90%の国民はブット前首相(初代大統領の娘、クーデターで国外追放された)を支持している。カリスマ的な魅力を持つブット人気を恐れて、先日の暗殺未遂事件が起きたといわれる。130人以上の犠牲者を出した爆破事件は、イスラム過激派のテロといわれているが、政府工作機関の仕業だと言う声も強い。ブット前首相の国内居住を認めることの危険性を大統領府も痛感していた。ブット元首相の自宅を包囲したのも、反乱を許さないと言う脅しになる。ブットを支持する野党側も力で抑えることは難しい。反政府勢力が武器を持って立ち上がると、内戦に突き進むことになる。それはムシャラクとブットにも避けねばならない危機が生まれる。
力で発言を抑えつけてきたイスラム聖職者たちが動き出すと、イスラム教徒が蜂起してパキスタン内戦が開始されてしまう。内乱が始まると、政府軍は核兵器を所有しているから、どちらが勝利しても危険この上ない。ムシャラクの独裁を押さえつけられるのは米国の圧力になる。民主主義を旗印にイラクやアフガンを攻略した米国にしてみると、あからさまなムシャラクの弾圧政治を容認することはできない。ブット自宅の包囲網を解いたのは、国際情勢の思惑によるものになる。テロ対策を主張しながら、判事や弁護士を拘束したのでは嘘がばれてしまう。
パキスタンの敵はインドと主張されてきた。カシミール地方を奪われた恨みである。インドに対抗するために核兵器さえも開発している。そのために国際的な経済制裁を受けて、パキスタン経済は破綻状態にある。高度成長を続けるインドとは大きな経済格差が生まれつつある。生活の貧しさに対する怒りや不満が大統領府に向かうのは仕方がない。ほとんどが貧困層のパキスタンでは、政権を握っているほうが苦しい。まさか、最高裁が大統領再選を憲法違反に認定しようとは思わなかっただろう。軍事政権打倒を目指す動きが拡大していたのである。
ソ連のアフガン侵攻以来、多くのイスラム戦士がパキスタンを通じて戦場に向かった。現在でも、パキスタン人はタリバンを強く支持している。多くの族長は武器や弾薬をタリバンに密輸して支えている。資金の多くは貧しいパキスタン人からではなく、豊かな石油産出国から集まってくる。衛星放送の進歩により、アフガニスタンやイラクのニュースは即座にイスラム社会に広がる時代になった。米軍の空爆が繰り返されるたびに、イスラム社会で反米思想は強まり、親米派のムシャラクは追い詰められていく。アフガニスタンの米軍やNATO軍は、かつてのソ連軍の悪夢を繰り返えそうとしている。米国と結ぶことで、多額の経済支援を手にしようとしていたムシャラク政権が挫折するのは必然だろう。いつどのような形で、ブット政権が誕生するかが、唯一の内乱を起こさない方法なのだが・・・。
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