術館にモネ展を見に行きました。友人と「チケット売り場の前」で待ち合わせたのですが、大江戸線で来た彼女と千代田線の私と反対側で待ってしまいました。こんなとき携帯がある世の中はやはり便利ですね。 モネは多作だったのですね。今回たくさんの絵が方々から集められていました。時代を追うというより、テーマごとの展示で、ところどころにテーマに沿ったほかの人の作品が展示してある部屋もありました。ご存知のように睡蓮もたくさん描いていますが、中にはまったく予想外の暗い色のものもありました(目が悪くなり始めてからの絵でしょうか?) ポスターにもなっているパラソルを持つ女性や海の絵はとても清清しくて、やはり家に飾るならこういう絵よね、と友人と言い合いました。しかし戸外でたくさん制作したことで紫外線で白内障を誘発してしまったのでしょう。 美術館の建物はというと、私には苦手なタイプです。維持費もかかりそう。あとで持て余さなければよいですが…他の日に行った人の意見はというと、絵を展示するには天井が高すぎて照明がうまくできない、展示することを考えて設計するのでなく自己顕示ばかり、音が響いてうるさい、建物にはいるとオープンカフェになっているのでお昼時には匂いがすごい、とどうも評判がよろしくありません。 携帯のピンボケ写真ですが、建物の入り口をはいったところ、ロビー兼オープンカフェ。
May 15, 2007
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銀座松屋にて「黒井健 絵本の世界展」と日本橋三越にて「キルトの100展」を見てまいりました。嫌好法師さんのおかげでよい展覧会を見せていただきました。 黒井健さんの展覧会はたくさんの原画と「猫の事務所」「ホテル」の登場人物の木彫、お嬢さんと合作のフェルトのフィギュアがあり、ちょうどサイン会もあったので混雑していました。 色鉛筆とは思えない緻密なタッチ(色をつけてからこすったり、定着剤をかけてからマスキングテープをはったりしている製作過程も展示されていました)で日本や外国の風景、人間や動物、木などがあるときは晴れ晴れするように、あるときは神秘的に描かれています。なんといっても「ごんぎつね」や「てぶくろをかいに」「ころわん」などがかわいいです。販売コーナーがあったので、友人は味わいあるホテルのバーテンなどが山猫の姿で描かれている「ホテル」を、私は忘れかけていた子供の頃のできごとが描かれているような「SWEET す・て・き・な・と・き」を買いました。どれも欲しくなってしまうのですが… 「12の贈り物」もふたりとも欲しかったのですが、残念ながら売っていませんでした。これはシャーリー・コスタンゾという人が自身の子どもたちのために書いたもので、人は誰しも誕生したときに12の贈り物を授かっている、それは「力」「美しさ」「勇気」「信じる心」「希望」「よろこび」「才能」「想像力」「敬う心」「知恵」「愛」「誠実」、それに加え最高の贈り物は「あなた」というのです。ユウchan 黒井健さんの原絵を展示している「絵本ハウス」が清里にあるのですね。ただし、今は冬期休館中です。黒井健 絵本ハウス 「キルトの100展」はウェンハム美術館のアンティーク、現代アメリカと日本の作家の作品の展覧会です。おばあちゃんを忍びながら縫ったキルト、少女がお人形のためにエプロンやシャツのはぎれでつくったキルト、商品としての、でも手づくりの温かみのあるキルト、そして現代の絵やオブジェに近い作品など、それぞれ興味深く見ました。三越・キルトの100展 黒井健 絵本の世界は昨日まででしたが、着るとは28日まで開催しています。
January 23, 2007
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白金の庭園美術館にアール・デコ・ジュエリーを見に行きました。東京都庭園美術館 展示を見る前に、入り口横にある「カフェ茶酒Kanetanaka」で昼食をとりました。日が当たってそれほど寒くなかったので外の席にしました。ひざかけを貸してくれます。中のカウンター席も窓から木立が見えてすてきです。 料亭金田中の経営だけあって、出汁がしっかり効いていておいしかったです。器も木や磁器で、カジュアルでもおしゃれでした。コースもありますが、その他の食事は小さいお寿司や麺類などから2種選ぶようになっていて、なかなか楽しいです。デザートもいろいろありましたが、あまり食べてしまうと展覧会を見に行くのがおっくうになってしまうので、控えました。 庭園美術館はご存知のように、朝香宮邸として建てられたアール・デコ洋式の建物です。各部屋をまわって当時の華族の生活に思いを馳せながら展示を見ます。今回は20世紀前半活躍したデザイナー、シャルル・ジャコーを中心に、当時のファッション画、宝飾品が展示してあります。ジュエリーはデザイン画と実物がありますが、デザイン画の方が多めです。実物の点数は思ったほど多くなかったとはいえ、精緻な装飾は見る価値があります。