「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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しろねこの足跡
墓場の安息11~13
「ね、トモきいて。誕生日にウチダ君からこれ、もらっちゃたぁ」
カナエが見せ付けたペンダントは、当時最先端のブランドのペンダントだった。夜明け色のブルームーンストーンを繊細な銀細工の花びらがかたどっている。
所々にメレダイヤが組み込まれている手の込んだジュエリーというカテゴリーに入るものだ。
高校生がつけるには分不相応だし、高校生が買ってプレゼントするにも分不相応とみてとれた。
だけど、私にはどうだっていいのだ。
「きれーだねぇ。いいなー、カナエは。」
「へへ、あ、あと定期入れももらったの。」
「ああ、ほしがっていたもんね。」
それだけでなくカナエは浮かれていた。カナエは男性から、結構なプレゼントをもらってもこれほど浮かれたりしない。いつものことだからだ。
「他にもなんか、いいことあったみたいだね、カナエ。」
「そうなのー。運命って言うの?感じちゃったかもー」
カナエはゆるくウェイブをかけた髪の毛をしきりにかきあげた。髪の毛をしきりにさわるのは性的アピールと心理学的にいえると何かの本で読んだ。わかりやすい人だ。
「で、何があったの。」
「夢でー、モトノ君が出てきたのー。わたしのためだけにソナタを弾いてくれるのね、そのピアニッシモがとてもきれーできれーで。もう夢だけど、好きになっちゃおうかなーなんて。」
私の抱えていた膿がぶつっと音を立てて破れた気がした。はちきれてしまった膿は、どろりとした粘度で体中を舐めるように下へ、下へ、落ちていく。
モトノ君のあの音だけは渡したくなかった。透明感の高い繊細で触れると切れてしまいそうな高価なクリスタルのような音色。
渡したくない。
憎しみに近い感情がこみ上げてくるのをとめられなかった。
カナエは私に止めを刺した。
「ね、トモってモトノ君と結構話すんでしょ。協力して。」
「ウチダ君は・・・」
「モトノ君がうまくいったらなんとかするから。」
「私、そんなにモトノ君を仲良い訳じゃないよ。」
カナエはつまらなそうに私を一瞥した。
「ふーん。ま、いいけど。そんなこんなでよろしくね。」
とウチダ君にもらったペンダントをもてあそびながら楽器倉庫へ入っていた。
彼女が出て行ったあとの楽器倉庫の墓場にわたしは、墓標を1つ立てた。
ここはやっぱり、墓場だった。
劣等感を持たない人なんていない。
他人から見れば羨ましいようなことでも本人は悩んでいたりする。ある程度は克服可能かもしれない。体重、テストの点数、スカートの号数、マラソンのタイム。考えてみると、数字で表せるものばかりだ。
友情、恋愛、顔、そして音楽の才能。ほしいものはどれだけ努力すれば、克服したのか表せない。
もっと、うまくなりたかった。クドー先輩の安定した音色のように、モトノ君の繊細な音色のように、「わたしの」音色が欲しかった。練習しても練習しても、金属からでるその音は、譜面の上をすべっていった。
「どうしたら、クドー先輩のようにつややかな音色がだせるんですか?」
クドー先輩は、調弦していた手を休めて私のほうへ振り返った。
「才能、って思っている?だったらどうして、有名なバイオリニストは、みんな2才や3才から楽器を持ち始めると思う?それだけ時間が必要なんだよ。4本しかないただのヒモから他人を感動させる音色を出すんだよ。途方もない時間と努力が必要なんだ。」
そういって先輩は、ゆっくりと弓をA線においた。どんなときにも揺れない音色を出すために、彼はどれだけの時間を費やしてきたのだろう。
音色は厚みを増してくる。まるで川の上流から河口へと流れる水のよう。このA音だけでこれだけの世界を見せることができるんだ。
