しろねこの足跡

しろねこの足跡

ひかりのいえ5


よく、出店の現金箱に使われているようなステンレス製の箱だ。

名札には祖父母の名前と寄贈した年月日が記載されている。

「どうぞ。閲覧がすみましたら、また声をかけてください。」

学芸員はそういって、保存庫の閲覧室に、私を案内し保存箱を置いて出て行った。

私は、どきどきして手が汗ばむのを、ハンカチでふきとって箱をゆっくり開けた。

中身は私の記憶と予想を裏切っていた。

箱の中身は、古い日記とぱさぱさになったはがきや手紙だけだった。

どうやら、わたしの記憶はいろいろなところで交じり合ってちがったものになっていたらしい。

日記は長いものになりそうなので、先に手紙の宛名に目を通した。

あて先は、どれも祖父母宛てではなかった。


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