ファッション画で見る服や帽子、今見ても斬新です。(テレビのポワロなど見ているとこの時代のインテリアやファッションが楽しめます) 部屋を巡っていると、ジュエリーにも流行があるのがわかります。カラーストーンをたくさん使った時代、豹など動物モチーフや籠に果物を持ったモチーフ(トゥッティ・フルッティ)が流行った時代、プラチナとダイヤ一色の時代など… プラチナも20世紀にはいってさかんに使われるようになったのですが、値段が高騰したときには、金が見直されたそうです。ジャコーは20歳でカルティエに才能を見出され、幾何学模様など新しいデザインを次々創り出しました。 パーティーで女性が化粧品やたばこなどを入れて持ち歩くためのバニティーケースは印籠をまねたものだと初めて知りました。 庭園美術館には何度も行ったことがあるのですが、今回初めて日本庭園まで見ました。池にたくさんの紅葉が散っていました。もう枯葉色になってきていましたが、もう少し早ければとてもきれいだったのではないでしょうか。お茶室があって、大きな鯉がいました。
December 25, 2006
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いろいろ気になることばかりですが、日曜日、日本橋三越にエナメル彩ガラスを見に行きました。河内玲子さんの個展です。日本の古典模様を追求する作風なのですが、今回もその緻密さに脱帽しました。もちろん技術だけでなく、デザインもすてきですし、色もシックなのです。と言葉でいくら説明しても何にもならず、百聞は一見にしかず、ですが、月曜で終了してしまいました。 ちょうどドイツフェアをやっていて、マイセンの展示もありました。実演はもう終わってしまっていましたが、いかにもマイセンらしい花や鳥、果物といったモチーフのタイルや食器のほか、今まで見たことがなかった大きな陶板(本当は磁器なので磁板?)などがありました。サイン入りの現代の作家のものもありますが、マイセンではそういう新しいデザインも次の職人に引き継がれるのだそうです。 300万もする陶板や、猿のオーケストラの人形セットなどが売約済みで、やはりあるところにはあるのですね。タイルを1枚浴室にはめこむかたもいるそうです。 アンティックのコーナーもあり、少女が仔羊の首にリボンを結んでいる人形が気に入りました。羊の信頼して甘えている表情がかわいくて。お値段もさることながら、置く所もないので、買いませんでしたけれど。このマイセン展も日曜が最終日でした。 新館のウェスト・レトロカフェでサンドウィッチとコーヒーの昼食をとりました。入り口のメニューに国産牛と書いてあったので、安心しました。ウェストはちょっと高いですが、水道水に発癌物質のトリハロメタンが含まれると問題になったときから、ミネラルウォーターに切り替えたり、レモンの皮が剥いてあったりする姿勢が好ましくて時々利用します。コーヒーも(850円だったか?)ちょっとびっくりするお値段ですが、おいしいし、おかわりができます。サンドウィッチのハムは発色剤などは使っているようですが、上質で、ちょっとそのへんのハムサンドとは違います。好みでパンをトーストしてしてもらうこともできます。
November 22, 2006
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丸木俊さんというと、原爆の図を思いますが、かわいらしい絵も描いていたのですね。「ロシアのわらべうた」が復刊になるそうで、目白のブックギャラリー「ポポタム」で今日から原画展が始まりました。ちょうど近くを通ったので、見てきました。今度の本はサイズが小さくなって一段とかわいらしくなりそうです。見本があって、予約できます。猫好きの人には特におすすめです。 絵本の原画ではない絵も何点か展示してありました。なかなかおしゃれな絵もありました。絵には俊さんの心の温かさがにじみ出ていました。中でも、木にとまった虫の子の絵からは、ジャン・フランソワ・ミレーの絵の前に立ったときと同じように、絵から暖かいものが放射されてくるような気がしました。「足の1本は私がおったのかもしれない。ごめんね、虫の子」正確ではないけれど、そんなような言葉が書いてありました。小さな小さな白い鳩の絵がほしくなりました。夏にオルゴールの博物館で見たベン・シャーンにも白い鳩のような鳥のリトグラフがあって、やはり同じように、内側から輝いているように見えました。こちらでご覧になれます。ブックギャラリー ポポタム もしかしたら、俊さんも、ベン・シャーンも本当は楽しい絵ばかり描いていたかったのかもしれません。でも、この世の悲惨を見ないふりはできなかったのでしょう。といっても、楽しいもの、美しいものばかりを取り出して見せる、という道もあると思いますし、楽しいもの、かわいいもの、美しいものを取り出してみせたり作り出したりすることも必要なことだと思います。前期が11月11日まで。後期は14日から25日までで、展示換えがあります。
October 31, 2006
