冷却燃料が禁止されている理由は、エンジンパワーが増大するからになる。冷却燃料によって生み出される吸気ガスは温度が低い。低い温度の吸気ガスによって、シリンダーヘッドなどのエンジン部品を内側から冷やし、ガソリン濃度を高めることができる。結果的にエンジンパワーを増大させることになるから、FIAによってガソリン温度は厳しく管理されている。(冷えたドリンクを飲むと、体が内側から冷やされると同じと考えるとわかりやすい)
ブラジルGPの大気の温度は、測定した機関によってまちまちだった。熱帯地域では、太陽の直射部分と日陰では大きな温度差が生まれる。気温測定箱のような閉じ込められた空間では気温が低く、温度計を太陽にさらすと一気に上がる。インテルラゴスで測定した気温の数字がまちまちだったので、混乱が生まれたのは仕方がない。BMWとウィリアムズの契約している機関の気温測定では、使ったガソリンと大気に10度以上の差はなく、問題はなかった。レーススチュワードがBMWとウィリアムズを無罪としたのは、どの数字が正確なのかを断定できなかったからになる。
マクラーレンが食い下がったのは、やはり優勝できなかった悔しさだろう。BMWとウィリアムズが失格になればポイントを失い、ハミルトンは4位に上昇する。その結果、大逆転でハミルトンの優勝が決まる。マシントラブルによって最後尾まで脱落したハミルトンを救済できるのは冷却燃料裁判しかなかった。それにしても、却下の裁定の論拠は不明確であり、本当に審理を尽くしたのかもよくわからない。もともと政治的な思惑の裁判なので、審理するほうもマクラーレンを厄介払いするという考えに立っていたのだろう。
FIAが厳密に問題を取り上げて詳細に議論すれば、公式の気温とBMWとウィリアムズのガソリン温度に10度以上の開きがあったことは事実だから、失格の裁定を下さねばならない。そんなことをすると、大逆転が起きて世の中が騒然となる。マクラーレンの控訴を却下すれば詳細に検討する必要はない。2チームの依頼している機関の測定した気温と公式の気温に10度以上の差があったことは不問にされた。現実に2つの気温が存在したのでは、議論が堂々巡りになる。まさか、BMWとウィリアムズも公式の気温と依頼した気温測定に10度以上の差があったなどとは思わなかっただろう。
世論はレース結果を裁判で変更しようとするマクラーレンの姿勢に批判的なので、却下の裁定も受け入れられて終わるだろう。マクラーレンの訴えは控訴には当たらないと門前払いの形にしたのは賢明だった。公式の気温とガソリン温度に10度以上の差があるのに、BMWとウィリアムズはどうして無罪なのかと突っ込まれると答えに窮するから、門前払いの形にしたのである。めでたし、めでたし?