「僕がバイオリンを始めたのは小学5年生のときなんだ。親に持たされたわけでもなく、誰に強制されたわけでもなく、自分で選んだんだ。」
私は、自分がフルートを始めて手にした時の事を思った。どきどきしていた。あの時ほど楽器の重みを感じたことはあっただろうか。
私も、自分で選んで楽器を始め、高校を選び、昼休みに教室から逃げたのに。
沢山の感情が内側からこみ上げてくる。羨望、嫉妬、憧憬、憎しみ。私はどの感情をつかって音を創っていくのだろう。
カナエとは、なんだかんだいっても、なんとなく繋がっていた。だから風前の灯のウチダ君と話すことも増えていた。
「最近、カナエ冷たくてさー。」
「ふーん。」
「なんかきいてない?」
「別に。ってか、カナエきたじゃない。」
カナエは独占欲の強い人間だ。ウチダ君とカナエの居場所を尋ねる用事以外で話すのは、面白くないらしい。本当は、モトノ君と私が話すもの面白くないに決まっている。いつもしつこく、さっき何はなしていたの?って何か答えを言うまで聞いてくる。
雌の本能が強いようなカナエは、そういうことに鋭い。ウチダ君と話している私が、余計なことを話し始めていることをもう察知して、牽制しにやってきている。
「ふたりで何はなしていたの?最近よく話しているよね。」
「別に。カナエ、最近ウチダ君に冷たいんだって?」
私の言葉で、カナエは激昂した。
「ふたりして、私のことばかにして!馬鹿にして!バカにして!」
「馬鹿になってしてないってば。落ち着きなよ。」
「カナエ、そういう意味でいったんじゃないって。」
「バカにして、バカにして!バカにしてー!」
いきなりキレて、馬鹿にして、を繰り返すだけで埒が明かない。
カナエが陰のこもった瞳で私を見て、それからウチダ君に言った。
「トモが気になってきたんでしょう?そうやって私をバカにして!もういいわ、別れてやる!」
唖然としている、ウチダ君と私を残して、カナエはズタズタと音楽室へ戻っていった。内心私は、うまいことやったなーと思った。希望通りに適当に別れられたじゃない。
「お前、そのまんまぺらぺらしゃべんじゃねーよ。お前のせいだよ。せっかくカナエがかわいそうに思ってお前に優しくしてやってるいのに、そんな態度だしよ。何様と思ってんの?えらそーに。ただのハブラレのくせに。カナエといたからって、自分まで同じなんて妄想してんじゃねーよ。」
ウチダ君は、思いつく限りの罵り言葉を吐いていった。
いつだって、カナエが正しいんだ。私が悪いから、二人は別れることになったということになったらしい。
かわいそうだから、優しくしてやっている?本当にそう思っている人がいたんだ。
カナエは、そんな純粋な優しさは気に入った「男」にしか向けない。学校の中で、今一番私を貶めていじめているのはまぎれもなくカナエだった。
教室中で嫌われているトモにさえ優しく接するすがすがしいほどの美人。その地位がほしくて私を手にかけたんだ。そして、私はその無意識の作為にまんまとはまったわけだ。
優しいって残酷だ。
「優しい」の代償はあまりにも大きい。私には払いきれない。不渡りを出した優しさは残酷に変化する。
きっとあしたの昼休みには、いろんなところでこんな風に肌つやのいい「おばさん」たちが、同情に眉をひそめてこそこそ噂するんだ。
「カナエとウチダ君、別れたんだって?」
「なんで?」「なんか、トモが嫉妬してウチダ君に陰口たたいたらしいよ。」「それで、けんかに?」「自分よりトモの言うこと信じたって泣いていたみたい。」
「トモサイテー」「何様のつもりさ。」
「カナエとウチダ君美男美女って感じでお似合いだったのに。」「サイアクー」
妄想かもしれない。でも私の膿はとまらなかった。憎しみの膿となって体中を蝕んでいった。
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