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上野にて「ミイラと古代エジプト展」(国立科学博物館)と「ベルギー王立美術館展」(国立西洋美術館)を見てきました。 「ミイラと古代エジプト展」は2日前までに日時指定で券を買っておきます。売り切れていなければ、当日券でもはいれます。(300円プラス) まず、入り口で立体メガネを貰い、5分案内のビデオを見て、そのあと3Dシアターに入ります。メガネをかけて見ると、エジプト文字が浮き上がってきたり、棺が立体的に見えたりします。ミイラは一度布をとってしまうと、もとどおりにできないので、ほどかないまま、CTスキャンデータをもとにコンピューターグラフィックスで映像を作っています。 ミイラはネスペルエンネブウという名の神官で、亡くなったのは40代、かなり進行した虫歯が1本あり、頭蓋骨に外傷ではない、内側からの穴があるので、脳腫瘍かなにかだったと考えられるということでした。猛烈な痛みに悩まされた晩年だったのではないかと同情してしまいます。ミイラの内部にはいってみる映像もありました。ジェットコースターみたいにヒューッと移動する映像はちょっとくらくらします。 シアターを出ると、展示室があります。石碑や副葬品、金とビーズのアクセサリー、猫のミイラとハヤブサのミイラなど。どうやら3Dシアター用メガネも副葬品のデザインを真似たもののようです。 昼食をとって一休みしてから、西洋美術館の「ベルギー王立美術館展」を見ました。ブリューゲル、ルーベンス、ヴァン・ダイクから象徴派、シュールレアリズムのルネ・マグリットまでの絵が時代を追って展示してあります。 ヨルダーンスのガラスや果物の質感表現の巧みさに舌を巻き、ブリューゲルのちょっととぼけたような奇妙な世界に狐につままれたような気分になり… 「イカロスの墜落」(ピーター・ブリューゲル父作かどうかには異論があるらしい)なんて、画面右下でイカロスと思われる足が海面から出てもがいているのに、左側の小高くなっているところにいる農夫は気がつかないのか、あるいは不自然なくらい下を向いているようにも思えるので見なかったことにしているのか、畑を耕して日常生活に埋没しています。その向こう、画面中央の羊飼いは空を見上げていますが太陽にもイカロスにも背を向けています。 19世紀、ルイ・ガレの「芸術と自由」という題の絵は楽器を持ってぼろぼろの服を着た若者が描かれていました。いつの世も、難しいのですね。 アンソールはやはり不気味ですが、前にブリジストン美術館で見たスピリアールトは点数が少なかったせいか、そのときほど不安をかき立てられませんでした。 私が好きになったのは、クノップフの「シューマンを聴きながら」と「ジェルメーヌ・ヴィーナーの肖像」です。「シューマン」は、黒い服の女性が物思いに沈んでいるのか、泣いているのか、そして左端にピアノを弾く男性の右手だけが見えます。こちらで見られます。近代油彩 ジェルメーヌの方は夢見るような瞳の幼い少女です。おとなになってもこの瞳は変わらなかったに違いない、となぜか確信させるのです。 有名なルネ・マグリットの「光の帝国」は印刷だと昼間の逆光のようにも見えるのですが、実物は完全に夜と昼が合体した奇妙な絵です。今の時代にはマグリットより絵がうまい人はいくらもいるし、プロジェクターやCGも使えますが、最初に思いついた人はやはり偉大です。 どちらもけっこう混雑していました。
October 15, 2006
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夢の島に第5福龍丸とベン・シャーンを見に行ってきました。夢の島に行くのは初めてでした。ソテツやユーカリ、その他の木々が大きく育っていて、木と草の匂い、排気ガスのにおい、海の匂いが混ざり合っただだっ広いところでした。焼却炉の煙突が3本ありますが、1本は休止中と書いてありました。展示館には、ウォーキングのコースを歩いていくようになっています。 一歩入るとすぐ第5福龍丸があり、なにか生々しくて、厳粛な気分になりました。下から見上げると大きい、と最初は思いましたが、はるか遠くまで大海原を波にもまれて行くには小さいかもしれません。23人の乗組員がそこで家族と離れて生活しながら、漁をしていたのですね。年月もたっているし、長いこと放置されていたせいか、ペンキがはげていますが、出発した当時はきれいに塗ってあったのでしょう。 横にベン・シャーンの絵(ラッキードラゴンのシリーズとその他少し)とアーサー・ビナード氏のことばから構成された絵本の展示あります。ベン・シャーンの原画の展示は15日までですが、絵本の展示は11月20日までです。入場無料 ベン・シャーンはオルゴールの小さな博物館で見て、その心の暖かさに惹かれたのでぜひ見たかったのです。会場で9月に出版された絵本「ここが家だ ベン・シャーンの第5福龍丸」を買いました。当時の新聞記事などの資料は常設だと思います。生徒たちが祈りをこめて折った千羽鶴がありました。