サーベラスは約6500億円で買収したクライスラーの株式を無償で提供するのだから、覚悟を決めたことが理解できる。投資ファンドの役割は、企業再建を成功させて転売することなので、売り抜けられると損害を最小限に抑えることができる。もともと、自動車企業でないサーベラスがクライスラーを買収するというアイデアが誤りだった。ダイムラーは赤字の増大に悩まされていたので、サーベラスへの売却は渡りに船だった。サーベラスにクライスラーの差遣は不可能なので、世界企業のひとつが救済するしかない。フィアットが指名されたのは、アメリカ市場が未開拓だったことが影響している。有力候補だったルノーが救済に乗り出さなかったのは、さまざまな裏事情が存在するのだろう。 オバマ政権は自動車産業の再建を掲げている。アメリカ政府からの資金援助が得られると、倒産を避けることができる。政府融資の条件は、低燃費車生産への投資にあるので、小型車生産技術を持つ企業と提携しないと、政府融資を受けられない。残っている課題は議会の反対勢力の説得にある。議会が了承しないと救済法案は消滅する。議会の反対派を説得するのは骨が折れる。最終目標はフィアット社をクライスラーの工場で生産することだろう。それにどのくらいの時間がかかるかで、運命が決まる。アメリカでフィアット車が売れるという保証はない。
フィアットとしては、無償で経営権を所得して、アメリカで小型車の生産を行うことになる。すでにクルマそのものは存在しているから、クライスラーの工場設備をいかに近代化できるかが鍵になる。世界各地に工場を持つフィアットが対応できないことはないだろう。それよりも、議会の救済反対派を本当に説得できるかが問題になる。政府援助資金を生かして工場設備を更新することは難儀だろう。それでも、サーベラスに他の選択肢はなく、フィアットがその気になってくれたことを感謝するしかない。
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