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国連開発計画(UNDP)が毎年発行している人間開発報告書2007/2008』の引用を続けます。 地球の気温上昇の危険水準は、2℃前後であるが、おおまかに言うと、この水準を超えれば、人間開発のプロセスが急速に退行するばかりか、環境に回復不能なダメージが及ぶことが極めて避けがたくなる。 このままで行けば、世界はこの大台をあっさり突破してしまうだろう。 気温の上昇を2℃以内に抑えられる確率を50%にするためだけでも、二酸化炭素に換算して約450ppm 相当で温室効果ガスの濃度を安定させなければならない。 濃度が550ppm まで上がれば、上昇が2℃を超える確率は80%まで上昇する。 2050年までに温室効果ガスの排出量を1990年の半分まで減らし、その状態を21世紀末まで持続させなければならない。 しかし、世界は1つの国とはわけがちがう。 信頼性のある試算をもとに考えると、危険な気候変動を回避するために、豊かな国々は少なくとも排出量を80%削減する必要がある。 しかも2020年までに、30%の削減を成し遂げることが求められる。途上国の排出量も2020年ごろを境に減少に転じさせ、2050年までには20%減らさなくてはならない。 この排出量安定化の目標を達成するのは簡単ではないが、経済的に実行不可能ではない。2030年までにかかる年間のコストは、世界のGDPの1.6%相当と試算されている。 確かに少ない投資ではないが、この金額は世界の年間軍事支出の3分の2に満たない。なんの策も講じなければ、気候変動による損失は、世界のGDPの5~20%に達する可能性がある。〔分野ごとの具体的な予測〕■農業生産と食糧安全保障 降雨パターンや、気温の変化などにより、広い地域で農業生産が減り、栄養不良に苦しむ人の数は、2080年までに、6億人増加。■水の不安 2080年までに、水不足に苦しむ人は、18億人増加するかもしれない。■海水面の上昇 地球の気温が3~4度上昇すれば、土地の水没により、3億3200万人が一時的、もしくは恒久的に住居を失う恐れがある。■生態系と生物多様性 気候の変化のペースについていけず、地球の温暖化が3℃進行すれば、陸上生物の種の2~3割が絶滅の危機に瀕する恐れがある。■病気 マラリア感染の脅威にさらされる人口は、これまでより2億2000~4億人増加するかもしれない。この病気は現在、年間約100万人の命を奪っている。〔コメント〕 「報告書」は二酸化炭素の排出量を減らすための方策として、炭素税の導入と、排出権取引の活用を挙げています。特に、炭素税については、具体的な税額も例示しています。 日本の産業界はいずれに関しても消極的で、ようやく「検討」をはじめたばかりです。 確かに、「報告書」も述べているように「わかっていないことは多い」わけですが「それでも、子どもや孫の世代の幸せを大事に考えるのであれば、どんなにリスクが小さくとも、破局的事態が起きる危険性があれば念には念を入れて予防策を講じるべきだろう」と私も考えます。 EU諸国がが積極的に取り組みを進めている背景には同様の認識があると考えられますが、具体的にどうするか、という場面で 「二酸化炭素税」を導入し「排出権取引」(二酸化炭素排出を抑制する行動をとれば得をし、促進する行動をとれば損をする制度)の検討・導入を進め、実効を挙げるという「プラグマティズム」 にはしっかりと学んでいく必要があるのではないでしょうか。 環境問題に関連する記事 (「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」について考える、「『不都合な真実』に9つの科学的誤りの誤り」等) を次のページにまとめておりますので、よろしければおいでください。“しょう”のページへジャンプ ↑ランキング(日本ブログ村)はこちらです
2008.05.24
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人間開発報告書の警告『人間開発報告書2007/2008』が昨年の11月に公表されました。 これは国連開発計画(UNDP)が毎年発行しているもので、発表されたテーマは 、「気候変動との戦い-分断された世界で試される人類の団結」 でした。 これについては 環境ジャーナリストの富永氏が詳細な引用とコメントをブログに掲載 しておられます。私がこの報告書を半年以上たって引用する理由は次の2点です。1、 道路特定財問題を環境対策としっかり関連させながら論議を深め妥当な方向を探っていくことが必要だったにもかかわらず、 わが国の国会において、まともな論議など一度もされていないこと。(そして、審議に入らないという野党のやり方を国民の多くが容認してしまっていること。)2、日本では環境対策、 温暖化対策を積極的に推進する主張に対して「枝葉末節としかいいようのない揚げ足取り」がいまだに横行していること。 さて、温暖化対策についての「懐疑論」「慎重論」に対して『人間開発報告書2007/2008』は次のように述べています。「将来への影響が不確実であることを理由に、抜本的な気候変動対策を講じることに慎重であるべきだと主張し続けている論者もいる。しかし、この議論は出発点からして間違っている。 確かに、わかっていないことは多い。そもそも気象科学は、蓋然性とリスクに関する学問であり、確実性を論じる学問ではない。 それでも、子どもや孫の世代の幸せを大事に考えるのであれば、どんなにリスクが小さくとも、破局的事態が起きる危険性があれば念には念を入れて予防策を講じるべきだろう。」 富永氏も指摘しておられますが、環境問題は、危機管理の問題なのです。 「20世紀には、政治的リーダーシップの破綻が2度の世界大戦を引き起こし、本来避けられたはずの大惨事のせいで大勢の人々が大きな代償を支払わされた。 危険な気候変動は、21世紀以降の世界にとって、避けられるはずの惨事である。 気候変動が起きている証拠を目のあたりにし、そのもたらす結果を理解していながら、世界の最も弱い人々を貧困状態に押し込め、未来の人類を地球環境の破局というリスクにさらせば、私たちは未来の世代から厳しく糾弾されても仕方がない。」 まったくそのとおりであると思います。そもそも国連がIPCC(気候変動に関する政府間パネル)を設置したこと自体、事実確認をしっかりした上で(危機的事態が発生する可能性があるならば)、回避できる破局は回避していこう、ということだったと考えられます。 IPCCが相当な努力をして科学的に事実確認を進めているということはその報告書からも充分に読み取れますが、「懐疑的な主張をする人たち」は自分自身でIPCC報告を読んで、自ら検討しているのでしょうか。 環境問題に関連する記事 (「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」について考える、「『不都合な真実』に9つの科学的誤りの誤り」等) を次のページにまとめておりますので、よろしければおいでください。“しょう”のページへジャンプ ↑ランキング(日本ブログ村)はこちらです
2008.05.18
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