乗組員のかたの入院中の写真がありましたが、労働で鍛えられた肉体でした。強靭な肉体でも、放射能にはかなわなかった、と思うと悔しいです。体調に異常をきたしてから、航海中へたに助けを求めると、機密を目撃したとして攻撃される恐れがあるのではないかと、語らず日本に帰ってきたのだそうです。 犠牲になった無線長だった久保山愛吉さんはなくなる前に「原爆被害者は私を最後にしてください」と言ったそうです。3人のお子さんを残して働き盛りで逝かれた無念はいかばかりだったでしょう。はたして私たちは「まかせてください、安心してお休みください」と言えるでしょうか。考えてみれば、ウラン型原爆、プルトニウム型原爆、水爆と、すべて日本人は実験台になったのです。この悲しい体験をやはり世界に伝え、核の廃絶のために努力すべきです。「『久保山さんのことを わすれない』とひとびとは いった。けれど、わすれるのを じっと まっている ひとたちもいる」遺影を掲げる子供とたくさんの鳩の絵のページに描かれたことばです。 夢の島のほかに、福島県立美術館、丸の内ギャラリー、鎌倉ドゥローイング・ギャラリー、ギャルリー412、名古屋画廊でベン・シャーンの展覧会を開催中、またはこの後開催するそうです。 熱帯植物園も見たかったのですが、入場時間を過ぎてしまいました。まわりにオレンジ色のコスモスと蕎麦の白い花が咲いていました。15日に蕎麦の収穫体験ができるそうです。 広い芝生があるのですが、またヘンな看板を見つけてしまいました。「犬のひとり歩きはいけません」えっ?誰に言っているのだろう?と見直してしまいました。そのあとに「散歩のときも、リード、引き綱でつないで歩きましょう」と続いていました。なるほど、そういうことだったのね。でも、なにか変ではないですか?
October 14, 2006
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二日遅れの日記です。3日の日曜日、銀座に友人のテーブルコーディネートの展示会を見にゆきました。テーブルいっぱいに薔薇の花が敷き詰めてあったり、森の中のように苔を敷いたグリーンのテーブルがあったり、アンティークの食器や花で贅沢な気分を味わってきました。食器と花の調和や、全体の構図などに気を使うそうです。 それにしても、銀座通りはブランドのブティックが並ぶようになりましたね。ショーウィンドーのない作りのせいもあり、ブランドに興味のない人にとっては、あまり面白みのない街になってしまいました。しっかりした職人技のブランドものはいいのだけど、世界中どこでも同じでしょう?マニアックなファンなら、店によって置いてあるものが違うというかもしれないけれど。 銀座のよさは、大人っぽくて、一見気取っているようだけど、老舗若旦那の会があったりして、実は下町っぽいところだと思っていたので、なんだか占領されてしまったみたいな違和感を感じます。私だけかもしれないけれど。ルイ・ヴィトンなんかロスチャイルドに買収されてしまっているし… ちょっと裏通りにはいると、昔からのお店も残っていて、改装したらしくきれいだけどレトロな雰囲気のトリコロールでサンドウィッチとコーヒー、デザートのランチにしました。「本日のサンドウィッチ」はビーフだったのですが、サーモンに替えてもらいました。これからは、ちょっと勇気がいるけれど、ビーフはどこ産ですか?と聞くのがよいかもしれません。禁煙席だって、「禁煙席ありますか?」と聞く人が増えてきたから、設けてもらえたのかもしれませんもの。 その後、知り合いが出品している写真展に行きました。グループ展なのですが、みなさん、世界各地いろいろなところにいらしているのですね。知り合いのかたのテーマは太陽の恵みで、たくさんの大根、さくらえび、干し柿が燦燦と日を浴びている3つの光景でした。 3日が最終日でしたが、出光美術館の「青磁の美」も見ました。千年も二千年も前からの焼き物が損傷もなくきれいな状態で残っていること自体が奇跡のように思えます。青磁には長い歴史があり、時代により、窯により、色も違い、オランダやアラブ、日本でも珍重されました。展示も時代を追い、一番古いものは紀元前のものです。それから、日本好み、東南アジア好み、西アジア好みという分類で展示してありました。エジプトで中国の青磁をまねたものを焼いていたとは知りませんでした。大阪市立東洋陶磁美術館蔵の国宝「青磁鉄斑文瓶」は艶があって玉のような透明感があり、実に美しいです。機会があったらぜひご覧になってください。 実は、若い頃は青磁は好きではありませんでした。ちょっと陰気な感じだと思っていました。あまりよいものを見ていなかったからかもしれませんけれど。でも、今回、洗練されたフォルムと静謐な湖か遠くの山のような色に、古来人びとが魅了されてきたわけがわかった気がしました。なんとも品格のあるやきものなのですね。
September 5, 2006
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