黒魔法2のMMO日記

黒魔法2のMMO日記

エピローグ



その言葉を、風詠が静かに口にすると、紫の光を放っていたケルベロスの像がゆっくりと動き始めた。

辺りを染めていた紫色の光が薄れてゆくと、生身の身体を持ったケルベロスが、【GM】風詠の足元に降り立っ
た。

「私はケルベロス。全ての謎が解かれ、我ら幻獣の呪縛も解けました。この先は私が案内いたします。
どうぞ、こちらへ」


ケルベロスが門の前に立つと、【GM】SBOと【GM】明太があれほど押しても開かなかった重厚な門が、いともた
やすく開いた。

長い廊下を歩き、階段を降り、陽光のような光を放つ小部屋に招き入れられる。

小部屋の中心には一抱えはあろうかというほどの大きな水晶があり、GMたちを迎えるように温かな光を放ってい
た。

水晶を囲むように並ぶGMたち。

誰も言葉は発しなかった。魅入られたかのように、誰からともなく水晶に両手を掲げる。それに呼応するかのよう
に光が強まり、GMたちを包み込むように大きく広がっていった。


鮮明なヴィジョンが見える。氷に閉ざされた宮殿に出現する石碑。見たことも無い、緑あふれる街並み。そして、
はじめて見る生命体。その生命体が振り返ろうした瞬間、GMたちの意識は現実へと引き戻された。


「【GM】Joeが見せたかったのは、今の・・・」

【GM】氷凍がやっとのことで言葉を発すると、まるでそれが合図ででもあったかのように、澄んだ音を立てて水晶
が砕け散った。

「綺麗・・・」

【GM】百歩威が呟く言葉に、微笑みを浮かべて【GM】風詠が頷いた。輝きを放ちながら舞い散る水晶を、GMたち
は、いつまでも見つめ続けていた。




全ての謎を解き明かしたGMたちは、幻獣たちと別れ、城を後にした。

「いや!全ての謎はまだ解けてないっスよ!」
突然、【GM】明太が沈黙を破った。

「なぜ、Joeが 「挑戦状」 を送ってきたか、ということでござるな」
【GM】SBOが明太の意を汲んで言葉を継いだ。

自然、GMたちの視線が【GM】風詠に注がれる。風詠は少し困った表情で微笑み、天を仰いだ。

「黙っていてごめんなさい。私はJoeから今回の挑戦状の話を全て聞いていたんです」

GMたちの目が見開かれる。

「【GM】の座を辞してもなお冒険者の皆さんと【GM】のメンバーのためにできることといったら「挑戦状」ぐらいだ、
と彼は言っていました。彼は、新天地を求めて今も旅を続けています。 彼が見つけた新天地の情報を冒険者の
皆さんにお知らせするためには、謎を解いて新天地のヴィジョンを送ってもらわなくてはいけなかった。冒険者の
皆さんのお力を借りて初めて、ようやく全ての謎を解くことができたといった状況ですが、もう皆さんに【GM】の役
目をお任せしても大丈夫そうですね」

多少納得いかない表情を見せるGMたちを見回し、苦笑しながら風詠が踵を返す。
「では、いきましょうか。新天地の調査へ!」


程なくして、彼らは一つの石碑を見つける。
暖かな光を放つ石碑は、新天地へ向かう新たなゲート。
間もなく、この私のいる街へやってくることだろう。
そのときには、私は新しい土地を求めて旅立っているはずだ。
冒険者の皆さんと、開拓の喜びを分かち合う為に。



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